同期化制御|位相・周波数を一致させ高精度化

同期化制御

同期化制御は、複数の系(回転機、電力変換器、ロボット軸、分散計測ノードなど)の位相・周波数・時刻・状態量を所望の関係に収束させる制御である。対象は電力系統の位相同期から、サーボの多軸同期、電力変換器のインターリーブ、さらにはネットワーク時刻同期まで多岐にわたる。鍵は参照信号(基準位相やマスタ軸)に対する誤差定義と、その誤差を安定に零へ導くフィードバック(PI/PID、状態フィードバック、非線形同調など)である。応答性(追従速度)と頑健性(雑音・外乱・モデル不確かさへの強さ)のトレードオフを、サンプリング、遅延、量子化、発振余裕を含めて設計する。

定義と基本概念

同期とは本来、位相φと角周波数ωの一致を指すが、実務では「位相差が規定範囲内」「速度差が零に収束」「時刻のオフセットが一定以内」など、目的に応じた誤差規範を置く。同期化制御では、誤差eを観測し、制御入力uでėの符号を負方向に保つよう極配置や最適化を行う。線形時不変系では安定極を左半平面に配置し、非線形や飽和を含む場合は位相平面やLyapunov関数で安定性を担保する。

モータ・メカトロニクスにおける同期

多軸サーボでは、マスタ軸の位置θmとスレーブθsの差e=θs−f(θm)を最小化する。同時加減速や電子カム(cam table)でf(·)を設計し、電流・速度・位置の3ループを協調させる。PMSM/BLDCのベクトル制御では、座標変換(Clarke/Park)によりd-q軸で電流同期を図り、推定子によるロータ角同期(sensorless含む)を達成する。インバータのPWM位相をずらすインターリーブ同期は、リップル電流の相殺と熱分散に有効である。

同期失調の典型リスク

  • 飽和・摩擦による「スティックスリップ」で位相ジャンプ
  • 通信遅延・ジッタに起因する位相余裕低下
  • 剛性過大によるハンチング、共振励起

電力システムにおける同期

系統連系インバータは同期化制御により系統電圧の位相基準を取得し、電流指令を同期座標で生成する。従来のGrid-FollowingはPLLで位相追従し、P/Q制御を行う。一方、Grid-Formingは仮想同期発電機(VSG)やdroop制御で自ら基準を形成し、周波数・電圧を能動的に供給する。短絡比が低い系や高R/X系ではPLLのゲイン設計が難しく、SOGI-PLLやMRAS、FLLの併用で外乱耐性を高める。

PLLの代表例

  • SRF-PLL(synchronous reference frame):dq座標で位相誤差を直交成分に投影
  • SOGI-PLL:二次遅れ相当の直交信号生成器で高調波抑制
  • DSOGI/高調波ロバストPLL:不平衡・THD環境での位相推定に強い

通信・時刻同期(PTP/NTP)

分散制御・計測では同期化制御の前提として時刻同期が要る。IEEE 1588 PTPはハードウェアタイムスタンプによりサブマイクロ秒級を実現し、同期クロックを基にサンプル整列や位相補正を行う。NTPはミリ秒級だが広域で容易に運用できる。ジッタやパケットロスに対しては、フィルタ(Kalman、α-β-γ)でオフセットとドリフトを推定し、制御周期と位相補間(time stamping & resampling)で実時間整合を保つ。

制御理論・実装技術

同期化制御の実装はDSP/FPGA/MCUで行い、離散化(Tustin、ZOH)と固定小数点の量子化誤差を考慮する。制御器はPI/PIDのほか、位相誤差に周期性がある場合は反復学習(ILC)、モデル不確かさが大きい場合はスライディングモードやMPCを用いる。観測は位相検出器(zero-cross、arctan2)、ロバスト化は帯域制限とアンチワインドアップ、飽和でのバムレス切替が基本である。

設計の要点(実務チェックリスト)

  • 基準生成:基準位相・速度の滑らかさ(jerk制限、S曲線)
  • 帯域と余裕:位相余裕≥45°、ゲイン余裕≥6 dBを目安
  • 遅延管理:通信・演算遅延をモデル化しSmith補償等を検討
  • 検出系:エンコーダ/PLLの雑音密度、分解能、整定時間
  • 安全設計:脱同期検出、ソフトスタート、位相ソフトキャプチャ

安定性と評価指標

評価は整定時間、オーバーシュート、定常位相差、ジッタRMS、外乱抑制(Bodeでの|S|・|T|)、同期保持範囲(pull-in/capture range)で行う。電力用途ではP/Qの過渡、電圧ディップ時の位相保持、周波数偏差時のdroop特性が要点で、メカトロでは追従誤差RMS、輪郭誤差、ラインスキャン同期誤差などを指標化する。

故障・異常時の扱い

同期化制御は失調時の復帰設計が重要である。位相飛びを避けるため、キャプチャ時は位相ロック範囲を広げつつゲインを下げ、ロック後に帯域を引き上げる2段階方式が有効である。系統連系では低電圧試験(LVRT)や周波数逸脱時の出力制限を規格に適合させ、モータ系では安全トルクオフ(STO)、非常停止時の機械共振回避を考慮する。

実務上の設計指針

1) 目的の誤差規範を明確化(位相・速度・時刻)し、2) センサ/推定器で測れる形に変数定義、3) 制御帯域と余裕を遅延込みで設計、4) キャプチャとロックを分離、5) 失調検出と安全遷移を準備、6) 実負荷で同定と再調整、という手順が堅実である。これにより同期化制御は、電力・モーション・計測ネットワークの信頼性と品質を底上げする。