SVC|電圧安定化を担う無効電力補償

SVC

SVC(Static Var Compensator)は、電力系統の無効電力を高速に制御するシャント型の無効電力補償装置である。主構成はサイリスタ制御リアクトル(TCR)と固定コンデンサ(FC)またはサイリスタ投入コンデンサ(TSC)であり、系統電圧の変動や負荷の力率変動に対してミリ秒オーダで無効電力を注入・吸収し、母線電圧の安定化やフリッカ抑制、送電容量の向上に寄与する。電力品質(PQ)の改善を目的に鉄鋼電炉や電鉄、風力連系点などで広く用いられる。

動作原理

SVCは系統母線に並列接続され、母線電圧の偏差に応じて無効電力Qを可変供給する。基本式はQ≈V²/Xであり、リアクトル(インダクタンスL)やコンデンサ(キャパシタンスC)の有効インピーダンスXをサイリスタ点弧角で連続的に変化させることでVを所定範囲に維持する。TCRは連続可変吸収形、TSCはステップ投入の供給形で、両者を組み合わせることで広い動作帯域と高い応答性を確保する。

主要構成要素

  • TCR:サイリスタとリアクトルで構成し、点弧角制御により無効電力吸収を連続可変
  • TSC/FC:コンデンサ群。TSCはサイリスタによる段投入、FCは常時接続で供給
  • 高調波フィルタ:5次・7次・11次・13次などの並列LCで高調波を吸収
  • 結合変圧器:装置と母線の電圧・絶縁レベル整合
  • 制御・保護:電圧検出、V–Qドロップ、PI制御、ゲートパルス生成、過電流・過電圧保護

制御方式と応答

電圧制御は母線電圧指令値と実測値の偏差に対しPI制御を行い、TCR点弧角(α)とTSC投入段数を決定する。大外乱時には段投入のTSCで即応し、微小偏差はTCRで連続補正する。制御ループは一般に数ミリ秒〜数十ミリ秒の応答で、電炉負荷のフリッカや急峻な負荷変動に追従可能である。安定性確保のためドロップ特性とゲイン上限、レートリミットを設ける。

適用分野

  • 鉄鋼電炉:アークの不規則性による電圧フリッカ・高調波を抑制
  • 電鉄・産業負荷:不平衡・突入電流に伴う母線変動の低減
  • 風力・太陽光連系:出力変動に対する電圧支持と力率維持
  • 送電系統:潮流制御や安定度向上、送電容量の増大(有効電力転送限界の押上げ)

設計指針と容量決定

補償容量は対象母線の短絡容量Ssc、許容電圧偏差ΔV、負荷変動特性から算定する。概算では必要無効電力Qreq≈Ssc×(ΔV/V)とし、TCR側の吸収余裕とTSC/FC側の供給余裕を持たせる。過渡現象(突入・励磁・電炉アーク)を含む最悪時でも電圧が規定範囲に収まるように、装置容量、段数、リアクトル値、コンデンサ容量、フィルタ定数を同時最適化する。

高調波とフィルタ設計

TCRの位相制御は特有の奇数高調波を発生させるため、5次・7次などを中心に並列フィルタを設置する。フィルタは無効電力供給源としても機能するため、総合のQバランスと共振回避(系統インピーダンスとの並列・直列共振)を考慮する。周波数偏差・温度特性を見込み、Qの偏りやフィルタ過負荷を避けるためのタップ切替・段分割も有効である。

保護・信頼性

サージ・地絡・短絡に対してヒューズや遮断器、避雷器を配置し、サイリスタのdv/dt・di/dt限界や熱設計(ヒートシンク、強制空冷/油冷)を満足させる。ゲート駆動の冗長化、異常検出時のブロック動作、ブラックスタート時の投入シーケンスなど、実運用を想定したフェイルセーフ設計が重要である。

系統影響と据付

SVC接続点では短絡容量の増加や高調波インピーダンスの変化により、周辺機器(変圧器、コンデンサバンク、ケーブル)の電圧ストレスや損失が変動する。設置レイアウトでは磁気結合や循環電流を抑える母線配置、接地方式(単一点/多点)、EMI対策、保全アクセス性を確保する。屋外設置時は塩害・砂塵・耐雷・耐震など環境要件を満たす。

STATCOMとの対比

SVCは受動素子(L/C)+サイリスタで大容量・高効率・経済性に優れる。一方、電圧源変換器(VSC)を用いるSTATCOMは低電圧時でも定格無効電力を維持しやすく、低出力域の直線性や小面積・無効/有効の独立制御に強みがある。系統条件・性能要求・コストから最適選択または併用を検討する。

簡易計算例

基幹母線100 kV、短絡容量2,000 MVA、許容電圧偏差±1%とすると、必要無効電力はQreq≈2,000×0.01=20 Mvarとなる。TSC側に+15 Mvar、TCR側に−25 Mvarのレンジを持たせる構成とすれば、供給・吸収の両方向にマージンを確保し、負荷急変時の応答余裕を持てる。

導入効果と評価

  • 電圧安定化:母線電圧偏差・変動率の低減、フリッカ抑制
  • 損失・コスト:力率改善による系統損失低減、契約電力・無効電力料金の最適化
  • 設備有効活用:送電容量の向上、発電機励磁負担の軽減
  • 電力品質:高調波抑制フィルタ併設でTHD改善、機器寿命延伸

用語メモ

TCR:Thyristor Controlled Reactor、TSC:Thyristor Switched Capacitor、FC:Fixed Capacitor、STATCOM:Static Synchronous Compensator。いずれも無効電力制御の手段であり、系統要件に応じて適用する。

実務留意点

試運転時は段階的負荷印加で制御ゲイン調整とフィルタ同調確認を行う。季節・運転モードでの系統インピーダンス変動を見込んだ設定プロファイルを用意し、保護協調票・インターロック設計を文書化しておくと保全が容易である。