フィーダ
定義と役割
フィーダは配電用変電所から配電区間へ電力を送り出す中圧幹線であり、需要家の柱上変圧器や地中配電網へ電力を分配する。一般に6~22kV級の配電電圧で構成され、負荷密度・地形・信頼度要求に応じて架空線または地中ケーブルが選択される。上位の送電系と下位の低圧配電を結ぶ「末端までの届け役」であり、電圧品質・供給信頼度・保護協調の設計方針が系統安定度と運用コストを左右する。
系統構成とトポロジ
フィーダの代表的構成は放射(Radial)、ループ(開閉器で常時一部開放)、メッシュ(都市地中網)である。放射は簡素で安価だが単一故障で停電範囲が広がりやすい。ループやメッシュは開閉器・区分開閉器による切替で迂回送電が可能になり、信頼度を高められる一方、保護・制御の複雑化と設備費増を伴う。配電用変電所の母線に複数フィーダが並列接続され、各フィーダの途中に開閉器・分岐が配置される。
電気設計パラメータ
- 許容電流と温度上昇:導体断面と周辺温度条件から連続許容電流を決め、I²R損失と熱余裕を管理する。
- 電圧降下:ΔV≈I(Rcosφ+Xsinφ)で近似し、末端電圧規格内(例:定格±数%)に収まるように導体サイズ・区間長・無効電力対策を決める。
- 短絡容量とインピーダンス:故障電流は保護機器定格と協調の基礎となり、ケーブル・変圧器・母線の合成インピーダンスで決まる。
- 負荷曲線・需要率・負荷率:ピーク電力と平均電力の関係からフィーダ容量、余裕率、機器選定を最適化する。
電圧品質と無効電力
フィーダ末端の電圧品質はフリッカ、電圧不平衡、電圧変動で評価される。力率改善と無効電力補償には配電用コンデンサ、SVR(ステップ電圧調整器)、D-STATCOMなどを用いる。特に分散型電源の併設が進む系統では、昼間の逆潮流により電圧上昇が生じやすく、時刻・潮流方向に応じた最適無効電力指令が重要となる。
保護協調と開閉器具
フィーダ保護は変電所側遮断器(OCR, DGR, UVR等)と途中区間のリクローザ、セクショナライザ、ヒューズの時限整合で実現する。近端優先で選択遮断を行い、永久故障時のみ上位を動作させ、瞬時故障は自動再閉路で自復を狙う。保護整定は故障電流推定、インラッシュ、DG寄与短絡電流、感度・選択性・信頼性のトレードオフで決定する。
分散型電源・EVの影響
PVやCHP、EV充電器の普及によりフィーダの潮流は双方向化する。逆潮流は末端電圧上昇、保護方向性の誤動作、短絡容量増大を招く場合がある。対策として方向性保護の導入、電圧無効電力制御(V-Q制御)、群制御、接続点ホスティングキャパシティ評価(電圧・熱・保護の同時制約)が行われる。
自動化と運用最適化
フィーダ自動化はSCADAとDMSで開閉器やSVR・コンデンサを遠隔制御し、FLISR(Fault Location, Isolation and Service Restoration)で故障区間を瞬時に切離し健全区間を迂回送電する。AMIからの需要データと連携したVVO(Volt/VAR Optimization)により損失低減と電圧規格維持を同時達成する。運用KPIにはSAIDI/SAIFI/MAIFIなどの信頼度指標が用いられる。
経済設計と最適化
フィーダの経済設計では、年価法に基づき設備費(導体断面増による資本費)と銅損損失コストの総和を最小化する。導体サイズ、分岐点配置、開閉器数、地中化比率の最適化は、需要成長やDG導入シナリオ、停電コスト価値化(VoLL)を含むライフサイクル評価で行う。
ケーブル・架空線と施工
地中フィーダはCVケーブルの熱抵抗網解析により布設本数・土壌熱抵抗・管路占有率を決める。架空フィーダは張力・弛度計算、沿道クリアランス、風雪着氷条件、雷害対策を考慮する。接地抵抗低減とサージ保護は過電圧抑制と保護感度確保の基礎となる。
評価・保全
- 状態監視:負荷電流、電圧分布、温度、部分放電(PD)兆候を常時監視する。
- 劣化診断:絶縁抵抗(IR)、タンク回路試験、VLF試験、ケーブルシースの損傷点定位。
- 予防保全:リスクベースで区間更新、開閉器更新、コンデンサ・SVRの整備周期を最適化。
用語の注意
製造業や機械分野では部品供給装置(振動フィーダ等)を指す場合があるが、本稿では電力配電系統のフィーダを扱った。文脈で意味が異なるため、仕様書・図面では定義を明記することが望ましい。
簡易計算例と設計指針
末端電圧基準±5%を目安に、最大負荷電流I、区間合成R・X、力率cosφからΔVを評価し、必要に応じて導体断面アップや中間SVR配置、無効電力設備の段数見直しを行う。損失はP_loss=I²Rで概算し、年損失電力量に電力単価と損失評価係数を掛けて年価化する。故障解析では一線地絡の占率・地絡電流経路を重視し、方向性要素や零相回路モデルで整定を検討する。
データ駆動のフィーダ計画
AMI由来の区間別ロードカーブ、気象データ、PV出力の確率モデル、EV充電行動モデルを統合し、時系列潮流と不確実性(Monte Carlo)で配電フィーダのボトルネックを抽出する。結果に基づき区間増強、開閉器の再配置、VVOパラメータのチューニングを実施し、電圧逸脱・過負荷・保護誤動作の同時最小化を図る。