フランジナット|座金一体型で緩みにくいナット

フランジナット

フランジナットとは、六角部の座面側につば(フランジ)を一体成形しためねじ部品であり、ボルトと組み合わせて部材を締結する機械要素である。つばが座面径を拡大するため、平座金を省略しても接触面圧を低く抑えられる点が最大の特徴といえる。寸法はJIS B 1190(フランジ付き六角ナット)やISO 4161で規定され、自動車、建築設備、農業機械、家電の組立ラインなど、部品点数の削減と作業工数の短縮が求められる分野で広く採用されている。座面にセレーション(放射状の刻み)を付けた回り止めタイプも普及しており、振動環境でのゆるみ対策としても機能する。

構造と寸法規格

フランジナットは、六角の二面幅部と円錐状のつばが一体になった形状を持つ。つばの外径は呼び径のおよそ2倍強に設定されており、例えばM10ではフランジ径21.8mm、M12では26mm程度が標準である。同呼び径の六角ナットの座面に比べて接触面積が大幅に増えるため、被締結材への面圧はおおむね半分以下に低減できる。JIS B 1190では呼びM5からM20までが系列化され、強度区分は8や10が一般的である。フランジ根元にはテーパが付き、座面の傾きや穴位置の誤差をある程度吸収する。二面幅は通常のねじ部品と共用できる寸法が選ばれており、ソケットレンチでそのまま施工できる。

セレーション付きとゆるみ止め機能

座面に刻まれたセレーションは、締付け時に相手材へ食い込み、戻り回転に対する抵抗を生む。作用原理は歯付き座金に近く、摩擦ではなく機械的な引っ掛かりで保持するため、振動や温度変化で軸力が多少低下しても回転ゆるみが進行しにくい。ただし食い込みは相手材表面を傷付けるので、塗装面、めっき面、アルミや樹脂のような軟質材では圧痕や塗膜破壊が問題になる。意匠面や気密面に使う場合はセレーションなしのフラットタイプを選び、必要に応じてばね座金や接着剤系のゆるみ止めを併用するのが実務的な使い分けである。再使用時はセレーションの摩耗で保持力が落ちるため、重要保安部位では新品交換が原則となる。

六角ナット+座金との比較

従来の「六角ナット+ワッシャー」の2部品構成と比べると、フランジナットは組付け工数と部品管理の両面で優位に立つ。一方で単価は六角ナット単体より高く、狭所ではフランジ径が干渉することもある。特徴を整理すると次のようになる。

項目 フランジナット 六角ナット+座金
部品点数 1点 2点
座金の入れ忘れ 発生しない 発生リスクあり
座面面圧 低い(座面径大) 座金選定に依存
狭所での使用 フランジ径が干渉しやすい 比較的自由
ゆるみ止め セレーション付きで対応可 座金の種類で対応

量産組立ラインでは、座金の欠品・入れ忘れという人的ミスを構造的に排除できる価値が大きい。単価差が数円あっても、工数低減と品質保証コストを含めた総額では逆転するケースが多く、自動車のシャシ部品やマフラー固定ではフランジナットが標準化している。

材質と表面処理

材質は冷間圧造性の良い炭素鋼(SWCH系)が主流で、強度区分8以上では焼入れ焼戻しにより機械的性質を確保する。腐食環境ではSUS304やSUS316のステンレス製が選定されるが、ステンレス同士の締結では焼付き(かじり)が起こりやすいため、潤滑剤の塗布や締付け速度の管理が欠かせない。表面処理には三価クロメート付き亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、ジオメット処理などがあり、屋外鋼構造では耐塩水噴霧試験1000時間級の高耐食処理が指定されることもある。エンジン周りのように150℃を超える部位では、ナイロンインサート式ではなく全金属式のゆるみ止め構造が求められ、フランジナットにプリベリング機能を持たせた製品も流通している。

使用上の注意点

締付けトルクの設定には注意が要る。座面径が大きい分だけ座面摩擦トルクの比率が増え、同一トルクでも六角ナットより得られる軸力は小さくなる傾向があるため、トルク表はフランジナット用の係数で作成し直すべきである。セレーション付きでは食い込み分のトルクロスも加わる。相手材が薄板の場合、つばの外周だけが当たる片当たりで板が変形することがあり、その際は板厚の見直しや当て板の追加で対処する。両端ねじのスタッドボルトと組む配管フランジ用途では温度サイクルによる軸力低下を点検計画に織り込み、脱落が許されない回転部ではコッタピンのような機械的ストッパの併用も検討するとよい。

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