環境試験|温湿度や振動で製品の信頼性を評価

環境試験

環境試験は、製品や部品が輸送・保管・使用の各段階でさらされる温度、湿度、振動、衝撃、塩分、粉じんなどの条件を人工的に再現し、性能を保てるか、壊れないかを確かめる試験の総称である。対象は電子機器、自動車部品、航空宇宙機器、医療機器など幅広い。国際規格ではIEC 60068シリーズが基本となっており、日本ではこれと整合したJIS C 60068シリーズが広く使われている。開発段階で設計の弱点を見つける手段であり、取引先に品質を保証する根拠にもなる。

軍事規格から始まった歴史

体系的な試験の出発点は、第二次世界大戦中の経験とされる。熱帯や寒冷地へ送られた通信機や兵器が、湿気によるカビ、低温での潤滑油の固化、輸送中の振動などで次々と故障したためである。戦後、米国防総省は1962年にMIL-STD-810を制定し、高温、低温、降雨、砂じんなどの試験方法を一つの規格にまとめた。改訂を重ねた現行版は2019年発行のMIL-STD-810Hで、軍用品だけでなく、高い堅牢性をうたうスマートフォンやノートPCの評価にも引用されている。民生分野でもIECが1960年代から60068シリーズの整備を進め、日本は旧JIS C 0010系列を経て国際規格に合わせたJIS体系へ移行した。

何を確かめるための試験か

似た言葉に信頼性試験がある。信頼性試験が寿命や故障率を統計的に扱うのに対し、環境試験は「決められた環境ストレスに耐えるか」を合否で判定する性格が強い。実務での目的は、試作品の設計検証、量産前の認定試験、量産品の定期的なロット確認の3つに分けられることが多い。自動車業界ではAEC-Q100(車載IC)やAEC-Q200(受動部品)といった業界規格が試験項目の組み合わせを定めており、部品メーカーはこれに合格しないと取引の土俵に立てない。

主な試験項目と対応規格

試験項目は、温度・湿度を変える気候系と、力を加える機械系に大きく分かれる。代表的な項目と規格、条件例を下の表に示す。条件は製品の用途や等級によって変わるため、あくまで一例である。

試験項目 代表規格 条件例
高温試験 JIS C 60068-2-2 +85℃で96時間
低温試験 JIS C 60068-2-1 -40℃で96時間
高温高湿試験(定常) JIS C 60068-2-78 40℃、93%RH
温度サイクル・熱衝撃試験 JIS C 60068-2-14 -40℃⇔+125℃、各30分保持
正弦波振動試験 JIS C 60068-2-6 10〜500Hzを掃引
衝撃試験 JIS C 60068-2-27 500m/s²、11ms、正弦半波
塩水噴霧試験 JIS Z 2371 35℃、NaCl 5%溶液
防じん・防水試験 JIS C 0920(IEC 60529) IPX7:水深1m、30分

温度・湿度系の試験

温湿度試験には恒温恒湿槽を使う。高温では樹脂の変形や電解コンデンサの劣化が、低温では材料の脆化や液晶の応答低下が起きやすい。温度サイクル試験で問題になるのは、熱膨張係数の違う材料のつなぎ目である。基板と部品の膨張差が繰り返しかかるとはんだ接合部に疲労き裂が生じ、最後は導通不良になる。

機械的ストレス系の試験

振動試験では動電型加振機を使うのが一般的で、車載品なら実車の走行データに近いランダム振動(JIS C 60068-2-64)を与えることも多い。ねじのゆるみ、コネクタの接触不良、部品の共振による折損などがよく見つかる故障モードである。

単独試験の限界と複合環境試験

実際の使用環境では、温度と振動が同時にかかる。車のエンジンルームに付く電子制御ユニットは、-40℃の冬の始動直後から100℃を超える高温まで温度が変わり、その間ずっと振動を受け続ける。単独の試験に別々に合格しても、組み合わさると壊れる例は珍しくない。そのため自動車分野では、ISO 16750-3(機械的負荷)やISO 16750-4(気候的負荷)を参考に、温度槽と加振機を一体にした複合環境試験装置で評価する。設計の限界を短時間で探るHALT(高加速限界試験)も、毎分60℃級の急激な温度変化と多軸振動を組み合わせた手法として知られている。

加速試験による寿命推定

10年の使用期間をそのまま試験するのは現実的ではない。そこで使用時より厳しい条件で劣化を早める加速試験を行い、結果を使用条件に換算する。温度による加速はアレニウスの式で見積もり、加速係数AFは次の式で表される。

AF = exp{(Ea / k) × (1 / Tu − 1 / Ts)}
Ea:活性化エネルギー[eV]、k:ボルツマン定数(8.617×10-5 eV/K)、Tu:使用温度[K]、Ts:試験温度[K]

たとえばEaを0.7eVとし、使用温度55℃・試験温度125℃で計算すると、AFは約78になる。125℃で1,000時間の試験は、55℃で約78,000時間、つまり約9年分の使用に相当すると見なせる。湿度も加える場合は、85℃・85%RHで1,000時間のTHB試験や、半導体パッケージ向けに130℃・85%RHで加圧するHAST(JESD22-A110)が使われる。ただし、加速しすぎると実際の使用では起こらない故障が現れる。活性化エネルギーの選び方ひとつで推定寿命が何倍も変わるため、換算結果はあくまで目安として扱うべきである。

試験計画と現場での注意点

試験の質は、条件設定の段階でほぼ決まる。一般的な進め方は次のとおりである。

  1. 製品が実際に置かれる温度範囲、振動、湿度などの使用環境を調べる
  2. 顧客仕様や業界規格に照らして試験項目と条件を決める
  3. 供試品の数、中間測定のタイミング、合否の判定基準を事前に決める
  4. 外観、寸法、電気特性などを初期測定する
  5. 試験を行い、終了後に最終測定と故障解析を実施する

現場でよくある失敗が、低温試験直後に槽の扉を開けて結露させてしまうことである。水滴が付いた状態で通電すると、本来の評価とは無関係な短絡が起きる。振動試験では、供試品を固定する治具が試験周波数域の中で共振し、想定の数倍の加速度を与えてしまう例もある。治具は事前に共振点を確かめ、2,000Hz程度までは共振しない剛性を持たせるのが望ましい。コスト面では、内容積100L級の恒温恒湿槽でも本体価格が数百万円規模になり、振動試験装置はさらに高価で、設置場所や電源設備も必要になる。年に数回しか試験しない中小メーカーなら、東京都立産業技術研究センターのような公設試験研究機関や民間の受託試験所を使うほうが現実的である。塩水噴霧試験では、めっき部品の腐食評価に96〜1,000時間かかることもあり、装置を長期間占有する分だけ外注費が増える。その点は日程に余裕を持たせて見積もりを取りたい。試験結果を品質管理の記録として残し、防水性能をIPコードで表示する場合は、試験条件と等級が一致しているかも確認しておく必要がある。

コメント(β版)