CO2洗浄|非接触で汚れを瞬時に除去

CO2洗浄

CO2洗浄とは、二酸化炭素を洗浄媒体として用い、対象物表面に付着した油脂・微粒子・酸化膜などを除去する非水系かつ無溶剤系の表面洗浄技術の総称である。ドライアイスの粒(ペレット)や微細な雪状結晶(スノー)を圧縮空気とともに噴射する方式、液化炭酸ガスをそのまま吹き付ける方式、さらに臨界点(温度31.1℃・圧力7.4MPa)を超えた超臨界状態のCO2を利用する方式まで、形態は幅広い。使用後のCO2はそのまま大気中へ昇華・気化するため、廃液処理や乾燥工程を別途設ける必要がない点が際立った特徴となっている。1980年代後半に米国で半導体基板の微粒子除去技術として研究が始まり、1990年代にはNASAがスペースシャトルの断熱タイル補修現場に採用した経緯もある。

他の洗浄方式との違い

CO2洗浄が広がった背景には、既存手法が抱える制約がある。脱脂装置による溶剤系洗浄は油膜除去に優れるものの、フロン系・塩素系溶剤の多くがオゾン層破壊物質に指定され使用が制限されてきた経緯がある。水を使う超音波洗浄機はキャビテーションで微細な汚れを剥離できる反面、乾燥工程と排水処理を別途必要とする。研掃材を叩きつけるサンドブラストやブラスチングは除去力に優れるが、媒体の残留や基材表面の摩耗を避けにくい。CO2は昇華して消えるため媒体残渣を残さず、常温以下でも基材の熱変形を招きにくい。

原理

CO2洗浄の除去メカニズムは、機械的衝撃・熱衝撃・微弱な溶解作用の三つが重なり合ったものである。液化炭酸ガスをノズル内で急減圧させると断熱膨張によって温度が急低下し、一部が昇華温度-78.5℃のドライアイス粒子へと相変化する。この粒子が汚染面に衝突する際の運動エネルギーが汚れを機械的に剥離し、同時に局所的な急冷によって汚れと基材の熱収縮率の差、いわゆる熱衝撃効果がひび割れを誘発して剥離を助ける仕組みである。噴射に用いる搬送ガスには圧縮機で昇圧した圧縮空気や窒素が使われることが多く、ノズル出口での粒子速度はおおむね200〜300m/s程度に達する。

洗浄方式の種類

一口にCO2洗浄と言っても、媒体の形態によって適した用途が異なる。次の表は代表的な三方式を整理したものである。

方式 媒体の状態 代表的な用途
ペレット式 固形ペレット(直径約3mm)を圧縮空気で噴射 大型構造物、塗膜・スケール除去
スノー式 微細な結晶(粒径0.3mm程度)を低圧噴射 電子基板、光学部品の微粒子除去
超臨界式 温度31℃・圧力7.4MPa超の単一相流体 精密部品内部の油脂・樹脂残渣除去

液化CO2供給設備

供給には、サイフォン管付きの液化炭酸ガスボンベを用いるのが一般的で、供給圧力は1.5〜2.0MPa程度に管理される。配管内に空気や水分が混入すると氷結によるノズル閉塞を招くため、洗浄工程の前後で配管内を窒素置換しパージしておく現場も少なくない。

適用分野

適用範囲は精密電子部品から重工業設備まで及んでいる。

  • 半導体・電子部品:パーティクル除去や、湿式のRCA洗浄では対応しにくい有機残渣の乾式除去
  • クリーンルーム搬送設備:SMIFポッド内壁面の除電を兼ねた清浄化
  • 印刷・食品機械:ロール表面に付着したインクや油脂の除去
  • 航空宇宙・発電設備:タービンブレードのオーバーホール工程でのスケール除去
  • 金型・精密部品:離型剤残渣を除去し外観不良を防止する用途

導入・運用上の留意点

CO2は無色無臭で漏洩に気づきにくく、密閉空間では酸欠や中毒のリスクがある。作業環境における許容濃度はおおむね5000ppmが目安とされ、換気設計が欠かせない。排気系統にはケミカルフィルターやフィルタエレメントを組み込み、剥離した微粒子や微量成分を捕集する構成が多い。噴射音は90dB前後に達する機種もあり、防音対策や作業者の耳栓着用も併せて検討される。ペレット式は運転コストがドライアイス消費量に比例するため、洗浄面積や処理時間から採算性を試算した上で方式を選定することが望ましい。

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