ArF液浸リソグラフィ
ArF液浸リソグラフィは、波長193 nmのArFレーザを用い、投影レンズ先端とレジスト表面の間に液体(超純水)を満たして開口数NAを高める露光技術である。液体の屈折率nが空気より大きいことを利用し、解像度R= k1·λ/NA、焦点深度DOF≈λ/NA²の関係に従って微細化を実現する。
原理と光学的効果
液浸により媒質の屈折率nが約1.44(193 nmの水の近似値)となるため、NA= n·sinθが1.30〜1.35に達しうる。λ一定でもRが縮小し、DOFも確保できる。k1低減(RETやOPC)と併用すれば単枚露光の限界が広がり、二重・多重パターニングの選択肢も拡大する。液体は像面の熱・流体ゆらぎの要因でもあるため、流れ場設計、温調、界面安定化が重要である。
装置構成とフロー
- コータ・デベロッパでレジスト塗布、ソフトベーク、必要に応じトップコート形成。
- スキャナの液供給ノズルと回収系を用いて露光。ステージはスキャン同期し、干渉計とエンコーダでナノメートル級に制御。
- PEBで酸発生・拡散を制御し、現像・乾燥後にエッチングへ移行。
レジスト・材料技術
水接触に耐える化学増幅型レジストを用い、溶出抑制のためトップコートが採用される。溶出物や溶存ガスは気泡・ウォーターマークの起点となるため、原料純度、装置洗浄、溶存酸素管理が工程安定化に直結する。ラインエッジラフネス(LER/LWR)の抑制には高剛性ポリマー設計、酸拡散長制御、現像系最適化が有効である。
欠陥とその対策
- マイクロバブル:流路形状最適化、濡れ性制御、溶存ガス低減で発生を抑制。
- ウォーターマーク:露光後の乾燥プロファイル改善、表面改質、トップコート適用。
- パーティクル:液フィルタリング、低発塵設計、搬送管理で画素欠陥を低減。
解像拡張と多重パターニング
単枚のArF液浸リソグラフィで限界に近づくと、LELE(二重露光・二重エッチング)やSADP/SAQP(自己整合)でハーフピッチを縮小する。これらはアライメント精度、CD均一性、プロセスウィンドウの確保が課題であり、OPC、SMO、位相シフトマスクなどRETが組み合わされる。
計測・制御とメトロロジ
面内の焦点・照度補正、照明開口最適化、オーバレイ計測が歩留りを左右する。AFMやCD-SEMで形状を評価し、フィードバックでステージ、照明、レチクル温調を最適化する。露光ドーズとPEBの連携はDOFとLERのトレードオフ緩和に有効である。
EUVとの位置づけ
EUV露光の普及後も、コストや装置可用性の観点から複数の層でArF液浸リソグラフィは併用される。コンタクト・ビア、配線中層、周辺回路で成熟装置のスループットが優位であり、設計ルールに応じてハイブリッド・フローを採る。
代表的な仕様レンジ(目安)
NA≈1.30–1.35、スキャン速度は高速。照明はオフアクシスが多い。レジスト膜厚は100 nm、トップコートは数十nm。液供給はスリットノズル方式が主流である。
安全・保守と運用
超純水系のバイオフィルム対策、配管材料の溶出管理、洗浄条件の最適化が長期稼働の鍵である。気泡監視、ノズル・フィルタ交換をルーチン化し、異常時は欠陥マップと装置ログを突き合わせて迅速に原因を特定する。