CVケーブル
CVケーブルは、導体を架橋ポリエチレンで絶縁し、その外側をビニル(ポリ塩化ビニル)のシースで覆った電力ケーブルである。正式名称は「架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル」で、600V級の低圧幹線から6600Vの高圧受電、さらに66kV以上の特別高圧送電まで幅広い電圧で使われている。常時の導体許容温度が90℃と高く、同じ断面積でも塩化ビニル絶縁の電線より多くの電流を流せる点が最大の特徴となる。工場やビルの電気工作物では、受変電設備から分電盤へ至る幹線に採用される例が多い。
名称と記号の読み方
記号のCはCross-linked polyethylene(架橋ポリエチレン)、VはVinyl(ビニル)を表す。日本の電線記号は「絶縁体→シース」の順に頭文字を並べる慣習があり、VVケーブルがビニル絶縁ビニルシース、CVケーブルが架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースという対応になる。末尾にTが付くCVTは単心ケーブルを3本より合わせたトリプレックス形、Qが付くCVQは4本よりのカドラプレックス形、Dが付くCVDは2本よりのデュプレックス形を指す。図面や見積書では「CVT 60sq」のように公称断面積と組み合わせて書かれ、複線図や単線結線図を読むときにも頻繁に登場する。
油浸紙から架橋ポリエチレンへ
ポリエチレンは優れた絶縁材料であるものの、100℃前後で軟化するため電力用途には限界があった。分子どうしを化学的に結びつける「架橋」で耐熱性を高める技術は1950年代に米国で実用化され、日本でも1960年代初頭には国内電線メーカーが架橋ポリエチレン電線の研究成果を発表している。当時、高圧・特別高圧の地中線では油浸紙を絶縁に用いるOFケーブルが主流で、給油設備の保守が大きな負担であった。乾式で扱いやすい新型ケーブルはまず6.6kV配電線で普及し、66kV、154kV、275kVと適用電圧を上げていく。2000年には東京電力の新京葉―豊洲線で500kV級の長距離線路が運用を始めた。低圧屋内でも、かつての低圧ノップがいしによる露出配線に代わり、ケーブル配線が主役となって久しい。
低圧用と高圧用の構造の違い
600V用の構造は単純である。軟銅より線の導体、架橋ポリエチレン絶縁体、介在物と押えテープ、ビニルシースの順に重なり、絶縁体の厚さは1mm前後にとどまる。6600V用になると話が変わる。三相6600V系統の対地電圧は約3810Vに達し、導体表面のわずかな凹凸にも電界が集中して部分放電の起点となりやすい。そこで絶縁体の内側に内部半導電層を設けて電界を均一化し、外側は外部半導電層と銅テープ遮へいで同電位に保つ。絶縁体の厚さも4mm程度まで増す。
遮へい層の接地
高圧CVケーブルの銅テープ遮へいには、電気設備技術基準の解釈に基づきA種接地工事を施すのが原則である。遮へい層を浮かせたままにすると誘導電圧が生じ、感電や漏電検出の誤動作を招く。地絡方向継電器(DGR)を備えた受電設備では、零相変流器(ZCT)に対する接地線の通し方を誤ると地絡を検出できない。竣工検査で必ず確認される項目のひとつである。
VVケーブル・EM-CEケーブルとの比較
低圧幹線のケーブル選定では、安価なVVケーブル、許容電流の大きいCV、環境配慮型のEM-CEケーブルが主な候補に挙がる。EM-CEは絶縁体に架橋ポリエチレン、シースに耐燃性ポリエチレンを用いたエコケーブルで、燃焼時にハロゲンガスを出さない。公共建築工事標準仕様書でエコケーブルが標準とされて以降、官庁施設やデータセンターではEM-CEの採用比率が高い。規格面では、低圧の架橋ポリエチレン系ケーブルをJIS C 3605、高圧用をJIS C 3606が規定している。
| 項目 | VVケーブル | CVケーブル | EM-CEケーブル |
|---|---|---|---|
| 絶縁体 | ビニル | 架橋ポリエチレン | 架橋ポリエチレン |
| シース | ビニル | ビニル | 耐燃性ポリエチレン |
| 常時許容温度 | 60℃ | 90℃ | 90℃ |
| 短絡時許容温度 | 120℃ | 230℃ | 230℃ |
| 燃焼時のハロゲンガス | 発生する | 発生する | 発生しない |
| 主な電圧階級 | 600V | 600V〜500kV | 600V・6600V |
CV3心とCVTの使い分け
同じ3心でも、1本のシースに3心を収めたCV3心と、単心を3本より合わせたCVTでは性格が異なる。CVTは各心が独立したシースを持つため放熱しやすく、38sqクラスで比べると許容電流が数%から1割程度大きい。曲げやすさも段違いで、盤への引き込みや端末での心線の振り分けが短時間で済む。設備更新の打ち合わせで「割高でもCVTにすべきか」と聞かれることがあるが、実際には電線商社の見積もりでm単価が同等か、CVTのほうが安い場合も珍しくない。銅建値の変動で価格は月ごとに動くため、数百m単位の幹線では発注のタイミングも無視できない。ただしCVTはより合わせの分だけ外径が大きく、ケーブルラックの幅や電線管の占積率は事前に確認しておきたい。
水トリーによる劣化と診断
高圧CVケーブル特有の劣化として知られるのが水トリーである。絶縁体へ浸入した水分と電界の作用で樹枝状の微細な劣化路が少しずつ伸び、最終的に絶縁破壊を起こす。1970年代までの製品は水蒸気で加熱する湿式架橋法で作られ、絶縁体内に微小なボイドや水分が残りやすかった。現在は窒素ガス中で加熱する乾式架橋と、内部半導電層・絶縁体・外部半導電層を一度に押し出す3層同時押出し(E-Eタイプ)が標準となり、水トリーの発生は大幅に抑えられている。それでも布設環境しだいで劣化は進むため、現場では以下の手法を組み合わせて状態を見極める。
- 絶縁抵抗測定:1000Vまたは5000Vの絶縁抵抗計で導体―遮へい間を測る簡易診断
- 直流漏れ電流測定:直流高電圧を印加し、漏れ電流の大きさ・時間変化・キックの有無を評価する
- 誘電正接(tanδ)測定:交流電圧印加時の損失角から吸湿や劣化の程度を推定する
- 残留電荷法・損失電流法:水トリー特有の電気的信号をとらえ、劣化の進行度を判定する
更新時期の目安
高圧ケーブルの更新は、布設後20年前後が検討開始の目安とされる。地中管路で常に水に浸かる区間は劣化が早く、15年未満で絶縁破壊に至った例もある。受電点の電力量計へ至る引込ケーブルが破壊すれば構内全体が停電し、電力会社の配電線に波及事故を起こすおそれも生じる。診断結果が良好でも、計画停電に合わせて予防的に引き換える工場は少なくない。
施工時の注意点
内線規程では、高圧ケーブルの曲げ半径を単心で仕上がり外径の10倍以上、多心およびトリプレックス形で8倍以上としている。キュービクル内の狭い空間で無理に曲げると、半導電層の浮きや遮へい銅テープの破断を招き、数年後の絶縁破壊の原因になる。端末処理ではストレスコーンの位置と外部半導電層の剥ぎ取り寸法が品質を左右し、メーカー指定から数mmずれただけで電界集中が起こり得る。低圧の幹線では、許容電流に加えて電圧降下と電力損失を見込んで太さを決める。上位の配線用遮断器の定格と想定短絡電流から熱的強度を確かめ、ラック・管路・ピットといった配線方法ごとの低減率を掛けて最終サイズを決定するのが実務の流れである。
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