リヤフェンダー
リヤフェンダーは車体後部の外板であり、後輪まわりのホイールアーチを覆って泥はね・石はねを抑え、外観意匠と空力、さらに車体剛性や騒音低減にも寄与する部品である。モノコック車では「クォーターパネル」と一体で扱われることが多く、アウターパネルとインナーパネル、ホイールハウスなどの複数要素で構成される。意匠面では面質とギャップ/フラッシュの精度が重視され、機能面ではタイヤ包絡(エンベロープ)に対するクリアランス、耐チッピング性、耐食性が重要となる。
機能と役割
リヤフェンダーの第一の役割は後輪の被覆である。タイヤから飛散する泥水・小石の車外/車内への影響を低減し、周辺部品(テールランプ、給油口、リヤドア端部)を保護する。意匠面ではボディサイドの面構成を決定づけ、キャラクターラインの連続性や艶映りが品質印象を左右する。構造面では開口周り(バックドア開口やリヤドア開口)を連結し、ボディ剛性とNVH低減に寄与する。
安全・法規への配慮
多くの市場ではタイヤの露出量や被覆角度に関する基準があり、アーチリップ形状やオーバーフェンダーの追加で対応する。泥はね抑制にはアーチ内側のライナー(フェルト/樹脂)の形状や表面テクスチャが有効である。
構造と主要部品
アウターパネルは外観面を担い、インナーパネルは補強と結合フランジを受け持つ。ホイールハウス(インナー)とアウターの合わせ部はシームシーラで防水し、アーチ部はフランジ/ヘミングで剛性と端部品質を確保する。給油口のリッド開口、アンテナ/センサー穴、トリム・モール固定用のスタッドやクリップ座なども設けられる。
取り付け方式
モノコック車ではボディサイド外板にスポット溶接と構造用接着で恒久結合され、BIW(Body-in-White)段階で電着塗装に供される。一方、商用車や二輪ではボルト留めの独立フェンダー構造が採用されることもある。
材料と表面処理
一般的には亜鉛めっき鋼板や高張力鋼板を用いる。軽量化目的でアルミニウム合金を採用する車種もあり、複合材(FRP、CFRP)や樹脂オーバーフェンダーで意匠と機能を分担する例もある。耐食対策は電着塗装(E-coat)、亜鉛リッチ塗装、アーチ内のストーンチップコート、フランジ部のシーリングが基本である。
製造プロセス
プレス成形→トリム/ピアス→フランジ成形→(必要に応じ)ロールヘミング→組立溶接→シーリング→電着塗装→中上塗りの順で進む。大曲率の外板はスプリングバックやしわを抑える金型設計が重要で、アーチ開口はトリム後の面精度と断面剛性が品質を左右する。
公差管理と外観品質
ドア・バックドアとのギャップ/フラッシュ、バンパー・テールランプとの面差、キャラクターラインの連続性を工程内ゲージと3D測定で保証する。外板特有の「ゆず肌」「波打ち」を抑えるため、板厚・ビード配置・補強点の最適化が行われる。
設計上の着眼点
- タイヤ包絡とサスペンションストローク、チェーン装着時のクリアランス
- 給油口位置と配管ルーティング、衝突時の安全性
- テールランプ・バンパー・リヤドア端部との干渉回避
- 水流/泥流の制御と空力(渦の抑制、汚れ付着低減)
- 局所剛性(ドアヒンジ近傍、開口隅、アーチリップ)と振動モード
耐久性とNVH
高速走行時の砂利衝突によるチッピング、駐車場でのドア当て凹み、塗膜割れやフランジ部の腐食が代表課題である。アーチ内に吸音性ライナーを用いるとロードノイズの透過を低減できる。
故障・損傷と修理
小凹みはPDR(塗装lessデント修理)が有効な場合がある。面折れやアーチ潰れでは板金・パテ整形・再塗装が必要となる。事故でクォーター全交換となる場合、工場溶接点より外側でのパネルカット、MIGブレージングやスポット溶接での再結合、シーリングと防錆再処理、カラー・メタリックの色合わせまでを一貫管理する。
車種別の傾向
セダン/ハッチバックは面質重視でスチール外板が主流、SUVやクロスオーバーでは樹脂オーバーフェンダーでワイド感と耐スクラッチ性を両立させる。EVでは空力と航続に配慮してアーチ開口やトレッド表現を最適化する事例が増えている。スポーツモデルではワイドトレッド化に合わせ、張り出し量を拡大した専用パネルを採用する。
関連部品との関係
リヤフェンダーはリヤバンパー、テールランプ、バックドア、ホイールハウスライナー、給油系、リヤサスペンション上部取付け部と密接に関係する。取付け部の剛性とシール性を確保しつつ、意匠と整備性(ランプ交換、給油系点検)を両立させる設計が望ましい。
品質評価のポイント
- ギャップ/フラッシュ、面ゆがみ、光沢・映り込みの安定
- アーチ内の耐チッピング・耐食性、シーラ連続性
- 走行中のストーンノイズ・水はね音の遮断効果
- 開口周り剛性と異音(ビビり)の抑制