EV
EV(Electric Vehicle)は、車載バッテリで電動機を駆動する自動車である。内燃機関(ICE)を用いず、インバータとトラクションモータで走行し、減速時は回生制動で電力を回収する。CO2排出削減、走行効率の高さ、静粛性、保守部品点数の少なさが主な特長である。エネルギー伝達は「蓄電池→DC/DC→インバータ→モータ→減速機→車輪」が基本線で、車外からの充電は車載OBC(On-Board Charger)や急速充電器を介して行う。バッテリ管理(BMS)、熱マネジメント、機能安全、充電規格適合は実用化の中核論点である。本稿では構成、電力変換、充電、評価指標、安全、リサイクル、将来技術までを概説する。
構成要素と動作原理
EVの主要構成は、バッテリパック(セル→モジュール→パック)、BMS、インバータ、トラクションモータ(PMSMやIPMが主流)、減速機、OBC、補機用DC/DC(高圧→12V/48V)、高電圧配線(オレンジ色)である。インバータはDCを三相ACへ変換し、FOC(Field-Oriented Control)等の制御で高効率駆動を実現する。減速時には回生制動で発電し、電力をバッテリへ戻す。高電圧系はアイソレーション監視とHVILで安全確保される。
バッテリ技術と熱管理
主流はリチウムイオン(NMC、NCA、LFPなど)である。パックはセル形状(円筒、角形、パウチ)により構造設計が異なる。BMSはSoC(残量)とSoH(健全度)を推定し、過充電・過放電・過温を防止する。熱暴走リスクに対し、液冷プレート、冷媒直冷、相変化材料等でBTMSを構築する。エネルギー密度、充放電レート、低温性能、耐久性のトレードオフを踏まえ、用途(都市走行、長距離、商用)に応じた最適設計が求められる。
寿命劣化と管理指標
劣化はサイクル劣化とカレンダー劣化に大別され、温度・SoC滞留・DoD・C-rateが影響する。BMSはクーロン積算やEKF等でSoCを推定し、インピーダンス変化でSoHを診断する。セルバランシング(受動/能動)はセル間ばらつきを抑え、利用可能容量を維持する。
充電方式と規格
充電はAC普通充電(OBCを介す)とDC急速充電に大別される。制御はIEC 61851(PWMパイロット)やISO 15118(Plug&Charge、V2G)に基づく。コネクタ/プロトコルは地域や車両により異なるが、いずれも絶縁監視・接地・温度監視により安全を担保する。家庭や事業所でのV2H/V2B、系統連系でのV2Gは、分散電源としての価値を拡張する。
充電インフラと系統影響
急速充電群は配電系統のピーク負荷や高調波、無効電力を増大させ得る。対策として需要応答(DR)、蓄電池併設、力率制御、アクティブフィルタが用いられる。将来的にはスマート充電で需給最適化し、再生可能エネルギーの変動吸収に寄与する。
パワーエレクトロニクス
インバータはPWMでモータ電流を合成し、高周波スイッチングにより小型・高効率化する。デバイスはIGBTからSiC-MOSFETやGaNへと置換が進み、高周波・低損失・800V化に適する。回生制動時は電流を整流してバッテリへ戻す。EMCでは伝導/放射ノイズ抑制にスナバ、コモンモードチョーク、レイアウト最適化、シールドが必須である。
性能指標と評価
航続距離は電費(Wh/kmやkm/kWh)、有効容量、走行パターンで決まる。走行抵抗は空力(CdA)、転がり抵抗、車重、勾配、補機負荷(HVAC、ポンプ)で規定される。加速性能はモータトルクとギア比、電圧/電流制限に依存する。試験法はWLTC等の走行サイクルが用いられ、実走では外気温や速度変動が影響する。
安全・規格・法規
EVの機能安全はISO 26262に基づく開発プロセスで担保される。高電圧系の車両安全要件はUN R100等に整理され、衝突時遮断、漏電検出、IP等級、絶縁抵抗がポイントである。バッテリ筐体はクラッシュ領域から隔離し、ベント経路や難燃材で熱暴走拡大を抑制する。HVILはサービス時や衝突時に回路を迅速遮断する。
サステナビリティと資源循環
資源はLi、Ni、Co、Mn、P、Cu、Alなどが中心である。LFPは資源偏在リスクを下げ、熱安定性にも優れる。使用後はセカンドライフ蓄電(定置用途)で価値を延伸し、最終的に湿式(ハイドロ)、乾式(パイロ)、直接リチウム回収などの手法でリサイクルする。設計段階から解体性向上と材料識別を織り込むことが重要である。
将来技術の方向性
全固体電池、シリコン系負極、ナトリウムイオンなどがコスト/安全/低温性能の選択肢を広げる。車両アーキテクチャは800V化と集中/ゾーンE/E化が進み、OBCやDC/DCの高周波化・高効率化が加速する。ワイヤレス充電や双方向充電はエネルギー連携を強化し、ソフトウェア定義化とOTAにより熱・エネルギー最適化が継続更新される。都市物流やバス/トラックでは、交換式バッテリやメガワット級充電により運用効率の向上が期待される。