OES|プラズマ発光をリアルタイムで監視する分光計測技術

OES(発光分光法)

OES(Optical Emission Spectroscopy、発光分光法)とは、励起状態の原子・イオン・分子が基底状態へ遷移する際に放出する光のスペクトルを分析し、試料中の元素組成や化学種の存在量を定性・定量する分析手法である。プラズマや放電などのエネルギーで励起した発光を回折格子で分光し、各波長の輝線スペクトルを検出することで、元素固有の情報を非破壊かつ高感度に取得できる。半導体製造においては、プラズマ処理チャンバ内のガス種をリアルタイムでモニタリングするインプロセス計測技術として広く活用されており、エッチングのエンドポイント検出やプロセス異常の早期検知に不可欠な位置づけにある。

発光の原理

OESの動作原理は、外部エネルギーによって励起された粒子が放出する光の波長と強度を測定することにある。原子の外殻電子がエネルギー準位の高い励起状態へ遷移した後、自発的に基底状態へ戻る際に、両準位のエネルギー差に相当する波長λの光子を放出する。この波長は元素ごとに固有であり、「輝線スペクトル」として観測される。発光強度はプラズマ中のその種の粒子密度に比例するため、強度を定量的に評価することで元素濃度の推定が可能となる。励起源としては、高周波誘導結合プラズマ(ICP)、グロー放電、直流アーク放電、スパーク放電など多様な方式が用いられており、目的や試料形態に応じて使い分けられる。

装置構成

OES装置は一般に、励起源(プラズマ発生部)、分光部、検出部、信号処理部の4ブロックで構成される。試料は励起部でプラズマ化または気化・励起され、放出された光は分光部の回折格子によって波長ごとに分離される。検出部では光電子増倍管(PMT)やCCD・CMOSセンサが使用され、分離されたスペクトル線の強度を電気信号に変換する。CCD/CMOSセンサは1チップで広い波長範囲を同時検出できるため、装置の小型化と多元素同時分析を可能にしている。信号処理部では取得した強度データを解析し、元素の定性・定量結果として出力する。シーケンシャルタイプは逐次的に波長を走査するため分解能が高く、マルチタイプは固定光学系で全波長を同時計測するため高速かつ再現性に優れる。

半導体製造への適用

半導体製造では、OESはドライエッチングやプラズマCVDのチャンバ内プロセスをリアルタイムでモニタリングする手段として欠かせない技術となっている。チャンバ側壁の石英窓から放出光を取り込むだけでよく、プラズマを乱さない非接触・非侵襲計測であることが最大の利点である。エッチングプロセスでは、ターゲット膜の削れに伴い特定波長の発光強度が変化するため、その変化点を検出することでエッチングの終点(エンドポイント)を高精度に判定できる。たとえばシリコンエッチングでは、SiF分子由来の703nm付近の輝線強度変化が終点指標として利用される。また、チャンバ内の残留不純物やプロセスガスの組成変動をトレースし、歩留まり管理へのフィードバックにも役立てられている。

エンドポイント検出の具体例

エンドポイント検出では、エッチングされる膜と下地層の材料組成の違いを利用し、発光強度のプロファイルを時間軸でトレースする。酸化膜エッチングであればCO(520nm付近)やCOF2に由来する発光強度が終点付近で急変し、ポリシリコンエッチングではSiF(430nm)の輝線変化が指標となる。近年は機械学習を組み合わせた多変量スペクトル解析により、単一波長の強度変化では検出困難な微小な終点シグナルも自動識別できるようになっている。これにより、オーバーエッチングによる下地ダメージを抑制しつつ、ウェハ間のプロセス均一性を高めることが可能となる。

ICP-OESと固体OES

用途によって大きく2つのOESカテゴリが存在する。ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)は液体試料を霧状にしてアルゴンICPプラズマ(5,000〜7,000 K)で励起するもので、ppbからppmレベルの微量元素を高感度に定量できる。半導体素子製造に使用する超純水や薬品中の金属汚染管理、めっき液の組成管理などに適用される。一方、固体OESは金属試料を直接スパーク放電またはアーク放電(約6,000〜10,000 ℃)で励起する方式で、鋼材・鋳物・非鉄金属の成分分析に多用される。CVD装置の構成部材やスパッタターゲットの材質確認など、製造現場の品質保証にも活用されている。GD-OES(グロー放電発光分光)は膜をスパッタしながら深さ方向の元素分布を分析する手法であり、薄膜の多層構造解析に有効である。

他の計測手法との比較

OESと比較される主要な計測手法には、原子吸光分析(AAS)、質量分析(ICP-MS)、X線蛍光分析(XRF)などがある。ICP-MSはOESより1〜3桁高い感度を持つが、装置コストと維持費が高い。AASは装置が比較的安価だが、同時多元素測定に難がある。X線を用いたXRFは固体試料を非破壊で分析できるが、軽元素の感度はOESに劣る。インプロセスプラズマモニタリングという観点では、OESはQMS(四重極質量分析)とともに主流の手法であり、応答速度・装置導入コスト・光窓による容易な計測導入のバランスにおいて優位性がある。これらの特性から、半導体製造装置へのインテグレーションが最も容易な分光計測技術として普及している。

プロセス管理への展開

OESで取得したスペクトルデータは、APC(Advanced Process Control)システムに取り込むことで、プロセスの統計的管理やドリフト補正に活用できる。チャンバ壁の堆積物変化や電極消耗による長期的なプロセスドリフトをフォトリソグラフィ後の寸法計測データと連携させ、エッチング条件のフィードフォワード制御を行う事例が増えている。また、異常放電や配管リークによる微量汚染ガスの混入をOESで早期検出することで、ロット単位での不良発生を未然に防ぐことができる。膜厚制御との組み合わせにより、成膜レートのリアルタイム管理も可能であり、先端ノード対応の精密プロセス制御における中核センサ技術として重要度が高まっている。

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