FIFA ワールドカップ 2026 マルティン・バトゥリナ
マルティン・バトゥリナ(Martin Baturina、2003年2月16日生まれ)は、クロアチア出身の攻撃的ミッドフィールダーであり、セリエAのコモ1907に所属する。父は元クロアチア代表のマテ・バトゥリナで、兄のロコ・バトゥリナも現役プロ選手というサッカー一家の出身。スイスのチューリッヒで誕生し、スプリトで育った後、14歳でザグレブに移りルカ・モドリッチと同じGNKディナモ・ザグレブのアカデミーで技術を磨いた。クラブでの活躍が評価され、2023年にクロアチア代表デビューを果たし、FIFA ワールドカップ 2026のクロアチア代表26名に選出された。172cm・70kgという小柄な体躯ながら、卓越したボールコントロールとハーフスペースを巧みに突くプレースタイルで「次世代のモドリッチ」と称される若き司令塔である。
プロフィールと生い立ち
マルティン・バトゥリナは2003年2月16日、父マテ・バトゥリナがグラスホッパー・クラブ・チューリッヒに在籍していた時期にスイスのチューリッヒで生まれた。その後、家族とともにクロアチア・スプリトに戻り育つ。地元のHNKハイドゥク・スプリトのアカデミーで7歳から8歳まで過ごした後、RNKスプリトへ移籍し2015年から2017年まで在籍。2017年に14歳でGNKディナモ・ザグレブの下部組織に加入し、以降はクロアチアを代表する名門クラブの薫陶を受けながら才能を磨いた。身長172cm・体重70kgと決して大柄ではないが、確かなボールコントロールと鋭い状況判断力を早期から示し、ユース段階からクロアチア国内で特別な逸材として注目を集めた。
ディナモ・ザグレブでのキャリア
2021年2月、バトゥリナはディナモ・ザグレブII(リザーブチーム)でプロデビューを果たし、同年5月16日には18歳でトップチームの公式戦初出場を記録した。2021-22シーズンの最終節HNKハイドゥク・スプリト戦では94分に途中出場し、1-1の状況から1ゴール1アシストという劇的な逆転勝利(3-1)に貢献。その活躍が評価され、翌2022-23シーズン開幕前にベテランのブルーノ・ペトコヴィッチから背番号10番を引き継いだ。2022年9月にはUEFAチャンピオンズリーグのチェルシー戦でデビューを果たし、欧州の舞台にも登場した。ディナモ在籍4年半で公式戦165試合22ゴールという成績を残し、2023年7月のクロアチア・スーパーカップでは決勝点を決めてMVPに輝くなど、一貫してクラブの中心選手として機能し続けた。
コモ1907への移籍とセリエAでの躍進
2025年6月、バトゥリナはセリエAのコモ1907へと完全移籍し、5年契約を締結した。監督は元スペイン代表MFのセスク・ファブレガスが務め、流動的かつポジショナルな攻撃スタイルを採用するチームはバトゥリナの特性に適合した。加入初年度の2025-26シーズンはシリーズA29試合に出場して6ゴール2アシストを記録。特に2026年に入るとパフォーマンスが向上し、1月以降だけでセリエAとコッパ・イタリアを合わせて4ゴール3アシストをマーク。トリノ戦でのミドルシュートなど、インパクトある得点を連発した。ファブレガス監督は「バトゥリナは地図に自分の名前を刻んだ。ハーフスペースを常に突き、ニコ・パスとの連携も抜群だ」と絶賛し、クロアチア代表選考をにらんだメディアの注目も急上昇した。
プレースタイルの特徴
バトゥリナの最大の特徴は、狭いエリアでも失わない確実なファーストタッチと、1対1の強さにある。スピードはそれほど突出していないものの、緻密なボールコントロールと素早い状況判断でプレッシャーを回避し、攻撃の起点となるパスを配給する。ハーフスペースへの侵入を好み、そのエリアでボールを引き出してから縦への突破やシュートへ転換するパターンを得意としている。またミドルシュートの精度と威力も高く、コモでの得点の多くはペナルティエリア外からの豪快なシュートによるものだ。モドリッチと同じくディナモ・ザグレブのアカデミー出身であり、ゲームを読む力とパスセンスを核としたプレーメイク能力が高く評価されている。
クロアチア代表でのキャリア
バトゥリナはクロアチア代表のU15からU21まで各年代別代表でキャップを重ねた。2023年11月にズラトコ・ダリッチ監督によってUEFA EURO 2024予選のラトビア戦で代表デビューを果たし(途中出場、2-0の勝利)、翌2024年には26人枠でUEFA EURO 2024のドイツ大会メンバーにも選出された。代表では17試合1ゴールを記録し、2026年5月18日に正式に発表されたFIFAワールドカップ2026クロアチア代表26名にも選出された。背番号16番を与えられ、40歳のモドリッチとともにクロアチアの中盤を形成する役割が期待された。
FIFA ワールドカップ 2026 グループL:対イングランド戦
2026年6月17日、グループステージ第1節、イングランド代表対クロアチア代表の一戦がダラス(AT&Tスタジアム)で行われた。試合は8分にモドリッチのクリアがノニ・マドゥエケに当たってPKとなり、ハリー・ケインに先制点を許す展開となった。苦しい状況のクロアチアは35分、カウンターの流れからペタル・スチッチがペナルティエリア手前で折り返したボールをバトゥリナが受け、豪快な右足ミドルシュートをゴール左上隅に叩き込んで同点に追いついた。ジョーダン・ピックフォードも反応できなかった圧巻のスーパーゴールで、ワールドカップ本大会におけるバトゥリナのデビューゴールとなった。その後イングランドが再びリードを奪い、最終的なスコアは1-2でクロアチアが敗れたが、バトゥリナのゴールはワールドカップ開幕から最も印象的な場面の一つとして各メディアで取り上げられた。
サッカー一家と背景
バトゥリナ家はクロアチアのサッカー界に深く根ざした一族である。父マテ・バトゥリナはグラスホッパー、ウディネーゼなどでプレーした元クロアチア代表選手であり、兄ロコ・バトゥリナも現役のプロサッカー選手として活動している。マルティン本人はスイスのチューリッヒで生まれたが、法的にはクロアチア国籍を保持し、国際試合ではクロアチア代表として出場することを一貫して選択してきた。幼少期はスプリトで過ごし、ハイドゥク・スプリトやRNKスプリトの下部組織を経てザグレブに活躍の場を移した経緯は、クロアチアサッカーのアカデミー体制の底力を示す事例とも言える。
モドリッチの後継者という評価
ディナモ・ザグレブのアカデミー出身で攻撃的ミッドフィールダーとして活躍するバトゥリナは、当然のようにルカ・モドリッチとの比較を受けてきた。本人もモドリッチへの憧れを公言しており、プレースタイルの類似点として「狭いスペースでのボールさばき」「ゲームを読む力」「一見シンプルに見えるが正確なパス」が挙げられる。ただし、モドリッチが持つ並外れたスタミナや守備貢献の面ではまだ差があるとも分析される。セスク・ファブレガス監督の指導のもとでコモが採用する流動的な攻撃システムは、バトゥリナが自由にハーフスペースを動き回るのに最適な環境を提供しており、23歳という年齢を考えれば今後の成長余地は大きい。ワールドカップという最大の舞台でのゴールが、その評価をさらに押し上げることは間違いない。
主要成績
| シーズン | 所属クラブ | コンペティション | 出場 | ゴール | アシスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022-23 | ディナモ・ザグレブ | クロアチアHNL | 34 | 6 | — |
| 2023-24 | ディナモ・ザグレブ | クロアチアHNL | 32 | 5 | — |
| 2024-25 | ディナモ・ザグレブ | クロアチアHNL | 33 | 4 | — |
| 2025-26 | コモ1907 | セリエA | 29 | 6 | 2 |
| 2023- | クロアチア代表 | A代表通算 | 17 | 1 | — |
クロアチア代表とグループLの展望
クロアチア代表はFIFAランキング11位でグループLに入り、イングランド・コロンビア・ボリビアと同組となった。2018年ロシア大会準優勝、2022年カタール大会3位という近年の実績を持つクロアチアは、40歳のモドリッチが現役を続ける「最後の世代」と「バトゥリナ・ペタル・スチッチら次世代」が共存する過渡期のチームである。グループステージ第1節でイングランドに惜敗したものの、バトゥリナのスーパーゴールはクロアチアの攻撃力が健在であることを示し、続くコロンビア戦・ボリビア戦での巻き返しへの期待を高めた。チームがグループ突破を果たした際には、バトゥリナのハーフスペースを突く攻撃が最大の武器になるとみられている。
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