路面切削機
路面切削機は、劣化・わだち・ひび割れ等が生じたアスファルトやコンクリートの舗装表層を冷却水とともに機械的に削り取り、所定の平坦性と横断勾配に再整形する建設機械である。一般に「cold planer(cold milling machine)」とも呼ばれ、回転ドラムに装着された超硬チップ(ピック)が路面を剪断・破砕し、ベルトコンベヤでダンプへ排出する。再舗装前の下地整正、マンホール周りの段差解消、微細テクスチャ付与(マイクロミリング)、コンクリート表面のはつり・溝切り、さらには路上再生(CIR/CIPR)や安定処理の前工程など、道路維持管理で中核的役割を担う。
構造と主要コンポーネント
基本構成は、切削ドラム、ツールホルダとピック、ドラムハウジング(スクリーン・スクレーパ)、散水系(粉じん抑制・工具冷却)、一次・二次コンベヤ、クローラ式走行体、ディーゼルエンジン動力伝達、オペレータプラットフォーム、そして自動高さ制御・横断勾配制御から成る。ドラムは螺旋配置のピック列で構成され、一定送りで均一な切削痕を生成する。ワイヤ式・超音波式センサやレーザ基準、GNSS/トータルステーションなどを組み合わせたレベリングシステムにより、既設高や設計基準に追従して切削深さを自動制御する。
切削メカニズムと工程条件
路面切削機の切削は、ピック先端が路面に侵入して微小な破砕片を生成する連続衝撃・剪断作用である。切削痕のピッチはドラム回転数と機体前進速度の比で決まり、ピック間隔・攻撃角・背分力の設計が切削抵抗・比エネルギー・仕上げ粗さを左右する。一般に切削幅は数十センチから2m級まで、切削深さは数mmの微細切削から数十cmの深切削まで対応できる。送り速度は平坦性要求、骨材硬度、結合材温度(アスファルトの粘弾性)により設定し、粉じん抑制と工具寿命の観点から散水量を最適化する。
機種区分と適用領域
機種は大きく、歩行型(小面積のはつり・段差修正)、中型車(車線の部分切削、補修パッチの撤去)、大型車(2m級で「ハーフレーン〜フルレーン」切削)に分類できる。さらにスキッドステア装着型のアタッチメントも存在する。用途別には、路面リセットを狙うマイクロミリング、轍の補正やジョイント段差の是正、コンクリートのグルービング、ランブルストリップ形成などがある。路上再生(cold in-place recycling)では、切削後の再生材に結合材を混合・敷均し、転圧して再利用する。
施工計画と品質管理
施工は事前踏査(既設厚・ユーティリティ位置・マンホール高)から始まり、交通規制計画、切削パターン(オーバーラップ量・端部処理)、深さ基準の設定、排材運搬計画を策定する。切削後は清掃・残粉除去、必要に応じてタックコートを散布し、舗設へ引き継ぐ。品質は平坦性、横断勾配、エッジの直線性、テクスチャ分布、既設橋梁や構造物との取り合いで評価する。マイクロミリングでは粗さ管理によりすべり抵抗や騒音低減効果を狙うことが多い。
生成材(RAP/RCP)とリサイクル
路面切削機から排出される切削材は、アスファルトならRAP(Reclaimed Asphalt Pavement)、コンクリートならRCPとして回収・粒度調整し、プラント混合に再利用できる。現場近傍での仮置き・含水管理・異物混入防止が重要で、所定の配合設計・品質規準に適合させる。路上再生工法と組み合わせる場合は、結合材(乳剤・発泡アスファルト・セメント)添加量と養生条件が層の力学特性・耐久性を規定する。
安全・環境対策
粉じん(遊離けい酸を含む場合あり)・騒音・振動・飛散物・後方巻き込みが主なリスクである。散水・集じん、カーテンやシールでの封じ込め、聴覚保護具・防じんマスクの着用、バックカメラ・死角ミラーの確認、ベルト・ドラム周辺の停止鍵管理を徹底する。排出ガス規制(Stage V等)に対応したエンジンやアイドリング抑制、夜間施工では照明・居住環境への配慮を行う。地下埋設物・舗装下空洞の事前把握も必須である。
保守と消耗品管理
ピックは摩耗・チッピングにより定期交換が必要で、偏摩耗を抑えるため回転構造(スイベル)と適切な散水が重要となる。ツールホルダのガタやドラムバランスは仕上げ品質と振動増大に直結するため点検周期を管理する。コンベヤのベルト蛇行・損耗、スクレーパの調整、油圧フィルタ交換、クローラ履帯のテンション調整、センサ校正を計画的に実施する。
選定ポイントと経済性
対象舗装の種類・厚さ、必要切削幅と深さ、要求平坦性、交通規制幅、排材の運搬距離・再資源化方針を踏まえて仕様を選ぶ。高出力機は生産性が高い反面、輸送・占用幅・燃費・騒音が大きい。マイクロミリング対応の高密度ピックドラムは仕上がりが良いが工具コストが増える。全体のライフサイクルコストは、工具寿命、段取り時間、排材価値(RAP/RCP再利用)まで含めて評価する。
補足:関連機械と役割分担
舗装の再構築では、切削後にアスファルトフィニッシャでの舗設、タイヤ・振動ローラでの転圧、スイーパでの清掃が続く。セメント安定処理や石灰安定処理を行う場合は、スタビライザやリサイクラが母材の再混合・改質を担い、路面切削機は均一厚での撤去・基準面形成という基盤工程を担う。
- 主用途:表層更新、段差修正、テクスチャ付与、再生前処理
- 要素技術:自動レベリング、粉じん抑制、工具材料、搬送
- 成果物:平坦で所定勾配の下地、再資源化可能な切削材