HASS|高ストレス試験で初期不良を摘出

HASS

HASS(Highly Accelerated Stress Screening)は、製品量産段階で潜在欠陥を短時間に顕在化させ、不良流出を防ぐための加速ストレス選別手法である。開発段階で設計限界を探索するHALTに対し、HASSは決定済みの製品設計を壊さずに「適切にきつい」条件でふるい分ける点が本質である。想定使用環境を大きく超える複合ストレス(温度サイクル、振動、電源変動など)を短時間に印加し、組立ばらつきや初期欠陥、潜在的な弱点を早期に摘出する。過剰ストレスによる良品破壊を避けつつ、見逃しを最小化するプロファイル設計が重要である。

目的と位置づけ

HASSの目的は、出荷品質の安定化とフィールド初期不良の低減である。単体検査や機能試験では顕在化しにくい接触不良、はんだ界面欠陥、ボンドワイヤの微小クラック、締結部の緩み、部品選別ミスなどを、短時間の高応力で露呈させる。工程内の最後段または出荷前のスクリーニングとして運用し、フィードバックにより工程能力を継続的に改善する。

原理(ストレスと欠陥活性化)

潜在欠陥は、温度・機械・電気ストレスの組合せで活性化される。温度サイクルは線膨張差によりはんだ・樹脂界面にせん断応力を与え、ランダム振動は共振・微小摩耗を促す。電源の過渡(ランプ、ディップ、サージ)はマージン不足や制御系の弱点を顕在化させる。これらを同時に印加することで、単独では露呈しない相互作用起因の不具合が短時間で再現される。

試験プロファイルの設計

  • 目標設定:量産投入後の初期不良率、許容コスト、スループットを定める。
  • ストレス選定:製品の故障物理と使用環境に基づき温度・振動・電源を軸に決める。
  • 強度設定:限界を超えない範囲で「発見力」を最大化する強度・時間・回数を最適化する。
  • 監視指標:機能モニタ、リーク電流、消費電力、ノイズ、温度応答、自己診断ログを収集する。
  • 妥当化:パイロットロットで良品破壊の有無、欠陥検出率、タクト影響を検証しロバスト化する。

代表的ストレスと印加方法

  • 温度サイクル:広温度範囲(例:-40〜+85℃)の急速サイクル。遷移勾配と滞留時間を管理する。
  • ランダム振動:広帯域(例:5〜2000Hz)でPSD管理し、共振を横断する。
  • 電源変動:ランプ、ドロップ、リップル重畳、突入電流、短時間遮断のシーケンスを組む。
  • 湿熱・結露:過度な腐食促進を避けつつ、結露通電の脆弱性を評価する。
  • 通電負荷:最大負荷・突入・サイクル負荷で熱設計余裕と制御安定性を確認する。

判定基準とスクリーニング

判定は「機能異常」「仕様逸脱」「異音・異常振動」「電気的逸脱」「外観欠陥」のカテゴリで定義する。バイナリ判定(合否)に加えてトレンド指標(電流上昇、温度ドリフト、リトライ回数)を閾値管理し、予兆でリジェクトする。検出品は不具合解析に回し、層別(ライン、作業者、サプライヤ、ロット)で原因を特定し是正する。

HALTとの違い

HALTは設計段階で強制破壊を許容し限界を探索する。一方HASSは量産品を壊さずに潜在欠陥のみを選別する。したがって限界超のステップストレスは用いず、製品限界の安全側にマージンを置く。プロファイルはHALT成果(故障物理、支配的モード、感度)を踏まえて策定される。

歩留まり・コストへの影響

HASS導入初期は検出率増加により直後の歩留まりが見かけ上悪化することがある。しかし工程是正が進むとライン不良と市場初期不良が低減し、保証費と再工費の削減、ブランド信頼の向上で収支は改善する。タクト延伸は並列化や選別対象の絞り込み(クリティカルユニットのみ)で吸収する。

実装プロセス(量産への落とし込み)

  • パイロット運用:小ロットでプロファイル、閾値、保全手順を確定。
  • 標準化:作業標準、設備校正、データ収集様式、判定フローをドキュメント化。
  • 監視と改善:日次で合否率・再現率、月次でロット間ばらつきと市場不良相関をレビュー。
  • 保全:チャンバ、振動台、電源のトレーサビリティと点検を計画保全に組み込む。

統計解析とサンプル設計

サンプルサイズは目標捕捉率と許容リスクで決める。抜取検査(c=0運用など)のOC曲線で見逃しリスクを可視化し、必要であれば全数HASSを適用する。発見された故障モードはワイブル分布でパラメータ推定し、量産初期の「初期故障」区間の短縮に結びつける。市場信頼性指標(MTBF、FIT)との相関を継続観測し、プロファイルの強度・時間を最適化する。

注意点・副作用

過大ストレスは良品を破壊し偽陽性を増やすため、設計限界の安全側に強度上限を設定する。複合ストレスの同時印加は相乗効果を生みやすく、設備差・治具差が結果に影響するため、治具剛性や温度均一性を事前評価する。解析は物理根拠に基づき、単なる置き換えや対症だけで終わらせない。

規格・参考フレーム

HASS自体は企業内標準として運用されることが多いが、環境試験の個別要素はIEC 60068系、振動・衝撃・温度試験の一般規格、電子実装信頼性の業界指針などを参照する。重要なのは規格の単純転用ではなく、故障物理にもとづく自社製品最適化である。設計・製造・品質保証・サプライヤが一体でループを回すことが成功の鍵である。