DeviceNet|産業機器の省配線フィールドバス

DeviceNet

DeviceNetは、産業用オープンネットワークであるCIP(Common Industrial Protocol)を下位層にCAN(Controller Area Network)の物理層・データリンク層を用いて実装したフィールドバスである。センサやアクチュエータ、I/Oスレーブ、インバータ、温調器など多様なデバイスを1本のバスで接続し、電源供給と通信を同時に実現することを特徴とする。低コスト・堅牢・容易な配線と診断機能により、組立ラインやFA装置の分散I/Oに広く用いられてきた。

目的と利点

DeviceNetの主目的は、現場機器の配線量削減と設定容易化である。4芯または5芯ケーブルで通信と電源を共用し、T分岐で柔軟に拡張できる。CIPによりベンダに依存しないオブジェクトモデルを共有するため相互運用性が高く、EDS(Electronic Data Sheet)によって装置の『自己記述』が可能であり、立上げ時間を短縮する。

物理層と配線

伝送媒体はツイストペアの専用ケーブルで、厚幹線(Thick trunk)と細幹線(Thin trunk)を用途に応じて選択する。バス両端には終端抵抗121Ωを配置し、スター配線は避けたバス形を基本とする。コネクタはM12や専用タップコネクタが用いられる。

ケーブル種別

  • Thick: 速度125kbps/250kbpsで長距離幹線に使用、電源供給容量が大きい。
  • Thin: 取り回し容易で支線や短距離に適する。

伝送距離と電源供給

最大距離は通信速度に依存する。125kbpsで最長500m、250kbpsで250m、500kbpsで100mが目安である。支線の合計長や各ノードの消費電流により上限が変動するため、幹線電圧降下計算とバス電流の見積りが必要となる。

通信方式とプロトコル

データリンクにはCANのCSMA/CR仲裁を用い、メッセージはCIPのI/Oメッセージ(周期/イベント駆動、低レイテンシ)とExplicitメッセージ(設定・診断用)に大別される。I/Oはプロデューサ/コンシューマ型で複数ノードに同報可能、Explicitは要求/応答で属性の読み書きを行う。

I/OメッセージとExplicit

  • I/O: リアルタイムデータに最適、接点やアナログ値の周期更新に用いる。
  • Explicit: パラメータ設定、エラー取得、識別情報の取得に用いる。

アドレッシングとデバイスモデル

各ノードはMacID(0–63)とボーレートを持つ。CIPのオブジェクトモデルにより、Identity、Assembly、Connection、DeviceNet専用オブジェクトが標準化され、機能や属性が統一される。EDSはベンダ名、クラス/インスタンス/属性、パラメータ範囲などを記述し、エンジニアリングツールにより自動読込される。

MacID設定

ダイヤルスイッチやソフト設定で重複を避ける。重複時はバス参加がブロックされるため、立上げ時にスキャンして確認する。

ネットワーク設計と容量計算

ノード数は最大64(スキャナ1台+スレーブ63台が目安)。幹線/支線長、終端、分岐数、電源容量、ケーブル抵抗、機器の突入電流を総合評価する。ノイズ源(インバータ、サーボ電源)からの距離確保やシールド・接地も重要である。

終端抵抗とトポロジ

  • 終端は幹線両端に121Ω、支線に終端は設けない。
  • トポロジはバス形+T分岐、支線は短くし合計長を制限する。

設定・運用・診断

スキャナ(マスタ)側でスキャンリストを定義し、各スレーブのI/Oサイズや接続タイプ、更新周期を設定する。運用時はCIP接続の状態監視(タイムアウト、接続エラー)と、バス電圧・電流・フレームエラーの監視が有効である。障害時はオシロスコープで波形歪みや反射、レセス/ドミナントのレベルを確認する。

診断のポイント

  • EDS不整合: ツール側EDSを最新化し、実機と整合させる。
  • ノイズ/反射: 終端と支線長、接地を点検する。
  • 過電流: 電源系統をセグメント分割し負荷を分散する。

安全規格と拡張

DeviceNetはSafety拡張(安全プロトコル)と併用される場合があり、安全I/Oは二重化と監視タイマで機能安全を担保する。上位とはEtherNet/IPなどCIP系ネットワークで階層分割し、セル/ライン/上位監視を構成するのが一般的である。

他フィールドバスとの比較

同じCIP系のEtherNet/IPは上位情報系や高速I/Oに適する一方、DeviceNetは現場の省配線・電源共用・堅牢性に強みがある。DeviceNetは500kbpsまでで距離が限られるため、広域や高帯域が必要な場合はEthernet系を併用する設計が有効である。

代表的な適用例

組立セルの分散I/O、パレタイザのエンドエフェクタ制御、搬送ラインのフォトセンサ群、温調器群の一括監視、インバータの速度指令・アラーム収集などが典型である。保全面では、CIP経由の状態監視とツールのオンライン置換機能により、装置停止時間を短く保つことができる。