高圧|電気と流体の高圧基礎と安全対策

高圧

高圧とは、電気分野では低圧を超える電圧区分、機械・化学分野では大気圧を大きく上回る圧力領域を指す用語である。電気における高圧は設備の絶縁設計、クリアランス、保護協調、試験方法に直結し、圧力工学における高圧は圧力容器設計、配管強度、シール・継手の信頼性、破裂・漏洩リスク管理に直結する。産業現場では、規格での定義、設計指標、運用・保守手順を横断的に理解することが安全・品質・法令遵守に資する。

電気における定義と区分

日本の一般的な区分では、交流で600V以下が低圧、600V超〜7kV以下が高圧、7kV超が特別高圧とされる。直流でも概念は同様であるが、実務では機器仕様(例: 1.5kV級、3.3kV級)で扱うことが多い。区分は感電・アークの危険性、絶縁材の要求特性、試験電圧や保護具の選定に影響する。

絶縁設計とインパルス耐電圧

高圧機器では、連続印加の商用周波耐電圧だけでなく、雷サージや開閉サージに対するインパルス耐電圧が重要である。空間絶縁ではクリアランス(空間距離)と沿面距離の双方を確保する。沿面は汚損・湿潤で劣化しやすく、沿面距離は材質・汚損度・標高で補正する。ケーブルの固体絶縁では、電界集中を避けるため応力制御層や端末処理を行い、部分放電開始電圧を設計上の閾値より十分高く保つ。

機器・材料の要点

  • ケーブル: XLPE絶縁の高圧電力ケーブルは導体温度と許容電流、遮蔽層接地、端末・接続部の応力制御が鍵である。
  • 開閉器: 真空遮断器(VCB)はアークを真空中で消弧し、遮断容量と合成回復電圧に耐える。SF6遮断器は高遮断性能を持つが環境負荷の観点から代替ガス・空気遮断の検討が進む。
  • 避雷器: 金属酸化物形避雷器は残留電圧低減で高圧機器の雷サージからの保護に用いられる。

測定・試験

  1. 絶縁抵抗測定: メガーで測定し、温度換算・吸収比(1min/15s)も参照する。
  2. 耐電圧試験: ACまたはDCで規定値・規定時間印加し、部分放電・コロナの有無を確認する。
  3. 部分放電(TEV/AE): オフラインのPD試験や運転中の超音波・電磁波検出で早期故障兆候を捉える。

施工・保守の留意点

高圧設備の端末処理・接続では、導体の酸化皮膜除去、適正圧着、シースのシール、シールド接地の連続性が重要である。活線近接作業のリスク評価、停電計画、接地(保護接地・機器接地・多点接地/一点接地の方針)、クリアランス確保、投入前の相順・絶縁確認を徹底する。ケーブルラック・ダクト内は曲げ半径、充填率、発熱・通風も設計条件となる。

圧力工学における高圧

圧力の文脈での高圧は、一般に大気圧を超える領域を指し、化学プラントの反応器、油圧システム、ガスボンベ、超臨界流体装置などが該当する。圧力容器は設計圧力・設計温度・腐食代・溶接係数に基づいて肉厚計算を行い、材料の降伏強さ、靭性、クリープ特性を考慮する。安全弁(PSV)の設定圧、ブローバック、排散系の容量計算、胴鏡・鏡板・ノズルの補強、NDT(UT/PT/RT)や水圧試験の合否基準が要点である。

流体・シール・配管設計

高圧配管では、圧力損失、流速限界、脈動・水撃の抑制、フランジの締結力とガスケット選定、Oリング・メカニカルシールの耐圧・耐温・化学適合性が重要になる。ねじ継手ではテーパねじとシール材の相性、溶接配管ではPWHTや残留応力の管理を行う。弁はグローブ・ボール・ニードル等からCvや許容差圧で選定し、作動に電動・空圧・油圧アクチュエータを用いる。

リスクと安全対策

  • 電気高圧: アーク閃絡、感電、地絡火災のリスク。遮断器の定格遮断電流、保護継電器整定、接地網低抵抗化で保護協調を取る。
  • 圧力高圧: 破裂・噴出・漏洩のリスク。圧力計・安全弁の定期校正、過圧保護の多重化、バーストディスク併用、非常排気の無害化が有効。
  • PPE/手順: 絶縁手袋・フード・遮光面、耐圧ホース・防護面、ロックアウト/タグアウト、作業許可・換気・ガス検知を徹底する。

用語・単位と計測

電気ではV、kV、周波数はHz、波形はAC/DCを用いる。圧力ではPa、kPa、MPa、相対圧はゲージ圧(gage)、絶対圧はabsで示す。計測はブルドン管圧力計、差圧伝送器、デジタルレコーダ、耐圧・気密試験(気泡試験/リークテスト)などを組み合わせ、トレーサブルな校正履歴を維持する。

関連規格と指針(補足)

高圧電気設備はJISや電技解釈、IECの絶縁協調に関わる規格を参照する。圧力機器は材料規格、設計・製造・検査の標準(例: 圧力容器の設計基準)を整合させ、地域の法令に適合させる。設備台帳に設計条件・図面・試験成績・保全履歴を集約し、変更管理(MOC)で設計意図を維持することが事故防止に資する。