ソルダレジスト|実装品質を高める感光性絶縁膜

ソルダレジスト

ソルダレジストはプリント配線板(PCB)の銅配線をはんだ付け時の不要な濡れから保護し、短絡や腐食、イオンマイグレーションを防ぐ絶縁皮膜である。一般に「ソルダマスク(solder mask)」とも呼ばれ、露出が必要なランドやパッド部のみを開口し、それ以外の銅面を被覆する。代表的には液状感光性(LPI: Liquid Photo-imageable)エポキシ系が広く用いられ、紫外線露光と現像、熱硬化を経て所定の膜厚・位置精度を得る。実装密度の向上に伴い、開口精度、ダム(solder dam)幅、膜厚の均一性、耐熱・耐薬品性が重要指標となる。

機能と役割

ソルダレジストの第一の役割は、はんだ付け時に不要部へのブリッジを抑制する表面制御である。併せて銅配線の酸化防止、湿気や汚染物質からのバリア、フラックス残渣や洗浄液に対する耐薬品性の付与、隣接導体間の絶縁抵抗(SIR)の確保、シルク印刷の下地としての視認性向上など多面的効果を持つ。近年はファインピッチ部品におけるダム設計が実装歩留まりを左右する。

材料と種類

材料はエポキシ系を主とし、アクリレート改質や充填材の組成により熱機械特性や密着性を調整する。プロセス形態は(1)LPIスプレー/スクリーン塗布→露光→現像→硬化、(2)ドライフィルムタイプのラミネート→露光→現像→硬化が代表である。色は緑が主流だが黒、白、青なども存在し、反射率や外観、光学センサ対応で選定が分かれる。白色は照明機器、黒は光漏れ対策や外観意匠で選ばれる。

代表的特性値

膜厚は片面で10〜35µm程度が一般的で、ビアや配線段差上でもピンホールのない連続皮膜が望まれる。絶縁抵抗は温湿度負荷後でも規格値以上を維持する必要があり、耐電圧は数百Vクラスの耐性が要求される。密着性はクロスカットやはんだ耐熱試験(260℃クラスのリフロー想定)で評価し、クラックやリフトがないことを確認する。吸水率の低さは誘電特性や耐トラッキング性にも寄与する。

関連規格と評価

ソルダレジストの適合性評価にはIPC-SM-840(ソルダマスク認定規格)が広く用いられる。外観、硬化度、密着、耐熱衝撃、耐薬品性、SIR、イオン残渣、はんだ耐性などの試験を通じて等級(Class)を判定する。製品ごとにUL難燃性、CTI、光沢・色差、表面粗さなどの付加的評価を組み合わせ、用途(車載、産機、通信)に応じた信頼性を担保する。

設計指針(DFM)

  • 開口公差:パッド外形に対する拡大量(over-size)/縮小量(under-size)を工程能力に合わせて設定する。
  • ダム幅:ファインピッチでは75〜100µmを一つの目安とし、プリンタビリティと歩留まりを両立させる。
  • ビアの扱い:テント(孔覆い)/ノンタント/フィル&キャップの方針を実装方式(波はんだ・リフロー・EMI対策)に合わせて選択する。
  • 面粗さ:銅表面の粗化(例えば黒化/ブラウン処理)の程度は密着性と下地反射に影響するため、過度な粗化はフォト解像を阻害しない範囲で最適化する。
  • 表面処理との整合:ENIG、OSP、HASL、Sn、Agなどの表面仕上げと開口の重ね公差を考慮し、ブリッジリスクを低減する。

製造プロセスの要点

前処理(脱脂→微エッチング→水洗→乾燥)で表面清浄と活性化を確保し、塗布条件(粘度、スプレー圧、スクリーン目開き)を管理する。露光は波長・露光量・コリメーションを制御し、解像限界と側壁形状(テーパ)を規定する。現像はNa2CO3等のアルカリ現像液濃度、温度、スプレー圧の窓出しが重要である。最終硬化はIR/熱風/オーブンで完全硬化を図り、過不足に起因する密着不良や脆化を避ける。AOIにより開口欠け、残渣、異物を検出し、サンプルでSIRやはんだ浸しを抜き取り確認する。

典型的欠陥と対策

  • ピンホール・ブリスター:前処理不足、ガス残留、過少硬化が要因。洗浄強化、乾燥条件適正化、硬化プロファイル見直しで対処。
  • アンダー/オーバー現像:露光量と現像条件の不整合。ステップタブレットで感度合わせ、現像スプレー圧と時間を最適化。
  • 密着不良・リフト:粗化不足または過粗化、汚染、過硬化が原因。表面処理の再評価、プラズマ活性化の導入が有効。
  • 色ムラ・光沢不均一:塗布厚の偏りや顔料分散不良。粘度管理、ガン走査条件の均一化で改善。

信頼性と実装影響

ソルダレジストは高温多湿(85℃/85%RH)や温度サイクル(−40〜125℃など)での絶縁抵抗維持が求められる。リフロー複数回の熱履歴後でもクラックや白化がないこと、フラックス・洗浄剤に対する耐性、UVや紫外線LEDの長期照射での退色・脆化の抑制が重要である。狭ピッチQFN/BGAではマスク定義(NSMD/ SMD)の選択がはんだ接合の形状と信頼性に影響するため、パッド設計と併せて全体最適で決定する。

検査と品質保証

外観検査(AOI)、膜厚測定(渦電流・断面)、硬化度評価(溶剤擦り・DSC)、SIR試験、イオン残渣(IC/ROSE)を組み合わせる。工程能力指数(Cpk)で開口寸法・ダム幅・膜厚の統計管理を行い、トレーサビリティをロット・バッチで確保する。量産ではSPCを活用し、逸脱時は即時是正・再発防止策(4M変更管理、FMEA更新)を実施する。

環境・安全・規制

化学物質はRoHS、REACH等の規制適合が前提であり、ハロゲンフリー仕様の要求も増加している。現像・剥離・洗浄で発生するアルカリ廃液は中和・ろ過・COD管理を行い、排水基準を満たす。作業安全面では換気、PPE着用、UV漏れ対策、保管温度・期限管理(冷蔵・先入先出)が必須である。代替溶剤や高固形分レジストの導入によりVOC低減も進む。

用語補足

ダム:隣接パッド間のレジスト残しで、はんだブリッジ抑制に有効。テント:ビア開口をレジストで覆う設計。NSMD/SMD:銅パッドとマスク開口の関係を示す配線設計語。LPI:液状感光性レジストの略称。