溶接継手
溶接継手は、2つ以上の部材を溶接でつないで一体にした接合部のことで、その接合の形式も指す。部材どうしの位置関係によって突合せ継手、T継手、重ね継手などに分けられる。同じ形式でも、開先の形や溶込みの深さが違えば強度は大きく変わる。用語はJIS Z 3001-1で定義されている。図面上の表示方法はJIS Z 3021(ISO 2553に対応)で決められている。鉄骨建築、橋梁、船舶、圧力容器など、鋼材を使う構造物ではほぼ必ず設計の中心になる部分である。
リベット接合から溶接構造への移行
20世紀の前半まで、船体や橋梁はリベットで鋼板を重ねてつなぐのが一般的だった。1930年代に被覆アーク溶接棒の品質が上がると、重ね代が要らず軽くて水密性の高い溶接構造が広まり始めた。大きな転機になったのは第二次世界大戦中の米国である。全溶接の戦時標準船「リバティ船」は約2,700隻も造られたが、低温の海域で船体が割れる事故が相次いだ。1943年には、タンカーのスケネクタディ号が岸壁に係留されている間に真っ二つに折れている。原因は、溶接継手の形状が生む応力集中と、低温での鋼材の脆性破壊が重なったことだった。この経験をきっかけに、切欠き靱性の評価や継手の詳細設計の研究が大きく進んだ。
継手の基本形式
継手の形式は、部材をどの角度で、どのように重ねて配置するかで決まる。代表的な6つの形式を次の表に示す。
| 形式 | 部材の配置 | 主な使用箇所 |
|---|---|---|
| 突合せ継手 | 同一平面上で端面どうしを突き合わせる | 鋼板の継ぎ足し、配管の周継手 |
| T継手 | 一方の板をもう一方の板の面に垂直に立てる | 補剛材、ウェブとフランジの接合 |
| 十字継手 | T継手の反対側にも板を配置する | 柱梁接合部のダイアフラム |
| かど継手 | 2枚の板の端部をL字に合わせる | 箱形断面、タンクの隅部 |
| 重ね継手 | 板どうしを一部重ねる | 薄板構造、補修当て板 |
| へり継手 | 平行に重ねた板の端面どうしを溶接する | 薄板容器のフランジ部 |
開先の形状と選び方
厚板を板厚の全体にわたって溶かし込むには、母材の端部に溝を加工する必要がある。この溝を開先と呼び、断面の形によって次のように分類する。
- I形(開先加工なし、薄板向け)
- V形・X形(両側V)
- レ形・K形(両側レ)
- U形・H形(両側U)
- J形・両面J形
V形開先では、開先角度を60°前後、ルート面を1〜2mm程度にする例が多い。片側から溶接するI形突合せは、おおむね板厚6mm以下に限られる。板厚が20mmを超えるあたりからはX形やK形を選ぶことが多い。両側から交互に溶接すれば、溶着金属の量を減らしながら角変形も打ち消し合えるためである。
開先加工のコストと現場での使い分け
実際の製作では、開先形状は溶接のしやすさだけでなく加工費でも決まる。レ形やV形は、ガス切断やプラズマ切断で板を切るときにベベル角を付ければそのまま開先ができ、追加の工程がほとんど要らない。U形やJ形は底に丸みがあるため、開先加工機や旋盤などの機械加工が必要になる。そのぶん1mあたりの加工費ははっきり高くなる。ただし板厚が40mmを超えるような極厚の圧力容器では、U形にすると溶着量が大幅に減る。溶接時間と溶材費まで含めて比べると、U形のほうが安く済むことも珍しくない。X形やK形は母材を反転させる作業が必要になるので、クレーン設備が限られた工場では片面のレ形を選ぶ判断もよく見られる。
溶込みの深さと強度計算
板厚の全体を溶かし込んだものを完全溶込み溶接、一部だけを溶かし込んだものを部分溶込み溶接という。完全溶込みの突合せ継手は、適切な溶接材料を使えば母材と同等の強度を見込める。T継手や重ね継手でよく使われるすみ肉溶接では、力を伝える有効な寸法としてのど厚を使う。脚長Sの等脚すみ肉の場合、理論のど厚aは次の式で求める。
a = S × cos 45° ≒ 0.7S
許容耐力は、のど厚に有効溶接長さを掛けたのど断面積をもとに計算する。図面で指示するときは溶接記号を使い、脚長や溶接長さ、現場溶接かどうかを基線の上に書き込む。
欠陥の種類と非破壊検査
継手の性能は、内部に溶接欠陥がどれだけ含まれるかに大きく左右される。代表的なものには、ブローホール、スラグ巻込み、溶込み不良、融合不良、アンダーカット、割れがある。中でも割れと融合不良は、先端が鋭いため疲労や脆性破壊の起点になりやすい。そのため、許容されないか、許容されても許容値は厳しく設定されている。検査では、体積状の欠陥を見つけやすい放射線透過試験(JIS Z 3104)と、面状の欠陥に強い超音波探傷試験(JIS Z 3060)を、目的に応じて使い分ける。欠陥の許容の程度については、ISO 5817がB・C・Dの3段階の品質レベルを定めている。
熱影響部と残留応力への対策
溶接の熱で組織や硬さが変わった母材側の領域を熱影響部(HAZ)と呼ぶ。炭素当量の高い鋼や厚板では、HAZが硬くなりやすく、水素による低温割れが起こる危険が高まる。これを防ぐ手段が予熱で、鋼種と板厚に応じて50〜150℃程度に加熱してから溶接する。溶接金属が冷えて縮もうとするのを周囲の母材が拘束するため、継手には降伏点に近い残留応力が残る。圧力容器などでは、炭素鋼の場合で600℃前後の溶接後熱処理を行い、この応力を緩和している。
継手効率と疲労強度
設計で継手の信頼性を数値として扱う指標に、継手効率がある。JIS B 8265の圧力容器規定では、両側溶接の突合せ継手について、全線を放射線透過試験したものに1.00、部分的に試験したものに0.85、試験しないものに0.70を割り当てている。検査の範囲を広げれば、その分だけ板厚を薄くできる仕組みである。繰返し荷重がかかる橋梁やクレーンでは、静的強度よりも疲労強度が設計を左右する。日本鋼構造協会(JSSC)の指針は、継手を形式ごとに強度等級に分け、200万回の繰返しに対応する応力範囲を基準に寿命を評価している。疲労き裂の大半は、ビードと母材の境目である止端から発生する。このため、グラインダー仕上げ、TIGドレッシング、ハンマーピーニングで止端の形を滑らかにする処理は、疲労寿命を延ばす現実的な方法として現場で広く使われている。
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