ウォッシャーポンプ
ウォッシャーポンプは自動車のフロント/リアガラスやヘッドランプに洗浄液を送り、ノズルから噴射させるための電動ポンプである。一般にリザーバ(ウォッシャータンク)に装着され、スイッチ操作で直流モーターが回転してインペラを駆動し、所定の流量と圧力で液を押し上げる。多くはフロント/リア兼用の可逆式で、極性反転により流路内の切替弁が動作して噴射先を切り替える。車体配索やノズル形状、ホース長、液温や粘度の影響を受けるため、流量と到達圧のバランス設計が重要である。加えてNVH(騒音・振動・ハーシュネス)低減、耐凍結、耐薬品、耐水侵入など自動車用電装に固有の信頼性要件を満たす必要がある。
役割と作動原理
ウォッシャーポンプはブレードワイパによる拭取り前に汚れを浮かす役割を担う。モーターの回転で遠心インペラが負圧と吐出圧を生み、逆止弁で液戻りを防ぎつつ、ホースとノズルを経由して面一に霧状噴射する。フロント/リア共用型では電源極性を反転させると内部バルブが反転し、前後いずれかの配管に吐出する。噴射量はノズル開口、ホース圧損、液温(粘度)で変化するため、タンク液面低下時や寒冷時に流量が下がりやすい。
- 遠心式インペラ:構造が簡易で耐久性に優れる
- 逆止弁・切替弁:液戻り防止と前後切替を担う
- ブラシ付DCモーター:12V/24V系に広く採用
構成要素
主要部品はハウジング、DCモーター、インペラ、シール(グロメット/Oリング)、電気端子、逆止弁・切替弁である。車体側への固定はブラケットとボルト・ナットで行い、振動絶縁や水密を確保する。液密シールにはEPDMやFKMが用いられ、メタノール系や界面活性剤を含む洗浄液に対する耐薬品性が要求される。端子は防水カプラで、逆接防止のキー形状を採る。
仕様と設計指標
代表値として流量0.3〜1.0L/min、吐出圧100〜300kPa、定格12V(商用車は24V)、使用温度範囲−30〜+80℃程度が目安である。噴射性能は「ノズル到達距離」と「濡れ広がり」が評価軸で、走行風の影響を考慮する。IP(防水)等級は車外飛沫や一時的浸水への耐性が求められるため、設置位置に応じてIPX4〜IPX7相当が目標となる。
- 流量・圧力特性:ポンプ特性曲線で選定
- 電力:定格電流と突入電流、連続/断続デューティ
- 環境:耐凍結・耐熱・耐塩害・耐泥水
- 防水:IEC 60529(IP等級)に整合
制御と電気回路
ウォッシャーポンプの駆動はコンビネーションスイッチ→BCM/ECU→リレーまたはトランジスタで行う。フロント/リア兼用型は極性反転制御を用いるため、配線の入替やダイオード保護の設計が要る。過電流保護にはヒューズを用い、短絡時のハーネス保護を確実にする。低温始動時の突入電流、アイドルストップ再始動時の電圧降下も考慮点である。
設計・選定の勘所
ノズル孔径と噴霧角、ホース内径と長さ、標高差(タンクとノズルの高低差)を整合させ、必要到達距離と濡れ幅を満たす流量・圧力を確保する。NVH低減では共振回避の支持設計、ラバーグロメットの選定、キャビテーション抑制が有効である。シール材は洗浄液の配合(アルコール濃度、界面活性剤)との適合を検証する。固定部は耐緩みを考慮し、適正トルクのボルト締結やばね座金の活用を行う。
品質と信頼性試験
代表的な評価は耐久回数試験(断続通電サイクル)、低温凍結-解凍反復、振動・衝撃、耐塩水噴霧、耐泥水、浸水後機能、薬液浸漬、端子腐食、噴射性能維持である。IP耐水は規定の噴流・浸水条件で漏れや機能低下の有無を確認する。寒冷地では液の凍結によるインペラ固着やハウジング亀裂を防ぐ設計が必須である。
故障モードと診断
無音で噴射しない場合はヒューズ切れ、スイッチ/BCM出力不良、アース不良、断線を疑い、直結試験(12V印加)でモーター単体の生死判定を行う。作動音はするが出ない場合はノズル詰まり、ホース抜け、逆止弁固着、エア噛み、タンク空を点検する。漏れはグロメット/Oリング劣化が多く、部品交換で回復する。前後が逆に噴く場合は配線または配管の接続誤りを確認する。電流値過大はロータ固着や異物噛み込みの兆候である。
関連規格・法規と環境配慮
防水等級はIEC 60529に基づくIP表記で評価し、自動車独自要件はJIS/JASOの耐環境・電装基準に整合させる。化学物質はELV/RoHSに適合させ、メタノール等の揮発成分の漏えい対策を講じる。リサイクル時はポンプ/タンク/ホースの樹脂材識別を明確化し、液の適正処理を徹底する。固定・配管部の保守にはモーターやポンプの一般知識、締結ではボルトとナットの基礎理解が有用である。