シールドマシン
シールドマシンは、地中で円形断面のトンネルを機械的に掘削し、同時にセグメントによる覆工を構築する施工機械である。前面のカッターヘッドで地山を切削し、掘削土砂(ずり)を機内に取り込みつつ、土圧あるいは泥水圧で切羽を安定化させる。掘進中はテール部からのグラウト注入により外周の空隙を充填し、背後のジャッキ推力で前進する。都市インフラ(上下水道・道路・鉄道・電力通信)に広く用いられ、地表沈下の抑制や既存構造物への影響低減に適している。
原理と方式
シールドマシンの基本は「切削」「圧力制御」「搬出」「覆工」の同時並行である。切羽(掘削面)の安定は地山条件に応じて機内圧を管理することで達成する。土砂系地盤では土圧式(EPB)で土砂を撹拌・調整しつつスクリューで抜き出し、透水性が高い砂礫〜玉石系では泥水式(Slurry TBM)で比重・粘性を設計した泥水を循環させて支持する。岩盤ではディスクカッターを主体とする硬岩用TBMが適用される。
土圧式(EPB)の要点
土砂に発泡剤・調泥材を添加して塑性化し、カッターチャンバ内の土圧を目標値で維持する。スクリューコンベヤの回転数で搬出量を制御し、機内圧=切羽支持力を安定させる。目標土圧は概ねγ×H×K(単位体積重量γ、土被りH、側圧係数K)を基に設定する。
泥水式(Slurry TBM)の要点
分級・脱水設備を備えた地上プラントと高圧配管で循環系を構成する。泥水比重・粘度・流量で有効応力を制御し、フィルターケーキ形成で切羽の透水を抑える。ポンプ・分離装置の能力計画が掘進安定に直結する。
主要構成要素
- カッターヘッド:ビット/ディスクで地山を破砕・切削する回転体
- スクリューコンベヤ/スラリーポンプ:ずり搬出・圧力調整の要素
- シールドジャッキ:セグメントに反力を取り推力を発生
- テールシール:外部水圧・土圧と機内の遮断、グリースで止水
- セグメントエレクタ:リング状のセグメントを把持・組立
- 計測・制御:土圧/泥水圧、トルク、推力、姿勢(ピッチ・ヨー)、掘進速度等をリアルタイム管理
施工手順の概略
発進立坑で組立・地中発進し、切羽圧を安定させながら所定のルートで掘進する。ずりはEPBではスクリューからベルトへ、泥水では配管で地上の分離設備に送る。所定ピッチでセグメントを組み立て、テールボイドにグラウトを注入し、ジャッキ推力で前進を継続する。到達後は到達立坑で機体を回収・解体する。
裏込め注入とリング構築
テール部の空隙(テールボイド)は沈下要因となるため、セメント系または発泡系のグラウトで即時充填する。セグメントは鉄筋コンクリートまたは鋼繊維補強コンクリートが一般的で、ボルトによる継手を設ける(例えばボルト接合)。
設計・制御パラメータ
- 推力・トルク:地山強度・直径・切削条件から所要値を算定
- 土圧/泥水圧:切羽安定と地表沈下抑制の両立を図る目標圧
- 掘進速度・カッター回転:切削効率と切羽安定のバランスで設定
- 地上沈下管理:尾空隙充填量、搬出量整合、地表計測のフィードバック
- ルート・姿勢:GNSS補完の地上基準と機内ジャイロ、ターゲットトラッキングで補正
地盤と適用領域
シールドマシンは、軟弱地盤の都市域での沈下抑制、河川・鉄道直下の横断、交通遮断の回避などに有効である。砂質土〜粘性土では土圧式、砂礫〜玉石や湧水条件では泥水式、硬岩では硬岩用TBMが実績を持つ。断面は下水道小口径から道路・鉄道の大断面まで幅広い。
品質・安全管理
切羽圧の逸脱は地表沈下・盤膨れの原因となるため、圧力・搬出量・注入量の三点整合が重要である。発進・到達時は地盤改良や止水対策を講じ、稼働中はガス検知、酸欠対策、高圧設備の保守、安全な換気・避難計画を徹底する。ビット摩耗・ディスク摩耗はトルク・電流値のトレンドで早期検知する。
関連設備と周辺機械
シールドマシンの施工は、ズリ出しベルトコンベヤ、グラウトプラント、ベントナイトプラント、セグメントエレクタ、ショットクリートマシン、覆工コンクリート台車、トンネルジャンボ、ロードヘッダなどの周辺機械と組み合わせて体系化される。計画では各機の能力整合とヤード動線、立坑レイアウトが重要となる。
保守とライフサイクル
カッター交換やシール保守のための加圧下作業手順、スラリー管・ポンプの磨耗管理、油圧系・電装系の定期点検が稼働率に直結する。リング施工誤差は累積して線形偏差となるため、測量・姿勢制御とシム調整で収束させる。機体の再整備・再利用の可否は直径・地山適合・残存寿命で評価する。
計画上の留意点
発進地盤改良、地下水位・湧水圧の把握、既設杭・埋設物のクリアランス、騒音・振動・搬出車動線の環境配慮、地上沈下監視計画(レベラー・自動観測)、非常時の減圧・停止・逆転手順などを包括的に設計する。施工時にはKPI(掘進速度、注入量、搬出量、消費電力、トルク・推力)を管理し、トレンド異常で迅速に是正する。
用語メモ
- EPB:Earth Pressure Balance。土圧で切羽安定
- Slurry:泥水式。比重・粘度で支持、分離プラント必須
- テールボイド:セグメント外周の空隙。沈下要因
- エレクタ:セグメント組立装置。リングの姿勢決定
- 覆工:セグメントによる二次覆工(一次=地山)