ロータリアクチュエータ
ロータリアクチュエータとは、空気圧・油圧・電気などのエネルギーを一定角度範囲の回転運動(揺動運動)に変換する駆動機器である。モータのように連続回転するのではなく、90°、180°、270°といった決められた角度内で往復揺動する点が特徴で、ワークの反転、バルブの開閉、搬送物の方向転換、インデックス動作など、産業機械のいたるところで使われている。空気圧式ではベーン式とラック・ピニオン式が二大方式であり、いずれもJIS B 8386(空気圧-揺動形アクチュエータ)に主要事項が規定される。電動式では位置決め制御と組み合わせて任意角度で停止できる製品が増えており、駆動源の選択肢は年々広がっている。
直動シリンダとの違いと使いどころ
回転動作を得る手段としては、エアシリンダの直線運動をリンクやレバーで回転に変換する方法もある。しかしリンク機構は角度によって出力トルクが変動し、占有スペースも大きくなりやすい。ロータリアクチュエータは出力軸から直接トルクを取り出すため、全角度域でトルクがほぼ一定であり、機構がコンパクトにまとまる。ワーク反転装置を例に取ると、ストローク100mmクラスのシリンダとリンクで構成するより、揺動角180°のアクチュエータ1台に置き換えたほうが部品点数を3分の1程度に削減できるケースが多い。ラックアンドピニオン機構を内蔵した製品なら、位置決め用のストッパやショックアブソーバも本体に集約できる。
空気圧式の二大方式
空気圧式は構造によりベーン式とラック・ピニオン式に大別され、要求トルク・許容漏れ・揺動角で使い分ける。両者の特徴を以下に比較する。
| 項目 | ベーン式 | ラック・ピニオン式 |
|---|---|---|
| 構造 | 羽根(ベーン)が圧力を直接受けて回転 | ピストンの直線運動をラックと小歯車で回転に変換 |
| 揺動角 | シングルベーンで最大約280° | ストローク次第で360°以上も可能 |
| 内部漏れ | ベーン先端のシールから漏れやすい | ピストンシールで漏れが少ない |
| 中間停止 | 不向き | 3ポジション仕様が選べる |
| 体格・価格 | 小形・安価 | やや大形・高価 |
ベーン式の構造
ベーン式は円筒形のボディ内で、出力軸に固定された羽根が圧縮空気の圧力を受けて揺動する構造である。部品点数が少なく軸方向寸法を短くできるため、把持機構の旋回など省スペース用途で選ばれる。シングルベーンの揺動角は90°・180°・270°が標準で、ダブルベーンにするとトルクは約2倍になる代わりに揺動角は100°前後に制限される。発生トルクはT=P×A×r(P:供給圧力、A:ベーン受圧面積、r:有効半径)で概算でき、供給圧力0.5MPaのとき小形機種で0.2~20N・m程度が目安となる。
ラック・ピニオン式の構造
ラック・ピニオン式は、対向配置した2本のピストンがピストンロッド一体のラックを直線駆動し、中央のピニオンを回転させる方式である。シールが往復動用のパッキンで構成されるため内部漏れが小さく、垂直姿勢でワークを保持する用途でも角度が流れにくい。ストロークエンドの衝撃を吸収するため、内蔵ラバーストッパのほか油圧式のショックアブソーバを装着できる機種が多く、慣性の大きな治具の反転でも停止時の跳ね返りを抑えられる。
油圧式という選択肢
大トルクが必要な建設機械の旋回部やプレスの反転装置では、油圧駆動のロータリ機器が使われる。作動圧力は7~21MPaと空気圧より1桁高く、同じ体格でも数百N・mから数十kN・m級のトルクを取り出せる。半面、油圧ユニットや配管の設置が前提となるため、工場内の軽搬送で採用されることはまれである。
電動ロータリアクチュエータ
ステッピングモータやサーボモータに減速機構とテーブルを一体化した電動式は、多点停止と速度プロファイルの自由度で空気圧式と差別化される。出力テーブルにエンコーダを備えたクローズドループ仕様なら、繰返し位置決め精度±0.01°クラスの割出しも実現でき、簡易的なターンテーブルとしてカメラ検査工程に組み込む例が増えている。制御信号はパルス列入力のほか産業用ネットワーク対応品もあり、メカトロニクス機器の一軸として扱いやすい。導入コストは空気圧式の2~5倍程度になるが、電磁弁・配管・エア源が不要になるため、動作変更の多い多品種ラインではトータルで有利になることがある。
選定の考え方
選定で最初に確認するのは負荷の慣性モーメントである。揺動機器は停止時に運動エネルギーを自身で吸収しなければならず、カタログには許容運動エネルギー(例:揺動時間0.5s/90°のときの上限値)が明記されている。実務では次の手順で検討する。
- 負荷(治具+ワーク)の慣性モーメントJを算出する
- 揺動時間から角速度を求め、運動エネルギーE=(1/2)Jω²を計算する
- 許容エネルギーを超える場合は緩衝機構の追加か揺動時間の延長を行う
- 静的な負荷トルク(摩擦・重力分)に安全率を掛け、必要トルクと照合する
- 供給圧力変動を見込み、0.4MPa時のトルクでも成立するか確認する
使用上の注意点
空気圧式で見落とされがちなのが速度調整と外部検出である。メータアウト回路で速度を絞るのが基本であり、給気側で絞ると動き出しがぎくしゃくしてワークを落とす原因になる。揺動端の確認には磁石内蔵形のオートスイッチか、外付けのリミットスイッチを用い、次工程へのインターロックを必ず取る。ベーン式は構造上わずかな内部漏れが避けられないため、装置全体の空気消費流量特性を見積もる際は保持中の漏れ分も加算しておくと、コンプレッサ容量の読み違いを防げる。なお高精度な角度制御を空気圧で行う場合はサーボバルブによる圧力制御という選択肢もあるが、コストと保守性の面から採用例は限られ、ロボットのマニピュレーター先端の旋回のような用途では電動式へ移行する流れが定着しつつある。
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