RCD掘削機
RCD掘削機は「Reverse Circulation Drilling」を用いる大径ボーリング用の掘削機であり、主に橋梁下部工・港湾構造物・洋上風力基礎などの大径場所打ちぐい施工に適用される。環状空間から送った泥水をビット近傍で切削土砂と混合し、内管側から逆循環で地上へ回収するため、土砂排出効率が高く、礫や玉石混じり層でも安定した掘進が可能である。騒音・振動が比較的小さく、都市部や海上の作業環境に適合しやすい特徴をもつ。
原理と循環系の特徴
RCD掘削機は二重管ロッドを用い、外管(アニュラス)から循環流体(ベントナイトやポリマー泥水、水)をビット先端へ送る。切削土砂はビット周辺で懸濁化され、内管(センターパイプ)を通じて逆流回収される。回収の駆動はエアリフト方式またはサクションポンプ方式が一般的で、エアリフトでは圧縮空気を内管に注入し混相流化によって揚泥する。逆循環はビット周辺の視程を確保しやすく、底面清掃の確実性を高め、基礎の品質確保に資する。
主要構成機器
- 掘削ユニット:回転装置、トルク伝達系、スイベルを含み、二重管ロッドを回転・支持する。
- 二重管ロッド:外管で送泥、内管で揚泥する中空構造。継手部のシール性が要となる。
- ビット類:ローラーコーンビット、クラウビット、コアバレル等。地質に応じて選定する。
- 循環設備:循環槽、デサンダ・デシルタ、スクリーン。泥水の比重・粘度を管理し再利用する。
- 揚泥装置:エアコンプレッサまたはサクションポンプ。所要の揚泥量・水頭損失に合わせる。
- 計測・管理:比重計、マルシュ粘度計、流量計、トルク・回転数のロギング装置。
適用範囲と性能の目安
RCD掘削機は概してφ1.5〜3.0 m級の大径に適し、地質は砂礫層、玉石混じり、硬質土、亀裂を含む岩盤の一部まで対応可能である。掘進速度は地質・径・ビットによって大きく変動するが、十分な循環量とカッティングス輸送が確保されれば高い能率を示す。深度は泥水安定性と揚泥条件で規定され、孔壁安定のために比重・粘度・ゲル強度などの流体性状を設計値内に保持する。
施工手順の概略
- 仮設・準備:作業台(陸上・台船)設置、位置出し、循環設備配置、試運転。
- ケーシング建込み:必要に応じてケーシングオシレータ等で地表付近の孔壁を保護する。
- 掘削着手:外管から送泥しビットを回転。切削土砂を内管から逆循環で連続回収。
- 掘進管理:トルク・回転数・貫入抵抗・流量・泥水性状を監視し、地層変化に追随。
- 根固め・底洗浄:所定深度到達後、底面清掃と沈殿土砂の除去を行い清浄度を確保。
- 配筋・コンクリート:トレミーで水中コンクリートを打設し、上部を順次構築する。
泥水管理と品質確保
泥水は孔壁安定と土砂輸送の両面で要である。比重は地層圧・湧水の釣り合いを考慮して設定し、粘度はカッティングスの浮遊性とポンプ損失のバランスで最適化する。サンドコンテンツはデサンダ・デシルタで低減し、循環液の温度やpHも監視する。底面清掃は逆循環の利点を活かせば均一性を確保しやすく、支持層の性状確認や清浄度基準の達成に寄与する。
ビット選定と掘削パラメータ
- ビット選定:砂礫〜玉石層ではクラウビットやローラーコーン、硬質層ではトリコンやコアバレル。
- 回転数・トルク:径と地質に応じて設定。過大トルクはロッド・継手の損耗を招く。
- 掘進荷重:ビットの歯先圧を確保しつつ、振動やビットボールを抑制する。
- 循環量:上昇流速を確保し、カッティングスの堆積を防止する流量に保つ。
海上・都市部での適合性
RCD掘削機は騒音・振動の低さと切削土砂の管理性から、係留制約のある台船上作業や市街地近接施工に適する。海上では潮流・波浪に対する位置保持、濁水管理、排水処理など環境対策を併せて計画する。都市部では交通動線、濁水の仮置き容量、夜間規制への対応が重要である。
施工上の留意点
- 循環喪失:割れ目帯や高透水層では漏失の恐れがあるため、比重・粘度調整や遮水材の併用を検討する。
- 玉石の咬み込み:ビット形状の適合、回転・荷重の最適化、間欠掘進で対応する。
- ロッド摩耗・シール劣化:継手の点検交換を計画的に行い、空気混入時の摩耗加速に注意。
- 底面清浄度不足:揚泥量の強化、サーキュレーション時間延長、底部サンプリングで確認する。
関連機器・周辺プロセス
RCD掘削機による掘削は、ケーシングオシレータ、グラブバケット、ロータリーテーブルなどの装置と組み合わせる場合がある。泥水再生設備(デサンダ・デシルタ)の能力はトータル能率を規定し、またトレミー打設や鉄筋かご建込みの計画は孔内安定時間と整合を取る必要がある。
計測・記録と品質トレーサビリティ
回転数、トルク、掘進速度、送・揚泥流量、泥水比重・粘度、サンド率などを時系列で記録する。地層境界の推定、支持層到達判定、清掃完了判断の合理化に資する。記録は出来形・品質報告の根拠となり、再現性のある施工管理を可能にする。
用語補足
Reverse Circulation(逆循環)
外管から送泥し内管で回収する流れを指す。揚泥効率に優れ、ビット先端の視程確保と底面清掃性が高い。
Air Lift(エアリフト)
圧縮空気を内管に注入して混相流化し、比重差を利用して揚泥する方式である。海上・深孔で有効である。
Desander/Desilter(砂分分離)
循環泥水から砂・シルト分を段階的に除去する装置群。泥水性状の安定化と消耗低減に寄与する。