フィラーパイプ|給油口と燃料タンクをつなぐ管路

フィラーパイプ

フィラーパイプとは、自動車の給油口から燃料タンクまで燃料を導く管路であり、給油性・密封性・耐久性・耐燃料性・防火性を同時に満たす必要がある部品である。一般に「フィラー neck」「給油管」とも呼ばれ、金属または樹脂で構成される。給油時の流量を確保しつつ、蒸発ガスの戻り流れや逆流、スプラッシュを抑える機構を備えるのが特徴である。車体搭載条件(傾斜角、最小曲げ半径、車輪跳ね石・塩害への暴露)を考慮し、EVAP(Evaporative Emission)系と連携して環境規制に適合させる設計が求められる。

構造と機能

フィラーパイプは、給油口側のインレット(フィラーネック)、本管、ベント管(蒸気抜き)、タンク側継手で構成される。ノズルの差し込み角や停止検知を阻害しない内面形状を維持しつつ、燃料のスプラッシュバックを抑えるディフレクタや逆止弁、転倒時の流出を防ぐロールオーバーバルブなどを採用する。キャップ式とキャップレス式があり、後者はフラッパー弁とシール構造で密封する。

  • インレット:ノズルガイド、泥はね防止、キー式/キャップレス
  • 本管:金属または樹脂の成形管、導電対策あり
  • ベント系:給油中の空気・蒸気の逃げ経路、EVAPへ接続
  • タンク端:フランジ/ホース接続、Oリングによる気密

材料と表面処理

金属系は電縫鋼管やステンレス鋼を用い、外面塩害対策として塗装やめっき、樹脂カバーを併用する。樹脂系はHDPEやPA、EVOH多層で透過抑制を図る。静電気着火防止のため導電性グレードの樹脂やアースストラップを設ける。金属パイプでは曲げ加工後の肉やせ・皺を抑え、内面粗さを管理して給油停止の早まり(吹き返し)を防止する。

設計要件(給油性・耐久・環境)

フィラーパイプの設計は「速く入るが、漏れず、臭わない」を満たす最適化問題である。給油中の目標流量、ノズル抜け防止、傾斜駐車時の流入性、衝突・転倒時の耐漏れ、透過抑制、腐食・摩耗寿命などを同時に満たす。

  • 幾何:最小曲げR、段差・急拡大の抑制、タンク接続高さ
  • 流体:スプラッシュ低減形状、ベント位置と断面のバランス
  • 耐久:飛び石ガード、塩水噴霧、熱サイクル、振動共振回避
  • 耐燃料:芳香族、アルコール混合燃料、硫黄成分への耐性

EVAPと法規対応

蒸発ガスはキャニスターへ導かれ、OBD-IIでリーク診断が行われる。フィラーパイプはキャップ・シール・ベントの気密性に直結し、微小リークでもMIL点灯を招く。キャップレスの場合はフラッパー弁の耐摩耗・異物噛み込み対策が重要である。透過抑制は多層樹脂やバリアコートで担保する。

製造と接続

金属は曲げ・ハイドロフォーム・スピニングを組み合わせ、継手はロウ付けや溶接で一体化する。樹脂はブロー成形やインジェクション+ゴムホースで構成する。車体側固定にはブラケットと防振ゴム、ホース端はスプリングバンドやボルトナット締結のクランプを用いる。Oリング(NBR/FKM)で気密を確保し、表面はストーンガードで耐チッピング性を高める。

故障モードと対策

  • 給油停止が早い:内面段差・曲げ過大・ベント閉塞を見直す
  • 燃料臭・滲み:継手シール劣化、締結不足、微小クラックを点検
  • 腐食穿孔:外面塩害・電食、保護カバー追加や材質変更
  • 誤給・盗難:ディーゼル誤差し防止ゲート、サイフォン防止インサートを採用

検査・評価

量産前後で気密(減圧/加圧)試験、流量・差圧試験、振動/落下、熱サイクル、燃料浸漬後の寸法安定、臭気評価を行う。車両適合では急傾斜・満タン直前の自動停止挙動、低温でのキャップ開閉力、泥水曝露後の作動性を確認する。

誤給防止・キャップレス給油

キャップレスは給油時間短縮と密封性の安定に寄与する一方、異物混入・氷結・砂塵での作動不良に注意する。ガソリン/ディーゼル口径差に合わせたゲート設計や、軽油にガソリンノズルが入らない機構で誤給を抑制する。

他システムとの関係

フィラーパイプは燃料タンク、フューエルポンプモジュール、燃料配管、フィルター系と一体の機能連鎖を構成する。給油時の蒸気流はキャニスターを経て吸気系へ戻り、走行中のパージで燃焼される。PHEVでは遮熱・遮音の追加配慮が必要となる。

保全とサービス

定期点検では配管の擦れ痕、金属部のチッピング、クランプの緩み、キャップ/フラッパーのシール性、ベントの閉塞を確認する。交換時は燃料の引火・静電気・作業姿勢に注意し、規定トルクと新しいOリングで再組立てする。