計装アンプ|微小差分を低雑音で高精度増幅する

計装アンプ

計装アンプは微小な差動信号を高精度に増幅するためのアナログフロントエンドである。高い入力インピーダンス、非常に大きいCMRR、低オフセット・低ドリフトを備え、ブリッジ型センサ、医用生体信号、工業計測などで用いられる。一般的な構成は「3オペアンプ型」で、入力段のバッファ2基で差動信号を一次増幅し、後段の差動増幅器で共通モードを打ち消して所望の出力を得る。外付け抵抗1本で広範囲のゲインを設定できる品種も多く、ノイズ設計や入力保護、レイアウトの巧拙が最終性能を左右する。

基本構成と動作原理

典型的な3アンプ構成では、入力バッファのゲインをRgで決め、終段の差動アンプで精密な抵抗比により共通モード除去を行う。概略利得は G ≒ (1 + 2R/Rg) × (R2/R1) と表せる。ここで抵抗マッチングの誤差は出力の非対称やCMRR低下に直結するため、0.1%級かつ低TCRの薄膜抵抗が推奨される。単電源動作では入力共通モード範囲と出力スイングの余裕(ヘッドルーム)を必ず確認する。

ゲイン設定の勘所

ブリッジ出力が±5 mV、目標出力が±2 Vなら総合ゲインは約400倍が目安となる。高ゲイン時は帯域が狭まり位相余裕が減るため、不要な高周波を抑えるRCフィルタを終段近傍に挿入し発振マージンを確保する。

主要特性と指標

  • CMRR:直流で100 dB超が目安。周波数上昇で低下するため所要帯域での値を確認する。
  • オフセット/ドリフト:数十µV・サブµV/°C級が望ましい。温度勾配の小さい実装が効く。
  • ノイズ:入力換算電圧ノイズenと電流ノイズin、1/fノイズの拡張、チョッピングリップルの扱いを評価する。
  • 入力バイアス電流:高源抵抗時のオフセット誤差要因となる。バランス抵抗で両入力の等価抵抗を一致させる。
  • 帯域・スルーレート:ゲイン依存で狭まる。必要信号帯域×10倍程度の余裕を見込む。

ノイズ対策とフィルタ設計

計装アンプのSNRを稼ぐには、入力にローパス(例:カットオフ数百Hz)と50/60 Hzノッチを組み合わせる。ケーブルからの誘導を抑えるためツイストペアとシールドを併用し、ガードリングでリークを低減する。チョッパ/ゼロドリフト型ではスイッチング由来のリップルが生じるため、出力側にRCでポストフィルタを設け折返しを抑える。

チョッパ安定化の留意点

低周波オフセットと1/fノイズには強いが、スイッチング周波数近傍のスペクトル成分がADC帯域に重なるとエイリアシングが起きる。ADCのサンプリング周波数とデジタル平均化設計を合わせ込む。

入力保護と共通モード制約

静電気や過電圧から守るため、各入力に小抵抗とクランプ(ダイオード/TVS)を挿入し、デバイス保護ダイオードの順方向電流を制限する。単電源では入力共通モード範囲が0 V近傍で狭くなることがあり、リファレンスを中点(例:Vref = Vcc/2)に持ち上げる設計が有効である。長配線ではコモンモードチョークやRCダンパで高周波の共通モードを抑制する。

ブリッジセンサへの適用

歪みゲージや圧力素子のホイートストンブリッジは差動数mV級の出力で、励起電圧の揺らぎが比例誤差となる。励起電圧と出力を同時サンプリングして比を取る「レシオメトリック」手法は有効で、計装アンプの低ドリフトと相まって温度依存を低減できる。4–20 mA受信ではシャント抵抗の両端を差動で取り、線路のノイズを共通モードとして排除する。

レイアウトと実装

  • スターアースで信号GNDと電力GNDの合流点を一箇所化する。
  • 高抵抗節点をガードリングで囲い、漏洩を抑える。
  • 熱源から距離を取り、差動経路は対称・等長で引く。
  • 計測抵抗は0.1%/10 ppm級、同一ベンダ同一シリーズで揃え温度特性を一致させる。

選定のポイント

必要帯域・ゲイン・電源電圧・入力共通モード範囲・ノイズ密度・オフセット/ドリフト・消費電力・保護内蔵有無を並べ、用途(生体、工業、計量)ごとに最小要件を明確化する。ゼロドリフト型は低周波精度に強く、広帯域用途では低ノイズ広帯域型が有利である。最終的には実機でCMRR対周波数、ノイズ密度、温度サイクル、EMI印加下での再現性を評価し、計装アンプを含む前段全体の安定度を確認することが重要である。