FIFA ワールドカップ 2026 ハゼム・マストゥーリ
ハゼム・マストゥーリ(Hazem Mastouri、アラビア語:حازم المستوري、1997年6月18日生まれ)は、チュニジア出身のプロサッカー選手。ポジションはFW(センターフォワード)で、身長191cm・体重86kgと恵まれた体格を誇る。現在はロシア・プレミアリーグのディナモ・マハチカラに所属し、チュニジア代表の主力ストライカーとして活躍する。FIFA ワールドカップ 2026にはチュニジア代表として出場し、同国7度目となるワールドカップ挑戦においてエースとして期待を集めている。アマチュアの3部リーグから出発し、消防士への転身を本気で考えるほど挫折を経験しながら、最終的にワールドカップの舞台に立ったその経歴は、不屈の意志を象徴するものである。
基本プロフィール
ハゼム・マストゥーリは1997年6月18日、チュニジアの首都チュニスで生まれた。国際的には「حازم المستوري」とアラビア語で表記される。ポジションはセンターフォワードで、右利き。身長191cm・体重86kgという長身を活かした空中戦やポストプレーに加え、迫力ある前線への飛び出しも特徴的なストライカーである。背番号は7番で、現所属クラブのディナモ・マハチカラでも同番号を着けている。チュニジア代表ではグループFの試合で背番号が割り当てられており、2026年6月時点での代表通算出場数は17試合・4得点を記録している。
下積みの時代——アマチュアから這い上がるまで
ハゼム・マストゥーリのキャリアは、輝かしいものとはほど遠い出発点から始まった。ユース時代はASデガシュ(AS Degache)でプレーし、そのままシニアとして2016年から2020年までチュニジア3部リーグに相当するアマチュアカテゴリーで活動を続けた。2020年にはLPSトズール(LPS Tozeur)へと移籍し、2部リーグへ足を踏み入れたものの、目立った成果は上げられなかった。2021年にはチュニジア・プロフェッショナルリーグ1部のエトワール・スポルティーブ・ドゥ・メトラウイ(ES Métlaoui)へ移籍し、初めて最高峰のリーグでプレーする機会を得た。しかし同クラブでの序盤は低調で、降格争いに巻き込まれながら個人成績も伸び悩んだ。2021-22シーズンは15試合6得点、2022-23シーズンは16試合4得点と、一部では着実な数字を残したものの、国際的な注目を集めるには至らなかった。この時期、不安定な環境と低い報酬に苦しんだマストゥーリは、サッカー選手という夢を諦め、消防士への転職を真剣に検討していたと後に述懐している。
転機——イラク、モナスティルでの覚醒
2023年9月、ハゼム・マストゥーリはイラク・スターズリーグのアル=ナジャフFC(Al-Najaf FC)へ移籍した。この新天地での挑戦が転機となる。同クラブで10得点を記録するという結果を残し、スコアラーとしての実力を証明した。2024年8月にはチュニジアのUSモナスティル(US Monastir)と2年契約を締結してリーグに復帰し、ここでさらに輝きを放つことになる。2024-25シーズン、モナスティルで27試合16得点という圧倒的なパフォーマンスを披露し、チュニジアリーグの得点ランキング上位に名乗りを上げた。この活躍がチュニジア代表コーチングスタッフの目に留まり、2024年11月に初めてA代表に招集される。同月14日のアフリカネーションズカップ予選・マダガスカル戦(3-2勝利)で代表デビューを飾り、チームの予選突破にも貢献した。2025年8月にはロシア・プレミアリーグのディナモ・マハチカラと契約を締結し、ヨーロッパのクラブに初めて所属することとなった。
チュニジア代表での実績
ハゼム・マストゥーリの代表キャリアは2024年後半からスタートしたが、短期間で代表の主力ストライカーの座を掴んだ。代表通算4得点はすべて公式・親善試合において重要な場面で生まれている。2025年3月のワールドカップ2026アフリカ予選・リベリア戦(アウェー)では代表初ゴールを記録(1-0勝利)。同年6月のブルキナファソとの親善試合(2-0勝利)で2点目を挙げ、続く9月の予選・リベリア戦(3-0勝利)でも得点を重ねた。最も話題を呼んだのは、2025年11月にフランス・リールで行われたブラジルとの親善試合での先制ゴールで、試合は1-1のドロー。世界的強豪を相手に先制弾を決めたことで、マストゥーリの名は国際的に広く知られることとなった。この得点はアシスタントのアリ・アブディ(Ali Abdi)からのパスによるもので、左サイドバックとの連携もチュニジアの大きな武器となっている。
FIFAワールドカップ 2026
2026年のFIFA ワールドカップ 2026では、チュニジアはグループFに属し、スウェーデン、田中碧らを擁する日本代表、そしてオランダと同組となった。チュニジアの試合日程は、6月14日のスウェーデン戦(メキシコ・グアダルーペ)、6月20日の日本戦(メキシコ・グアダルーペ)、6月25日のオランダ戦(アメリカ・カンザスシティ)の3試合が組まれている。ハゼム・マストゥーリはチュニジアの主力ストライカーとして全試合での先発が期待されており、チュニジア史上初のグループステージ突破に向けた最大の得点源となる見込みである。なお、チュニジアは今大会のアフリカ予選で1点も失点しないという堅守ぶりを見せており、守備の安定とマストゥーリの決定力の組み合わせがグループ突破のカギを握ると見られる。チュニジアのFIFAランキングは45位(2026年6月時点)で、グループF内では最下位に位置するものの、その組織力と機動力は侮れないとの評価が高い。
プレースタイルと特徴
ハゼム・マストゥーリの最大の武器は、身長191cmという恵まれた体格を活かした空中戦の強さと、大型選手ながら俊敏な動き出しによるゴール前への飛び出しである。右利きのセンターフォワードとして、ペナルティエリア内での嗅覚と決定力が際立っており、クラブでも代表でも試合を決める働きを担う。ポストプレーでチームの攻撃を起点とする役割を担いながら、相手守備ラインの背後に抜け出すダイナミックな動きも持ち合わせる。2024-25シーズン、ディナモ・マハチカラではロシア・プレミアリーグで2得点を記録しており、ヨーロッパのフィジカルの強い環境にも適応しつつある。守備への貢献も怠らないタイプで、前線からのプレスでチームの守備を助ける勤勉さも高い評価を受けている点である。
クラブ歴一覧
- ASデガシュ(AS Degache):2016年〜2020年(チュニジア3部・アマチュアリーグ)
- LPSトズール(LPS Tozeur):2020年〜2021年(チュニジア2部リーグ)
- ESメトラウイ(ES Métlaoui):2021年〜2023年(チュニジア・プロフェッショナルリーグ1部)
- アル=ナジャフFC(Al-Najaf FC):2023年9月〜2024年(イラク・スターズリーグ)
- USモナスティル(US Monastir):2024年8月〜2025年(チュニジア・プロフェッショナルリーグ1部)
- ディナモ・マハチカラ(FC Dynamo Makhachkala):2025年8月〜(ロシア・プレミアリーグ)
代表通算ゴール記録
| No. | 日付 | 会場 | 対戦相手 | スコア | 大会 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2025年3月19日 | アントワネット・タブマン・スタジアム(リベリア) | リベリア | 1-0 | ワールドカップ2026・アフリカ予選 |
| 2 | 2025年6月2日 | ハマディ・アグレビ・スタジアム(チュニジア) | ブルキナファソ | 2-0 | 親善試合 |
| 3 | 2025年9月4日 | ハマディ・アグレビ・スタジアム(チュニジア) | リベリア | 1-0 | ワールドカップ2026・アフリカ予選 |
| 4 | 2025年11月18日 | スタッド・ピエール=モロワ(フランス) | ブラジル | 1-0 | 親善試合(引き分け1-1) |
逆境からの挑戦——消防士を夢見たストライカー
ハゼム・マストゥーリの物語が多くのサッカーファンの心を掴む理由は、その非凡な経歴にある。20代前半をアマチュアリーグで過ごし、給与は低く、移籍を重ねても成功に届かない日々が続いた。フラストレーションが頂点に達したある時期、マストゥーリはサッカーを辞め、安定した職業である消防士になる訓練を受けることを真剣に考えた。しかし、その思いを振り払うように環境を変え、イラク・スターズリーグへの挑戦が起死回生のきっかけとなった。チュニジア代表ではデビューから1年余りでワールドカップ出場権を手にし、さらにブラジルを相手に先制点を決めるという「物語のような」軌跡を歩んでいる。2026年のワールドカップが開幕する直前の2026年6月18日には29歳の誕生日を迎えるマストゥーリは、カルタゴの鷲がアフリカ勢として史上初のノックアウトステージ進出に挑む大会において、そのゴールが問われる局面が必ずや来るはずである。
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