ベントナイトプラント
ベントナイトプラントは、掘削・地中連続壁・杭施工・HDD(水平定向掘削)などで使用する泥水(ベントナイトスラリー)を調製・循環・再生処理するための一体型設備である。粉体の受入・溶解・水和促進から、循環時に混入する掘削カッティングスの固液分離、比重・粘性・pHなどの品質管理までを連続的に扱う。高せん断ミキサ、攪拌槽、シアポンプ、振動ふるい、ハイドロサイクロン(デサンダ・デシルタ)、デカンタ型遠心分離機、薬注ユニット、計装(密度計・流量計・電導度・pH)などで構成され、施工要求に応じてモジュールを組み合わせる。適切な運用により、フィルターケーキ形成と泥水保持能力を安定化させ、孔壁安定・地下水浸入抑制・切削運搬効率を向上させる。
構成機器と役割
受入ホッパはベントナイト粉体をダスト抑制しつつ投入する入口であり、溶解・水和タンクは高せん断ミキサと攪拌翼で膨潤を促進する。循環ラインの一次分離は振動ふるいで粗粒(例:0.2〜1 mm程度)を除去し、続いてデサンダ(主に40〜70 μm域)・デシルタ(15〜25 μm域)がハイドロサイクロンで細粒を連続的に排出する。超微細粒はデカンタ遠心分離機で2〜5 μm程度まで低減できる。薬注ユニットは炭酸ナトリウム(ソーダ灰)や高分子添加剤により水質を補正し、計装は比重、粘性、砂分、pH、温度等を常時監視する。
泥水の物性と管理指標
ベントナイトプラントで調製される泥水はチキソトロピー(静置でゲル化・攪拌で流動化)を示す。管理では、マッシュファンネル粘性(s)、マッドバランス比重(g/cm³)、pH(一般に弱アルカリ域)、砂分(%)、静置ゲル強度、濾過損失(フィルタープレス)などを指標とする。目的別に適正範囲は異なるが、孔壁保持を重視する地中連続壁では適正な比重・粘性と低砂分を維持し、HDDではポンプ送泥性とカッティングス搬送性のバランスが重要である。セメントや電解質の混入は凝集・粘性上昇やゲル化異常を招くため、水質補正(硬度低減)と希釈・分級の併用で制御する。
適用分野と要求性能
主な適用は、地中連続壁(スラリーウォール)、大径・中径杭、シールド・マイクロトンネルの立坑や先進ボーリング、HDDの送泥・返泥循環、透水遮水目的のトレンチ掘削などである。要求性能には(1)所要処理量(m³/h)と連続運転性、(2)固相除去のカットサイズと段数、(3)攪拌・水和効率、(4)自動計測・トレンド管理・アラーム、(5)現場設置性(コンテナ化・搬送性・防音)、(6)保守安全性(洗浄・点検・粉じん対策)が含まれる。
運用フローと品質安定化
運用は、粉体受入→高せん断溶解→水和・熟成(所要時間の確保)→循環供給→一次〜三次分級→返泥調整→再投入のループである。新液補給と循環再生率のバランスを取り、固相累積を抑えて粘性上昇を防ぐ。砂分上昇時はふるい網・サイクロンの点検とポンプ差圧を確認し、微粒の滞留時はデカンタの回転数・差圧や希釈率を調整する。水温や原水硬度の変動も粘性に影響するため、水質補正と混和順序を標準化する。
選定のポイント
- 処理量:ピーク返泥流量と安全率を見込んだm³/hを設定する。
- 分級精度:対象地盤の粒度と仕上がり砂分目標に合わせ、ふるい+デサンダ+デシルタ+遠心を段階選定する。
- 水和効率:高せん断ミキサの出力と滞留時間、タンク形状で溶解ムラを抑える。
- 計装・制御:比重・粘度・流量の見える化、データロガー・遠隔監視、異常時フェールセーフ。
- 据付性:コンテナ化、クレーン・フォークリフト対応、洗浄ドレン・防油堤・防音カバー。
- 保守:ふるい網交換性、サイクロン内張り、遠心機の摩耗部材とバランス管理。
安全・環境とコンプライアンス
粉体投入時の粉じん曝露を抑えるため密閉ホッパと局所排気を併用し、耳栓・防塵マスク等のPPEを徹底する。返泥は固液分離し、脱水ケーキは適用法令・発生土分類に従い処分する。洗浄水はpH・SSを管理し、公共用水域への放流基準に適合させる。漏えい対策として防油堤・受け皿・緊急遮断弁を設け、夜間運転時は防音パネルと照明の安全管理を行う。
トラブル事例と対処
- 粘性過大:添加量過多や微粒蓄積が原因。希釈、遠心強化、添加低減、原水硬度補正で対応する。
- ゲル化・流動不良:電解質・セメント汚染やpH逸脱が原因。汚染源遮断、ソーダ灰添加、順次希釈。
- 砂分上昇:ふるい網目詰まり・サイクロン差圧低下。洗浄・網交換、ポンプ回転数調整、スラリー温度管理。
- 比重ばらつき:タンク短絡流・攪拌不良。攪拌翼見直し、バッフル設置、循環ライン再配管。
用語補足
マッシュファンネルは一定体積の流下時間で簡便に粘性を評価する器具である。マッドバランスはスラリーの比重を測る天秤で、孔壁安定や浮力管理に必須である。ハイドロサイクロンは旋回流により粒子を遠心分離する装置で、カットサイズは供給圧・ノズル径・幾何で決まる。フィルターケーキは孔壁に形成される低透水層で、適正な泥水性状が施工品質を左右する。
ベントナイトプラントは、泥水の「つくる・使う・戻す・整える」を一体で回すことで施工リスクを下げ、生産性と品質を両立させる中核設備である。計画段階での処理量・分級精度・水和効率の見積り、現場運用での連続モニタリングと即応制御が、安定した掘削と孔壁保持を支える。