防振マウント|振動を絶縁し機器を守る緩衝部品

防振マウント

防振マウントとは、モータやポンプ、圧縮機といった振動を発する機器と設置面のあいだに介在させ、振動の伝達を遮断する支持要素である。金属フレームにゴムを加硫接着した構造が一般的で、ゴムの弾性を利用して系の固有振動数を運転周波数より十分低く設定し、伝達率を下げる。据付ボルトで固定するボルト締結型のほか、床に置くだけのパッド型、大変位に対応する積層型まで形態は幅広い。空調設備の室外機から工作機械、船舶の主機まで採用範囲は広く、騒音と微振動の両面で環境を守る役割を担う。

防振ゴムとの位置づけの違い

部品としての防振ゴムと防振マウントは混同されやすいが、実務では区別して扱われる。防振ゴムがゴム単体あるいはブッシュ状の素材を指すのに対し、防振マウントは取付金具・荷重支持機構・抜け止めまで含んだ完成品を意味することが多い。据付現場ではレベル調整のしやすさや保守交換の容易さが重視され、ボルト1本で高さを追い込めるアジャスト機構付きのマウントが好まれる。単価はゴム単体より高いが、施工工数を含めた総コストでは有利になる場面が少なくない。

伝達率と振動数比

防振の効果は振動伝達率で評価する。機器の質量mとマウントの動的ばね定数Kから系の固有振動数が決まり、これを励振周波数からどれだけ離すかが設計の要点となる。運転周波数fと固有振動数fnの比rが√2を超えて初めて伝達率が1を下回り、防振域に入る。実務ではr≧3、すなわちfnを運転周波数の3分の1以下に置く設計が目安とされる。50Hzで回転するモータであれば、固有振動数を10Hz前後まで下げる柔らかい支持が望ましい。ただし柔らかくするほど静たわみが増えるため、レベル出しの許容範囲との折り合いが必要になる。

起動・停止時の共振

運転を開始してから定格回転に達するまで、機器の回転数は固有振動数を必ず一度通過する。この通過共振を無視すると、起動のたびに大きな揺れが生じてボルト緩みや騒音の原因となる。減衰の小さいゴムでは共振ピークが鋭くなるため、共振周波数付近での滞留時間を短くするか、減衰性の高い材料を選ぶ。

形式による使い分け

防振マウントは荷重方向と要求性能に応じて複数の形式が存在する。3項目以上の仕様比較になるため、代表的な型を表に整理する。

形式 荷重方向 主な用途
ボルト締結型(S型) 圧縮主体 ポンプ、送風機の据付
傾斜配置型(V型) 圧縮+せん断 横加振力のある機器
積層ゴム型 水平柔軟 免震、大変位支持
パッド型 圧縮 据付高さ変化を嫌う設備

ゴム材料の選定

マウントに使われるゴムは使用環境で決まる。安価で機械特性に優れる天然ゴム(NR)は−30〜70℃程度が実用域だが、油や薬品には弱い。耐油性を要する箇所ではクロロプレンゴム(CR)やニトリルゴム(NBR)、耐熱・耐候ではエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が選ばれる。減衰を重視する用途には高減衰ゴム(HDR)が用いられ、共振ピークを抑えつつ防振域を確保できる。ゴムは粘弾性体であるため静的剛性より動的剛性が高く、その差はカタログの動的倍率で確認する。金属ばねであるコイルばね式マウントは低周波での防振に優れる一方、高周波の固体伝搬音を通しやすく、ゴムパッドと組み合わせる二段防振で補うことが多い。

選定の流れ

設計では、まず各支持点にかかる荷重を機器重量と重心位置から算出する。支持点が4点でも重心が偏れば1点あたりの負担は大きく変わるため、荷重配分の把握が欠かせない。次に目標固有振動数から必要なばね定数を逆算し、候補マウントの許容荷重・許容変位と照合する。手順を列挙すると次のようになる。

  1. 使用環境(温度、油、屋外、オゾン)を調査し材料を絞る
  2. 各支持点荷重Wiを推定する
  3. 目標固有振動数からr≧3を満たすばね定数を決める
  4. 最大変位時の安全率と抜け止めストッパの要否を確認する

据付と保守の勘所

ゴムは引張に弱いため、圧縮荷重がかかる向きにレイアウトするのが原則である。アンカーボルトを締めすぎるとゴムが座屈・硬化して所定の柔らかさを失うため、レベルシムで高さを合わせながら適正トルクで固定する。長期使用ではオゾンや紫外線でひび割れが進み、5年前後で永久たわみが目立ち始める製品もある。定期点検では亀裂、金具の腐食、接着剥離を確認し、異音や振動増大が出たら早めに交換する。RoHS対応材や再資源化を考慮した機種選定も、B2B調達では見積比較の材料になる。

制振・減衰との組み合わせ

防振マウントは振動の伝達経路を断つ経路対策であり、発生源そのものの振幅を抑える制振とは役割が異なる。板の曲げ振動が問題であれば制振シートで源を抑え、床への伝達はマウントで遮る、という併用が効果的である。地震動のように大きな入力を扱う建築分野ではダンパー粘性ダンパで減衰を稼ぐ設計が主流で、機械据付とは求める周波数帯が異なる。目的とする振動が低周波か高周波か、変位が大きいか小さいかを見極めたうえで、防振・制振・減衰の要素を適切に配分することが現場での勘所となる。

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