ウェーブはんだ
ウェーブはんだは、溶融はんだをポンプで噴き上げて「はんだの波」を形成し、部品実装済みのスルーホール基板を搬送して一括ではんだ付けする量産プロセスである。主に挿入実装部品(THD)に用いられ、フラックス塗布→プリヒート→はんだ噴流接触→冷却の連続工程で構成される。段取り性とスループットに優れ、均一なはんだ濡れを再現できる一方、ブリッジや未半田などの欠陥管理、鉛フリー化に伴う温度・酸化・ドロス対策が要となる。
プロセスフローと装置構成
典型的な装置はフラックサ、プリヒータ、はんだポット(噴流ノズル)、搬送機構、冷却ゾーンで構成される。フラックスは噴霧(スプレー)またはフォーム方式で塗布し、プリヒートで溶剤を揮発させ活性を発現させる。つづいて噴流ノズルから立ち上がる波に基板下面を通過させ、スルーホール内壁とリードに濡れを与える。最後に冷却し、フィレット形状を安定化させる。
波形の種類と選定
波は主にラミナーフローの「スムースウェーブ」と、乱流成分を含む「タービュレントウェーブ」に大別される。スムースは部品倒れが少なく微小ギャップでもスパッタが抑えられる一方、スルーホール内壁の洗浄力が弱い場合がある。タービュレントは充填力に優れるがブリッジリスクが上がるため、ノズル形状、ポンプ流量、接触角度で最適化する。
鉛フリー対応の要点
Sn-Ag-Cu系では融点上昇により合金温度が約250〜260℃帯に上がり、熱負荷と酸化増大が課題となる。対策として窒素(N2)雰囲気で酸化を抑制し、ドロス発生を低減する。さらにプリヒートの入熱プロファイルを見直し、部品・基板への熱ダメージとフラックスの過揮発を回避する。耐熱性レジスト、表面処理(HASL、ENIG、OSP)の適合性評価も不可欠である。
基板設計(DFM)とランド形状
良好な充填とブリッジ抑制には、スルーホール径とリード径のクリアランス、ソルダマスク開口、チップガイドパッド、引き抜き方向のスリットなどのレイアウトが効く。スルーホールはんだ上がり高さ、アニュラリング、スルーホールメッキ厚のばらつきを管理し、部品影(シャドーイング)を減らす配置とする。波の進行方向に対して背面側リードでブリッジが生じやすいため、スティンガやチタンフィンで流れを整える設計も有効である。
フラックス選定と塗布管理
フラックスはRMA、低残渣(ROL0/ROL1)などの分類があり、活性度と洗浄性のトレードオフを考慮する。塗布量は基板下面の全面濡れと過剰残渣の回避が両立する範囲に調整し、固形分、比重、酸価を定期点検する。プリヒート出口での表面温度管理(例:90〜120℃)により溶剤の適正揮発と活性化を保証する。
代表的欠陥と対策
- ブリッジ:波高さ過多、搬送角度不適、ランド間隔不足。→流量低減、角度調整、N2化。
- 未半田・ツノ:温度不足、フラックス不足、酸化皮膜。→プリヒート増、塗布見直し、表面処理適合性評価。
- ボイド:溶剤残留、スルーホール内湿気。→十分な予熱、乾燥工程。
- はんだ上がり不良:めっき不良、クリアランス不足。→設計改良、スルーホール品質検査。
工程パラメータの最適化
キーパラメータは波高さ、接触時間(1.5〜3.0 s目安)、搬送速度(例:0.8〜1.6 m/min)、ポット温度、N2濃度、プリヒートプロファイルである。これらを統計的工程管理(SPC)で監視し、Cpkや合格率を追跡する。テストクーポンでスルーホール充填率、フィレット対称性、ピールバックを定量評価する。
材料・表面処理との相性
銅箔表面粗さ、OSPの厚み、ENIGのNi-P層、HASLの平坦度は濡れとフィレット形状に影響する。部品側はリード鍍金(Sn、Sn-Bi、Agめっき等)やモールディング樹脂の耐熱性を確認し、熱容量差に応じて搬送角度・波接触順序を調整する。
アセンブリ混載とマスキング
SMDとの混載では、不要部位へのはんだ付着を避けるためマスキング(はんだピール可能なテープ、ゴムプラグ)やセレクティブウェーブを用いる。部品高さ差による影は波方向・治具で緩和し、インサート部品はリード長とカット面粗さにも留意する。
保全・安全・環境
はんだポットの酸化被膜はドロス除去ツールで定期排出し、ポンプシール・ノズルの摩耗を点検する。鉛フリー高温運転ではやけど・ヒューム対策として局所排気と温度インターロックを実装する。残渣・洗浄排水は法規に適合する処理を行う。
検査・品質保証の補足
外観検査はAOIでフィレット濡れ幅、ブリッジ、ピンホールを判定し、抜取りでX線によりスルーホール充填率を測定する。工程更改時はMSAで検査系の再評価を行い、実装履歴はトレーサビリティに記録する。
セレクティブウェーブの補足
局所ノズルで指定ランドのみを濡らすセレクティブ方式は混載実装に有効で、治具レス化と熱影響低減を両立できる。搬送経路自由度が高い反面、タクトは通常のウェーブはんだより延びるため、ラインバランスで補う。
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