SUS316(17-12ステンレス鋼)
SUS316は、「17-12ステンレス鋼」とも呼ばれるオーステナイト系ステンレス鋼であり、クロム(約17%)とニッケル(約12%)を含み、さらにモリブデン(約2〜3%)を添加しているため、優れた耐食性と強度を持つことが特徴である。この構成により、特に塩化物や海水などの腐食環境に対して強力な耐性を持ち、過酷な条件下でも安定した性能を発揮する。SUS316は、食品加工機器や化学プラント、海洋環境での装置、医療機器など、腐食リスクが高い用途で多く使用されている。
材料特性
SUS316は、クロムとニッケルに加えてモリブデンを含んでおり、このモリブデン添加によって塩化物に対する耐孔食性が向上している。これにより、塩水や化学薬品などによる腐食に対して非常に強い耐性を持つ。また、オーステナイト系の特性として、柔軟性と靭性が高く、低温から高温に至るまで安定した機械的特性を発揮する。このため、厳しい温度環境でも高い耐久性を保つことができ、非磁性の特性もあるため、磁気の影響を避ける必要がある用途でも利用される。
φ190のSUS316の丸材。
材料費が高いのでお釈迦に出来ないという緊張感。
さてと、片手で持てるくらい削ります(^^) pic.twitter.com/Kp2jAcE0Yf— 横浜市にある小さな町工場 高谷精密工業 (@tetsupon123) June 26, 2024
用途
SUS316は、過酷な環境での耐食性を活かし、さまざまな産業で利用されている。化学プラントでは、酸やアルカリなどの薬品を扱うタンクや配管、リアクターなどの設備に用いられている。また、海洋関連設備や塩水に触れる場所での使用にも適しており、船舶や海洋構造物の部品、海水ポンプの配管などでも使われている。さらに、食品加工機器や医療用の手術器具、インプラントなど、人体や食品に触れる製品でも、その耐食性と衛生性が評価され、広く採用されている。
加工性と熱処理
SUS316は加工性に優れており、冷間加工や熱間加工が可能である。冷間加工では強度が向上し、複雑な形状に加工する際にも適している。例えば、冷間引き抜きによって細いワイヤーや薄板を作成することができ、精密な部品製造に利用される。また、熱間加工によって大きな部品の形成も可能であり、適切な温度での熱処理を行うことで、材料特性を保ちつつ、必要な形状を得ることができる。さらに、溶接性も高く、溶接後の耐食性を確保するためには酸洗いやパッシベーション処理を行うことが推奨される。
SUS316
ブーン pic.twitter.com/jHsSApynSb
— 有限会社 大平工具製作所 (@taiheitool1961) November 21, 2024
SUS304との比較
SUS316とSUS304の違いは、主に耐食性と構成元素にある。SUS316にはモリブデンが含まれており、この元素が塩化物に対する強い耐性を提供するため、海水や化学薬品にさらされる環境に特に適している。SUS304も多くの環境で優れた耐食性を発揮するが、塩分が多い環境下では耐久性が限られることがある。このため、SUS316はより過酷な環境での使用が求められる場合に選ばれることが多く、その分コストもやや高くなるのが一般的である。
メリットとデメリット
SUS316の最大のメリットは、優れた耐食性である。塩化物や化学薬品に対する高い耐性により、非常に過酷な腐食環境でも長期間安定した性能を提供する。また、加工性や溶接性も高いため、製品の設計自由度が広く、幅広い用途で利用できる。一方で、デメリットとしては、SUS304に比べてコストが高いことや、過度な熱処理によって特性が低下するリスクがあるため、使用条件に応じた慎重な設計と加工が求められる。
ステンレス配管は主にSUS304やSUS316という鋼種が使用されています。
鋼種により機械的性質が異なるステンレス鋼は、その製品用途に適した鋼種で出来ています。配管にはSUS304やSUS316等のオーステナイト系 ステンレスが適しています。https://t.co/zEVHUWqBiC pic.twitter.com/GUcsLltbCv— ベンカン【群馬県太田市】 (@BENKAN_japan) November 7, 2022
使用上の注意点
SUS316を使用する際には、腐食環境に対して適切な表面処理を行うことが重要である。特に、塩化物に長期間さらされる環境では、パッシベーション処理を行い、耐食性を強化することが推奨される。また、溶接後には溶接部の耐食性を保つために酸洗いやパッシベーション処理を行うことが必要である。使用する環境の温度にも注意が必要で、適切な温度管理を行うことで、SUS316の性能を最大限に引き出すことが可能である。