公共調達|行政機関が税金で行う購買の仕組み

公共調達

公共調達とは、国や地方公共団体、独立行政法人などの公的機関が、事業に必要な物品・役務・公共工事を民間から購入・発注する行為の総称である。日本では、国の契約は会計法、自治体の契約は地方自治法を根拠とし、税金を財源とするため公正性・透明性・経済性の3つが原則とされる。OECDの統計では、加盟国の公共調達額はGDPの約13%前後にのぼり、製造業や建設業にとって無視できない規模の市場となっている。

会計法から始まった制度の歩み

現行制度の土台は、1947年(昭和22年)に制定された会計法と地方自治法にある。どちらも一般競争入札を原則とし、指名競争や随意契約は例外という位置づけで出発した。ところが実際の運用では、長く指名競争入札が主流であった。発注者が業者を選べる仕組みは手続きが簡単な反面、受注調整の温床にもなった。1990年代に大規模な談合事件が相次ぎ、1994年に国の直轄工事で一般競争入札の本格導入が決まったことが、大きな転換点とされる。

入札方式ごとの違い

契約の相手方を決める方法は、大きく4つに分けられる。発注案件の金額や性質に応じて使い分けられており、予算決算及び会計令(予決令)や地方自治法施行令第167条などに細かい要件が定められている。

方式 参加者 落札の決め方 主な特徴
一般競争入札 資格を満たす全事業者 原則として最低価格 透明性が高いが事務負担も大きい
指名競争入札 発注者が指名した事業者 原則として最低価格 手続きが簡便、閉鎖的になりやすい
総合評価落札方式 資格を満たす全事業者 価格と技術点の総合評価 品質を重視する案件で採用
随意契約 特定の1者または少数 交渉・見積合わせ 少額案件や緊急時、特殊技術が必要な場合

総合評価落札方式の考え方

価格だけで選ぶと、品質の低い製品や無理な工期の工事が紛れ込む。そこで2005年施行の公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)は、価格と品質を総合的に評価することを明文化した。評価点を価格で割る「除算方式」が国の標準で、技術提案、施工実績、配置技術者の資格などが点数化される。

WTO政府調達協定と国際ルール

一定額を超える調達には、国際的なルールも関わってくる。1996年1月に発効したWTO政府調達協定(GPA)は、内外無差別の原則を定めた多国間協定で、日本は2014年4月に発効した改正協定にも参加している。適用基準額はSDR(特別引出権)建てで示され、中央政府の物品・サービスは13万SDR、建設工事は450万SDR、都道府県と政令指定都市の物品調達は20万SDRが目安となる。この基準を超える案件では、官報での公告期間を原則40日以上確保するなど、国内案件より厳格な手続きが求められる。

官製談合をどう防ぐか

入札をめぐる不正は、受注者同士の談合だけでは終わらない。発注側の職員が予定価格を漏らしたり、落札者を事前に示唆したりする「官製談合」も繰り返し問題になってきた。2003年1月には入札談合等関与行為防止法が施行され、公正取引委員会が発注機関に改善措置を求められるようになった。2007年の改正では、職員本人への刑事罰(5年以下の懲役または250万円以下の罰金)も新設されている。受注者側の違反には独占禁止法に基づく課徴金が科され、指名停止と合わせて企業経営に深刻な打撃を与える。

製造業者から見た入札参加の実務

国の物品・役務の入札に参加するには、まず「全省庁統一資格」を取得しなければならない。区分は物品の製造、物品の販売、役務の提供等、物品の買受けの4つで、年間生産・販売高や自己資本額などから等級A〜Dに格付けされる。有効期間は3年。等級によって参加できる案件の予定価格帯が変わるため、中堅メーカーがいきなり大型案件を狙えるわけではない。

現場の担当者が特に神経を使うのは仕様書の読み込みである。JIS規格への適合や特定メーカー品「同等以上」といった条件の解釈を誤ると、納品段階で検収不合格となり、再製作のコストを自社で負担することになりかねない。疑問点は入札説明書に定められた質問期間内に書面で照会しておくのが鉄則で、ここを省略して失注・赤字に陥る例は少なくない。価格面でも注意がいる。予定価格の一定割合を下回ると「低入札価格調査」の対象となり、原価計算の根拠資料や下請体制の説明を求められる。採算度外視の安値で実績を作ろうとしても、調査で手間取ったうえ結局失格になることもある。

電子入札とポータルサイト

国土交通省は2001年度から直轄工事で電子入札を導入し、現在では中央省庁の多くが政府電子調達システム(GEPS)を利用している。案件情報は「調達ポータル」で一元的に検索でき、ICカードによる電子証明書があれば、地方の中小企業でも東京の案件に応札できる。

中小企業への配慮と官公需法

1966年に制定された官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(官公需法)は、国に対して中小企業向けの契約目標を毎年度定めるよう義務づけている。目標比率はおおむね60%前後で推移してきた。大型案件を分割して発注する「分離・分割発注」や、地域要件を設けた入札も、この法律の趣旨に沿った運用といえる。ただし、分割しすぎるとスケールメリットが失われ、調達コストが上がるという指摘もある。経済性と地域産業の育成をどう両立させるかは、自治体ごとに判断が分かれるところである。

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