デマンド監視
デマンド監視とは、需要家(工場・ビル・店舗など)の電力使用実績を短時間間隔で計測・可視化し、最大需要電力(kW)の抑制や電力料金の基本料金最適化、設備容量の適正化、安全運用を図る行為である。一般に日本の電力料金では30分平均の最大値が契約電力の基礎となるため、デマンド監視はピーク時の過負荷・超過課金の回避と、エネルギーマネジメントの意思決定に直結する。
用語と計測の基本
電力量はkWh、需要電力は一定時間平均のkWで表す。デマンド監視では、CT/VTと電力計測器で電圧・電流・有効電力・無効電力をサンプリングし、ユーティリティの積算窓(多くは30分)に合わせて平均化する。ブロック積算(0/30分など固定窓)とスライディング積算(任意開始の連続窓)があり、料金判定は電力会社方式(多くはブロック)に準拠して評価する。
目的と意義
- デマンド監視により最大需要電力を把握し、契約電力の見直しやピーク抑制策の投資判断が可能となる。
- 突入電流や同時稼働の偏りを可視化して、工程計画・運転順序の最適化を支援する。
- 電源設備(受変電、配電盤、ケーブル、遮断器)の容量・余裕率を検証し、保全の優先度を定量化する。
システム構成
デマンド監視システムは、計測層(メータ・センサー)、収集層(PLC/SCADAやゲートウェイ)、蓄積・分析層(ローカルサーバ/クラウドの時系列DB)、可視化・制御層(ダッシュボード、警報、制御I/O)で構成する。BEMS/FEMSと連携し、API経由で生産実績や天候情報と合わせて分析することで予測精度と対策効果が高まる。
ピーク抑制の具体策
- 工程の時間シフト:高負荷工程を昼休み・夜間へ移行。
- 負荷制御:VFD化や段調整でHVAC・ポンプ・コンプレッサの同時最大出力を回避。
- 蓄電池・蓄熱:短時間ピークのカットに有効。
- 自家発・コジェネ:系統電力のピーク時に補助。
- 需要応答(DR):TOUやインセンティブ型プログラムに応じて一時的に負荷を抑制。
しきい値・警報設計
デマンド監視では、契約電力に対して複数段の警報(情報・注意・緊急)を設定し、到達予測に基づく先行アラームを出す。スライディング平均の上限見込み(現時点平均×残時間の推移)を算出し、負荷休止・設定値変更などの自動制御へ連動する。
データ解析と予測
1~60秒粒度で収集した電力時系列に対し、外れ値処理、移動平均、季節性分解を施す。短期予測は回帰(気温・生産量を説明変数)、ARIMA/SARIMA、単純な指数平滑で十分有効である。状態推定(Kalman)や機械学習を併用すれば、日内・曜日周期や連休前後の変動を学習し、デマンド監視の先行制御精度が上がる。
評価指標と関連要素
- 最大需要電力(kW):直近12か月の最大値が契約電力に採用される料金メニューが多い。
- 力率(PF):無効電力補償でkVAを抑え、設備容量の余裕を確保。
- 稼働率・同時率:ボトルネック工程の同時稼働がピークを形成。
- 電圧変動・高調波:測定ノイズや見かけ上のkW変動を招くため、計測器のフーリエ処理や同期サンプリングに留意。
信頼性・運用の要点
計測器は精度等級(例:0.5S)と時刻同期(NTP/GPS)を確保する。停電・瞬低対策にUPSを用い、データ欠損時はギャップ補間ルールを定める。メータの校正周期、CTの極性・位相誤差、通信冗長(有線+無線)を点検し、デマンド監視の監査証跡(設定変更履歴・警報応答記録)を保持する。
例題:30分デマンドの超過判定
- 契約電力200kW、ブロック積算(0–30分、30–60分…)とする。
- 1分毎の有効電力を測定し、各ブロックで30点平均を計算。
- ある12:00–12:30ブロックで平均205kWとなった場合、このブロックが最大需要電力を更新し、契約電力見直しや基本料金の増額要因となる可能性が高い。
- デマンド監視では、12:20時点での残時間10分・現平均200kW・直近傾向から、終値予測>200kWと評価し、HVAC設定の一時引下げとコンプレッサ交互運転へ自動指令を出す。
導入手順の実務フロー
- 現状調査:受電契約、直近12か月の最大需要、系統図、主要負荷リスト。
- 計測設計:盤ごとのサブメータ配置、サンプリング周期、時刻同期方式。
- しきい値設計:警報レベル、通知経路、手動/自動の負荷制御手順。
- 検証運転:1~2か月の観測でピーク発生要因を特定し、運転ルールを定着。
- 継続改善:KPIレビューと設備改修(VFD化、蓄電池、配線増強)をPDCAで回す。
ブロック vs スライディング積算
料金判定はブロック積算が基準であることが多いが、運用上の早期警報にはスライディングが有効である。デマンド監視では両者を併用し、誤警報を避けつつ確実に先手を打つ設計が望ましい。
情報セキュリティ
計測データは設備稼働パターンを含む機密情報である。アクセス制御、暗号化、ログ監査を実装し、クラウド連携時は回線分離やVPNを用いて漏洩リスクを低減する。サイバーインシデント時の手順をBCPに明記し、デマンド監視機能の安全側停止を設ける。