ずり出しベルトコンベヤ
ずり出しベルトコンベヤは、トンネルや地下空間の掘削で発生する「ずり(掘削ずり・岩砕・土砂)」を連続的に搬出する搬送設備である。シールド工法やNATMにおいて、坑内から立坑・地上ヤードまでの長距離搬送を安定化し、ダンプトラックやトロでの間欠搬送に比べて処理量の平準化、人員削減、換気・粉じん管理の容易化を実現する。掘進に伴って延伸・移設できる伸縮構造、急勾配区間への対応、泥水・含水ずりの扱い、耐摩耗性の確保など、地下特有の制約に最適化された設計が特徴である。
役割と適用範囲
ずり出しベルトコンベヤは、掘削面から一次集約点(バンカ・ホッパ)へ、そこから立坑上部や地上の土砂置場・選別設備までの連続搬送を担う。シールド機ではスクリュコンベヤの吐出を受け、NATMではロードヘッダや油圧ブレーカの切羽近傍に設置したフィーダから受ける。長距離・大断面工事、交通遮断が難しい都市部工事、夜間制約が大きい現場で効果が高い。
構成要素
- ヘッド部(駆動プーリ・主減速機・モータ):起動トルクと巻付角を確保し、滑りを抑制する。
- テール部(テークアップ・プラウ):張力調整とリターン側の堆積防止を担う。
- キャリアローラ/リターンローラ:トラフ角を形成し断面積を確保、偏摩耗や偏心振動を低減する。
- ベルト本体:耐摩耗ゴムカバー、芯体(EP/NN/スチールコード)を選定する。
- ホッパ・シュート:スプラッシュや偏荷重を抑え、詰まりを回避する形状とライナ材を採用する。
- クリーナ(一次・二次):付着物(キャリーバック)を除去しスピレッジを抑制する。
- トリッパ/スタッカ:中間排出や土砂山の成形を行う可動排出装置。
方式・レイアウト
ずり出しベルトコンベヤのレイアウトは、坑内の線形と勾配、立坑高さ、地上ヤードの配置で決まる。一般的には切羽側に可伸縮式(ジップ式)直線区間を置き、立坑部で立上げ、その後地上で可動スタッカに接続する。勾配が大きい区間は摩擦限界に注意し、必要に応じてサイドウォールベルトやクライマベルトを用いる。長距離では中間駆動(二重駆動)やスナッパローラでベルト張力分布を整える。
設計要点(能力・速度・断面)
設計の基本は所要処理量、粒度、含水、運搬距離・高低差から定まる。質量能力は Q[t/h] = 3600×A[m^2]×v[m/s]×ρ[t/m^3] が目安である(Aは有効断面積、vはベルト速度、ρは見掛け密度)。Aはトラフ角・ベルト幅・充填率で決まり、粒度が大きいほど充填率を下げる。速度は衝撃や飛散を抑える範囲で設定し、一般に土砂・砕石で 1.6〜3.0 m/s 程度を基準に、受入部や曲線部は減速を検討する。
簡易計算例
例として A=0.25 m^2、v=2.2 m/s、ρ=1.8 t/m^3 とすると Q≈3600×0.25×2.2×1.8≒3564 t/h となる。実設計では供用率、偏荷重、起動時余裕を見込み、必要能力に対し10〜20%のマージンを確保する。
動力・張力・プーリ設計
総合抵抗 F は走行抵抗・揚程抵抗・付加抵抗の和で見積もり、所要動力 P は P=F×v/η とする(ηは駆動系効率)。駆動プーリは巻付角と摩擦係数から張力比 T1/T2=e^{μθ} を満たすよう設計し、必要に応じてテールやベンドプーリで巻付角を増す。起動はソフトスタータやVVVFで衝撃荷重を抑え、バックストップで逆転を防止する。
粉じん・騒音・漏えい対策
坑内運用では封じ込めが重要である。受入ホッパのエプロン、カバーリング、負圧集じん、ミスト散水で粉じんを抑える。落差箇所はライナとシュート形状でエネルギを減衰し、ベルトスキッド音やローラ騒音は防振金具と高品質軸受で低減する。キャリーバックは一次・二次クリーナとリターンスクレーパで制御する。
運用と延伸(可搬・可伸縮)
ずり出しベルトコンベヤは掘進に合わせてヘッド側またはテール側を定期的に延伸する。セクションフレームを追加し、電源・信号ケーブル、スプリンクララインも追設する。ベルトはホット加硫またはメカニカルファスナで継ぎ、延伸作業時間を短縮する。立坑通過部はシュート内張や逆止板で飛散を防ぎ、雨天時や高含水時はドレーン設計を加える。
保守・点検と代表的故障
- 片寄り(トラッキング):調整ローラ、ガイドローラ、荷重中心の是正で対応。
- ベルト損傷:鋭利物混入やリップ発生に注意し、メタルディテクタやリップスイッチを併設。
- ローラ焼付き:シール劣化や浸水対策として高シール軸受・ドレーン設置を行う。
- 詰まり・堆積:ホッパの角落ち改善、流動板・バイブレータ追加で防止。
安全・インターロック
非常用引き紐(プルトリップ)、スピードスイッチ、蛇行スイッチ、非常停止回路、ロックアウト/タグアウト手順を整備する。切羽設備、立坑ウインチ、地上受け入れ設備と連動させ、誤投入や逆流を防止する。点検時は回転体覆い、飛散防止板、感電防止の保護等級を満足させる。
選定の指針
粒度と含水、最急勾配、必要処理量、搬送距離、立坑径、ヤード制約を主因子として総合評価する。高含水・高粘性ずりには深いトラフ角やサイドウォールを検討し、摩耗が激しい場合は厚手カバーと耐摩耗ライナを併用する。長期工事では省エネ(高効率モータ・低抵抗ローラ)とメンテ性(共通部材、工具アクセス)を優先する。最後に、余裕ある断面と段階的な能力増強計画を持つことで、掘削進度の変動に柔軟に追従できる。
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