CNC旋盤
CNC旋盤は、ワークを主軸で回転させ、X・Z軸サーボで工具を制御して高精度に旋削加工を行う数値制御旋盤である。タレットや刃物台に装着したバイトやドリルを自動位置決めし、Gコードで記述されたプログラムに従い送り・主軸回転・クーラント・チャック開閉などを統合制御する。段取りの再現性が高く、中量生産から量産、試作まで幅広く用いられる。近年はY軸・C軸やミーリング機能、オートローダやバーフィーダと連携した自動化、プローブによる自動計測まで実装し、工程集約とタクト短縮を実現する。
構造と主要要素
主要構成はベッド、ヘッドストック、主軸、チャック、刃物台(タレット)、ボールねじ、リニアガイド、サーボモータ、制御装置、カバー、クーラント系である。主軸は高剛性ベアリングで支持され、チャックはソフトジョーによりワーク把握面を最適化する。X・Z軸はボールねじとリニアガイドで案内され、CNC旋盤は位置ループと速度ループにより高い追従性を確保する。チップコンベヤとミストコレクタは切りくず・ミストの管理に寄与する。
軸構成と補間制御
標準は2軸(X・Z)で、C軸(主軸割出)やY軸(径方向オフセット加工)を備える機種も多い。直線補間(G01)、円弧補間(G02/G03)を基本に、ねじ切り(G76など)、ドウェル、面取り、自動原点復帰を組み合わせて軌跡を生成する。工具半径補正、工具長補正、熱変位補正、ねじれ補正により形状・寸法精度を安定化させる。
プログラムとデータ管理
NCプログラムはGコードとMコードで記述され、主軸回転数S、送りF、工具番号T、オフセット番号、座標系設定などを宣言する。サブプログラムやマクロ変数(#100等)を用いた共通化により段取り替えを迅速化できる。工具管理は工具寿命、摩耗量、刃先R、突き出し長を属性化し、予備工具呼び出しで停止時間を削減する。DNCやUSB/イーサネット経由の転送、履歴・改版管理はトレーサビリティ確保に有効である。
段取りとワーク把握
段取りではチャック選定(3爪・2爪・コレット)、ソフトジョーの成形、基準面の定義、芯出し、突き出し長の最小化が重要である。ワークゼロは基準端面と径基準で設定し、工具原点はプリセッタまたはタッチセンサで登録する。振れ(ランアウト)や把握圧の過不足は寸法ばらつき・面粗さ悪化・変形の原因となるため、把握面粗さと接触長を設計的に確保する。
切削条件と計算
切削速度はVc、主軸回転数はN、工具送りはfn(1回転当たり送り)で表す。代表式はN=Vc/(πD)で、Dは被削材径である。荒加工はap(切込み)とfnを大きく、仕上げは小さく設定し、チップブレーカ形状と切りくず排出性を両立させる。材料(炭素鋼、合金鋼、ステンレス、アルミ)ごとの推奨Vcと刃先材種(超硬、CBN、PCD)を参照し、スローアウェイチップのコーナR・すくい角でバリ・ビビリを抑制する。クーラントは熱・摩擦低減と表面品位向上に寄与し、MQLは環境負荷とミスト抑制の選択肢である。
代表的加工機能
- 外径・端面旋削、R形状・テーパ加工、溝入れ・突切り
- ねじ切り(多段仕上げ)、ドリル・ボーリング・タップ加工
- ミーリングツールによるキー溝や平面加工(Y軸・C軸併用)
- 同時割出加工、ポリゴン加工、偏心加工、サブスピンドル搬送
精度・品位と測定
真円度、円筒度、同軸度、面粗さRa/Rzが主要指標である。熱変形対策として機上のウォームアップ、熱対称構造、スルースピンドルクーラントを活用する。機上測定プローブで自動補正を実施し、機外ではマイクロメータ、ダイヤルゲージ、表面粗さ計で検査する。工具摩耗は寸法ドリフトや仕上げ面の条痕として現れるため、摩耗限界に達する前の予防交換が望ましい。
品質安定と統計管理
量産では初品承認後にSPCを適用し、管理図で寸法中心のドリフトとばらつきを監視する。バラツキの主要因は把握条件、工具摩耗、切削熱、機械剛性であり、実験計画法による最適化が有効である。加工能率は切削除去率、段取り時間、停止時間の合算で評価し、チップ排出とクーラント清浄度の維持が連続運転の鍵となる。
保全と安全
予防保全はリニアガイド・ボールねじ給脂、主軸振動・温度監視、バックラッシュ監視、リミットセンサ点検を含む。異常時の非常停止、ドアインタロック、工具破損検知、ミスト排気は安全確保に必須である。切りくずは巻付きや飛散の危険があるため、チップブレーカと適正クーラントで管理し、長尺材の突き出しではガイド装置を用いる。
機種選定の要点
対象ワークの最大径・全長・質量、必要公差、材質、タレットステーション数、主軸出力、バー材貫通径、Y軸・C軸やサブスピンドルの要否、ATCやローダの有無を基準に選定する。工程集約が必要ならミーリング機能付き、量産バー材ならバーフィーダ連携のCNC旋盤が有利である。治具と工具標準化により段取りの再現性を高め、加工の外段取り化で稼働率を最大化する。
用語補足
fnは1回転当たり送り、fzは1刃当たり送り、apは切込み深さ、aeは接触幅である。工具補正は幾何学(長さ・半径)と摩耗量で別管理し、ゼロバックラッシュ化は予圧・高精度ボールねじやデジタル制御で実現する。C軸割出は主軸エンコーダ分解能に依存し、高精度割出には補間と誤差マップの適用が有効である。