リードスイッチ|磁界で接点を非接触制御デバイス

リードスイッチ

リードスイッチは、磁界の印加によって可動接点が閉成・開放するガラス封止型の機械式スイッチである。強磁性薄板(リード片)を対向配置し、ガラス管内に不活性ガスとともに封止する構造をとる。外部磁石や電磁コイルの磁束が所定のしきい(AT値)を超えると、磁化したリード片が引き合って接触し導通する。非通電時の漏れ電流が極めて小さく、絶縁抵抗が高い点が特徴で、低消費電力の位置検出や開閉検知に広く用いられる。一方で接点バウンス、機械的振動への感度、開閉速度の上限といった機械接点ゆえの制約を持つ。

構造と動作原理

ガラス管内に二枚のニッケル鉄系リード片を対向配置し、先端はルテニウムやロジウムなど硬質接点材で被覆する。ガラス封止は外部環境から接点を保護し、耐腐食性と長寿命化に寄与する。磁界が加わると両片が磁化し吸引、接触して導通する(NO型)。磁界が弱まると弾性で復帰し開路となる。吸引時の「作動点」と復帰時の「復帰点」には差があり、これがヒステリシス(リリースマージン)を与え、チャタリング抑制に寄与する。

種類(NO/NC/CO)

  • NO(通常開): 磁界で閉成。最も一般的。
  • NC(通常閉): 磁界で開放。常時導通が必要な安全回路などに用いる。
  • CO(切替): 共通端からNO/NCを切替えるタイプで、状態遷移の検出に適する。

用途と安全設計の観点から、必要なフェイルセーフ性や電源断時の挙動を考えて選定する。

特性と仕様の読み方

  • AT値(Ampere-Turns): 作動点の磁気しきい。コイルのアンペアターンまたは磁石の磁束密度と距離で規定される。
  • 接触抵抗: 初期は数十mΩ程度。微小信号用途では重要。
  • 絶縁抵抗/耐電圧: 開路時の漏れ抑制と安全距離に関わる。
  • スイッチング電圧/電流・キャリー電流: 開閉時/通電時の上限値。誘導負荷は実効値が厳しくなる。
  • 動作時間/復帰時間/バウンス時間: 応答性と信号品質を支配。
  • 寿命: 機械寿命と電気寿命を区別して評価する。

データシートでは周囲温度、姿勢、近傍金属の影響が併記されることが多く、試作品で実装条件を再現して測定することが肝要である。

磁気設計と配置の要点

永久磁石を用いる場合、距離と角度で磁束密度が急変するため、AT値に対し十分なマージンを確保する。円柱磁石では軸方向の中心付近が最も強く、オフセットすると感度が落ちる。保持用のバイアス磁石を弱く追加すると、不要動作を抑えつつ確実なヒステリシスが得られる。電磁コイル駆動では、コア材の透磁率とギャップ長が効くため、必要AT値からターン数と電流を逆算し、発熱と電源容量を見積もる。

接点保護とサージ対策

誘導負荷(リレー、ソレノイド、モータ)を開くと逆起電力で接点劣化が進む。DC負荷にはダイオードのフライバック、AC負荷にはRCスナバやバリスタを併用する。微小信号では酸化膜や汚染により接触不良が生じ得るため、定期的に「ワイピング」効果が出る程度の電流を流す、または金接点品を選ぶとよい。ラインは高インピーダンスになりやすいので、ノイズ対策としてシールドやプルアップ/プルダウン抵抗、デバウンス回路を設ける。

デバウンスの実装

ハード的にはRC+シュミット入力、ソフト的には数msの安定期間確認でグリッチを抑制する。機械的バウンス特性(数百µs〜数ms)を見込み、サンプリング周期と閾値を設定する。

実装・信頼性と環境影響

ガラス封止は耐環境性に優れるが、落下衝撃や実装時の応力集中に弱い。基板固定はエポキシ等でストレスを逃がし、長いリードは適切に曲げ半径をとる。温度係数によりAT値が変動するため、設計温度範囲全体での動作確認が不可欠である。近傍の強磁性部材や電流大の配線は作動点をシフトさせるため、磁気的クリアランスと再現性を確保する。

代表的応用

  • 扉・窓の開閉検知: 磁石を可動側、リードスイッチを固定側に配置し侵入検知に用いる。
  • フロート式液面検知: フロート内の磁石が上下して管内のスイッチを駆動する。
  • 回転・速度検知: 軸に磁石を貼付しパルスを取得、低速域や省電力装置に適する。
  • シリンダ位置検出: 空圧シリンダのマグネットピストンを外装から検出する。
  • 医療・計測機器: 低漏れ・高絶縁が求められる微小信号切替に適用。

非接触でアクチュエータに電力を供給しないため、防爆・防水用途でも評価される。

他方式との比較と選定指針

ホール素子やMRセンサは高速・長寿命でアナログ検出が可能だが、電源が常時必要で漏れ電流が避けられない。光学式は清浄環境で高速だが粉塵や油霧に弱い。これに対しリードスイッチはゼロスタンバイ消費、数十MΩ以上の絶縁、シンプルな回路で堅牢に動作する。スイッチング回数や応答速度が要求を満たす範囲であれば、最も低消費・低コストな選択肢となる。逆に高頻度駆動、強い振動、強磁界環境では半導体センサを検討する。

設計チェックリスト

  • 必要AT値と磁気余裕(温度・姿勢・経年)を±30%程度のマージンで確保したか。
  • 誘導負荷のサージ対策とデバウンス回路を実装したか。
  • ガラス封止部への実装応力や落下衝撃を評価したか。
  • 近傍磁性体・電流路の影響を含めた実機環境で検証したか。
  • 寿命試験(電気/機械)と想定負荷プロファイルの整合を確認したか。

以上を満たすことで、リードスイッチは低消費電力で高信頼の開閉検出素子として、産業機器から民生機器まで幅広く適用できる。