CO2濃度計|換気判断に役立つ計測器

CO2濃度計

CO2濃度計は、空気中の二酸化炭素濃度を主にppm単位で測定し、室内空気質(IAQ)管理、換気制御、産業プロセス、温室栽培、発酵管理などに用いる計測器である。一般に非分散型赤外線(NDIR)方式が主流で、CO2の特定波長域での赤外吸収を利用して濃度を推定する。連続監視やしきい値アラーム、建物管理システム(BMS)との連携を通じ、過不足のない換気や省エネルギー(DCV:demand controlled ventilation)に寄与する。

測定原理(NDIR)

NDIR方式は、光源、測定セル、参照セル(または参照チャンネル)、光学フィルタ、検出器から構成される。CO2は約4.26µm付近の赤外線を吸収するため、この帯域を選択的に通すフィルタを用いて吸光度を取得し、Beer–Lambertの法則により濃度へ換算する。温度・圧力・水蒸気による吸収・屈折の影響を受けるため、温湿度補償や気圧補償が精度維持に不可欠である。NDIRは揮発性有機化合物(VOC)などへの交差感度が相対的に小さく、長期安定性に優れる。

方式と構造

拡散式は自然拡散でサンプルガスを取り込み、設置が簡便で保守性に優れる。吸引式はポンプで採取し、応答が速くダクト内や局所の管理に向く。光学構成はシングルビームとデュアルビームがあり、後者は光源変動や汚れへのロバスト性が高い。自動ベースライン補正(ABC)は長期のゼロ点安定化に有効だが、外気が十分に低濃度になる運用条件が必要である。筐体は壁掛け、卓上、携帯、ダクト挿入型、データロガー一体型など用途別に最適化される。ここで扱うCO2濃度計はいずれも定期的な校正と清掃で性能を維持できる。

  • 拡散式:低消費電力・据置向け
  • 吸引式:応答性・設置自由度に優れる
  • デュアルビーム:ドリフト耐性が高い
  • ABC搭載:長期運用のゼロ点維持を支援

性能指標と規格

主な仕様は測定範囲(例:0〜2,000ppm、0〜5,000ppm、産業用で0〜10,000ppm以上)、分解能(1ppmなど)、精度(例:±(50ppm+読みの3%))、応答時間(T90)、長期ドリフト、動作環境(温度・湿度)、保護等級(IP)、電源(AC/DC、バッテリ)、出力信号や通信である。出力は4–20mA、0–10V、リレー接点、RS-485/Modbus、BACnet、USB、Wi-Fi、BLEなどが一般的である。産業・建築向けではJISやISO、ASHRAEなどの関連規格・ガイドラインに整合した仕様・試験法が参照されることが多い。

換気管理と目安

屋外背景はおおむね400ppm程度であり、室内は人の呼気や滞留により上昇する。IAQの実務では800〜1,000ppmを一つの目安とし、1,500ppmを超える状態は換気不足の可能性が高いと解釈される。DCVでは人員変動や占有率に応じて換気量を自動調整し、熱ロスと空気質のバランスを図る。ただしCO2は汚染物質そのものの包括指標ではないため、臭気や化学物質の存在評価には別センサの併用が望ましい。

  • 400ppm付近:屋外同等の清浄なレベルの目安
  • 800〜1,000ppm:一般的な許容目安
  • 1,500ppm超:換気改善の検討が必要

選定のポイント

用途(教室、オフィス、病院待合、工場、倉庫、温室、発酵槽、クリーンルーム、輸送車両)に応じ、レンジと応答性、設置形態(壁・卓上・ダクト)、耐環境性、伝送方式、電源、ログ保存、アラームや表示の有無を整理する。保守面ではフィルタ清掃の容易さ、校正手段(外部ゼロガス、ABC、現場ゼロ調整)、交換部品の入手性を重視する。システム連携ではBMSやSCADAへの接続性、プロトコル、セキュリティ、ファーム更新性も評価観点である。

  • 環境条件:温湿度・粉塵・油ミストへの耐性
  • 計測要件:精度・T90・ドリフト
  • I/O:4–20mA、0–10V、RS-485/Modbus、BACnet
  • データ:内蔵ロガー、CSV出力、クラウド連携

設置と運用

室内の代表点(床上約1〜1.5m)に設置し、直射日光や暖房・発熱体、換気口・窓・ドアの直近、強い気流は避ける。人の呼気が直接当たる箇所も誤差要因である。設置後はウォームアップを待ち、ゼロ・スパンの点検を行う。携帯機で巡回測定する場合は、各点での安定待ちや測定順序を統一し、同条件で比較できるよう注意する。

校正・メンテナンス

ABCは、一定周期で低濃度環境に曝される前提でベースラインを自動補正する機能である。24時間常時高濃度の現場では外部ゼロガス(窒素または400ppm相当ガス)を用いた手動校正が必要となる。光学窓やフィルタの汚れは感度低下を招くため、定期清掃や吸気フィルタ交換を行う。経年による光源・検出器の劣化を見越し、年1回程度の点検・校正周期を計画するのが実務的である。

単位と換算

ppmは体積混合比の10−6を意味し、25℃・1atmにおける質量濃度換算はmg/m3=ppm×M/24.45で求まる(Mは分子量)。CO2のM=44.01より、1,000ppm≒1,800mg/m3(1.80g/m3)となる。温度・圧力に依存するため、異条件では換算係数が変化する。表示分解能は1ppmまたは10ppm刻みが一般的で、産業レンジでは上位桁の安定表示が重視される。

測定の注意(交差要因)

水蒸気は赤外吸収・屈折で誤差要因となるため、水蒸気補償や乾燥器の利用が有効である。圧力変化は実効光路長と混合比の換算に影響し、標高差やダクト圧で誤差が出る。粉塵・油ミストは光学窓の汚れを招き、応答遅れや感度低下を生む。電源ノイズや強電界は電子回路に影響するため、シールドやアースを適切に行う。

データ活用と通信

しきい値アラームで換気ファンや外気量を制御し、BMSやSCADAに時系列を収集してピーク・日内変動・季節変動を可視化する。CSVやAPIで他センサ(温度・湿度・CO・PM・TVOC)と統合し、換気率推定や在室推定に応用する。OTAでファームを更新できる機種では、セキュリティ確保と変更管理を徹底する。運用ログと併せてCO2濃度計の校正履歴と設置条件を記録し、再現性とトレーサビリティを担保する。

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