クランプシェル掘削機|都市土木の縦掘・障害除去に強い

クランプシェル掘削機

クランプシェル掘削機は、二枚貝のように開閉するバケットで土砂や泥土を把持し、吊上げて搬出する掘削機である。河川・港湾の浚渫、基礎杭やケーソンの掘削、地中障害物撤去、汚染土壌の選択的除去など、垂直方向に土砂をすくい上げる作業に適する。バケットの自重と油圧(またはワイヤ引込み)により地盤に貫入し、閉じ動作で土砂を確実に把持するため、水中や粘性土でも安定した施工が可能である。現場では「グラブ」「クラムシェル(clamshell)」と呼ばれることも多いが、本稿ではクランプシェル掘削機の名称を用いる。

定義と用途

クランプシェル掘削機は、クレーンやバックホウの先端に装着する把持式バケット機構を指す。目的は①浚渫(航路・泊地の維持浚渫や河床整正)、②基礎工(場所打ち杭、ケーソン基礎の掘削)、③環境(底泥の選択浚渫、濁質の回収)、④解体・撤去(地中コンクリート塊・転石の取り出し)である。上方からの鉛直掘削に強く、狭隘部や仮締切内でも機械据付が容易である。

構造と作動原理

基本構成は、左右のシェル(貝殻)、ヒンジ・リンク、開閉シリンダ(油圧式)または開閉ワイヤ(ワイヤ式)、上部フレーム(スイベル、ガイド)、耐摩耗刃先から成る。開動作ではシェルが開いて地盤へ貫入し、閉動作で土砂を抱え込む。水中では自重とシリンダ推力(またはワイヤ巻上げ力)が貫入力を担い、閉鎖時のシェル内圧が土砂の離脱を抑制する。回転機構を備える機種は、吊荷旋回により掘削面の整正と精密な投入を可能にする。

主要仕様と設計要素

  • バケット容量(m³):処理能力の基礎。過大は据付クレーン能力を圧迫する。
  • 開口幅・シェル形状:狭幅深掘り向けのロングナロー、浚渫向けのワイドタイプなど用途で最適化。
  • 自重・最大貫入力:硬質土への到達性に影響。
  • 許容吊上げ荷重・リーチ:上部機(クレーン/バックホウ)の性能と一体で評価。
  • 耐摩耗材・刃先交換性:ライフサイクルコストを左右。
  • シール性:泥水・汚濁の漏洩抑制に有効なリップやサイドプレート。

型式と構成

  • 油圧式クランプシェル:バックホウや専用パワーユニットから油圧を供給し、応答性と制御性に優れる。
  • ワイヤ式クランプシェル:ラフテレーン/トラッククレーンと組み合わせ、深掘り・長尺リーチに対応。
  • 回転機構付:スイベル回転で位置合わせを容易化。精度要求の高い杭孔や障害撤去で有効。
  • 特殊シェル:泥土用シール付、岩混じり用強化刃、開閉同期機構強化などのバリエーション。

施工手順の要点

  1. 測量・範囲設定:掘削線/深さを管理基準面で定義し、ガイダンスシステムを準備。
  2. 据付・安全確認:設置地盤の支持力確認、アウトリガ/安定板の設置、玉掛け系統点検。
  3. 掘削サイクル:開(貫入)→閉(把持)→揚収→排土→復帰。理論処理量は Q=(V×η×3600)/T で見積もる(V:容量、η:充填率、T:サイクル秒)。
  4. 品質管理:深度、断面、残土量、濁度を常時記録し、設計値に追従。
  5. 撤去・清掃:シェル内残土の固着を防ぐ洗浄と可動部給脂を実施。

土質適用と掘削品質

砂質土・シルト・粘性土に適する。玉石・転石や硬質地盤では貫入が不足しやすく、事前の破砕・リッピング等の前処理を併用する。漏洩低減にはサイドリップやシール板が有効で、底泥の選択浚渫では開閉速度とリフト速度を同期し、攪拌を抑える。把持率(η)は土質と操作者技能に依存し、一般に0.6〜0.9程度で管理する。

安全・法規・環境

  • 吊荷作業:荷重計・過巻防止・揺れ抑制の各装置を点検し、合図者を配置。
  • 転倒・滑落対策:支持地盤、アウトリガ反力、作業半径内の障害物を事前除去。
  • 水中作業:視界不良下では測深計や角度センサで位置を補正。飛散・濁りには汚濁防止膜を併用。
  • 騒音・振動:周辺環境に応じた時間帯配慮とサイレンサ、低速制御の適用。

維持管理とトラブルシューティング

日常点検は、ヒンジピンの摩耗・ガタ、リンクの割れ、刃先欠損、シリンダのオイル漏れ(油圧式)、ワイヤ素線切れ(ワイヤ式)、回転機構のバックラッシを重点とする。閉鎖不良はリンク曲がり・土砂噛み込みが原因となりやすく、洗浄とクリアランス調整で復旧する。把持不足が続く場合は、刃先交換、シェル内面の付着防止処置、サイクル見直し(貫入時間・閉鎖圧)を行う。

呼称と関連語

現場ではクランプシェル掘削機のほかに「クラムシェル」「グラブバケット」等の呼称が用いられる。英語では“clamshell grab/bucket”と表記される。用途・機構の本質は同じであり、図面・仕様書では正式名称と略称の対応を明確にして混同を避けるとよい。