AC充電器
AC充電器は、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に対し、商用AC電源を安全に供給し、車両側のオンボードチャージャ(OBC)が整流・昇降圧・電池管理を行えるよう制御と保護を担う設備である。いわゆるEVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)に相当し、接続監視、過電流・漏電保護、絶縁監視、課金・認証、バックエンドとの通信を統合する。DC急速充電器が電池へ直接DCを供給するのに対し、AC充電器は車両内のOBC能力に依存するため出力は小~中容量であるが、設置コストと保守性に優れる。
役割と基本構成
AC充電器は主として①給電制御、②ユーザー認証、③保護機能、④計量・課金、⑤通信の5要素で構成される。電力系統からのACは接触器と保護装置を介してコネクタへ供給され、制御部はケーブル内のCP(Control Pilot)・PP(Proximity Pilot)信号により車両接続状態と許容電流を判定する。さらに電力量計や温度センサで状態監視を行い、異常時は瞬時に遮断する。
方式と出力区分
- 単相200V:3.0~6.0kWが一般的(例:200V×30A≒6kW)。
- 三相AC:欧州等で22kW(400V×32A×3相)が普及。OBC側に三相対応が必要。
- 運用モード:IEC 61851ではMode 2(車載ケーブル-制御箱一体型)とMode 3(固定式ステーション)を定義。公共設備は主にMode 3である。
車両コネクタはType 1(J1772)やType 2(Mennekes)が広い。日本の乗用車では単相Type 1が多く、欧州ではType 2三相が主流である。
制御信号と通信
AC充電器はCP信号のPWMデューティ比で許容電流を車両へ提示し、車両は同意すると接触器を閉成して給電が開始される。バックエンドとの連携はOCPP 1.6または2.0.1が一般的で、開始・停止、アラーム、ファーム更新、負荷制御等を行う。高度な認証やPlug&ChargeはISO 15118により実現し、家庭内・公共のデマンド制御、太陽光・蓄電池との協調制御にも拡張できる。
安全・保護設計
- 漏電保護:RCD(Type AやType B)を適切選定し、DC残留電流影響を考慮。
- 過電流・短絡保護:配線断面と遮断器容量の整合、遮断協調を設計。
- 温度・異常監視:プラグ温度上昇、接点溶着、絶縁低下を検知して遮断。
- サージ対策:雷サージ・開閉サージに対しSPDと適切な接地網を併用。
規格はIEC 61851-1(一般要求)、IEC 61851-22(AC供給設備)、IEC 60364-7-722(施設内配線)等が指針となる。環境要件はIP等級と耐候性(紫外線・塩害)を考慮する。
設置計画と系統影響
集合住宅・業務施設では群管理によりデマンド超過を抑える。負荷平準化のため、同時使用率や時間帯別料金を踏まえ、台数×最大電流ではなく需要想定に基づく変圧器容量・幹線設計を行う。AC充電器が多数導入されると力率・高調波・不平衡が問題となるため、力率改善やフェーズバランス設計、配線インピーダンスの評価が必要である。
計量・認証・課金
公共運用ではRFIDカードやアプリ認証により開始・停止を管理し、積算電力量で課金する。需要家側では課金証跡の改ざん耐性、時刻同期、通信障害時のフォールバック運用(オフライン許可リスト等)を備える。家庭用途ではスマートメーターやエネルギーマネジメントとの連携で最小料金時間帯に自動充電する機能が有効である。
信頼性と保守
AC充電器は屋外設置が多く、熱設計・防塵防水・結露対策が寿命を左右する。接点・リレーは開閉サイクルとアーク摩耗を見込み、サーマルマージンを確保する。ファンやフィルタ類は定期交換計画を立て、コネクタの端子焼損を防ぐため清掃・接触圧の点検を行う。遠隔監視では稼働率、充電回数、故障モード、温度傾向を収集し、予防保全に役立てる。
よくあるトラブルと対策
- プラグ発熱:挿抜回数増大や接触抵抗上昇が原因。コネクタ交換と負荷電流の引き下げで対処。
- 充電開始不可:CP/PP断線や車両側エラー。ケーブル導通試験とログ解析で切り分け。
- 漏電遮断の誤動作:EMIやDC成分混入。RCD種別見直しと配線系統の再設計。
- 通信不良:OCPPサーバ接続障害。再送・バッファリングとセルラ回線冗長化。
設計チェックリスト
- 定格電流とケーブル温度上昇の検証(連続定格・環境温度上限)。
- IEC 61851適合、絶縁距離・クリアランス、IP等級の確認。
- 群管理アルゴリズム(フェアネス、ピーク抑制、需要家契約容量遵守)。
- バックエンド連携(認証、課金、ファーム更新、ログ保全)。
- 据付環境(塩害・粉塵・日射)、落雷リスクと接地設計。