産業用ロボット(搬送)
産業用ロボット(搬送)とは、部品や箱、パレット、トレイなどのワークを所定位置へ移送・整列・段積みする自動化装置である。コンベヤやリニア搬送ユニット、AGV/AMRと連携し、ピック&プレース、パレタイジング/デパレタイジング、仕分け(ソーティング)、ワーク供給などを担う。目的はスループットの向上、人的負荷とヒューマンエラーの低減、品質の安定化であり、設計では可搬質量、到達範囲、サイクルタイム、安全、環境適合(粉塵・油煙・低温・食品衛生)などを総合的に満たす必要がある。
基本構成と機能
産業用ロボット(搬送)は、機械本体(直交・SCARA・6軸・ガントリ等)、エンドエフェクタ(真空パッド、指型グリッパ、磁気・電磁式など)、センサ(近接・フォト・重量・力覚、2D/3Dビジョン)、コントローラ(軌跡生成、補間、モーション制御)、および周辺搬送(コンベヤ、リフト、回転テーブル)で構成される。制御系は位置/速度/加速度プロファイルを計画し、教示データやビジョン座標に基づいて反復精度を確保する。
主な適用領域
- パレタイジング/デパレタイジング:ケースや袋体の段積み・解積み
- 入出庫・仕分け:多ラインからの合流・分岐、高頻度搬送
- ピッキング:トレイからの部品取り出し、バラ積み認識(3Dビンピッキング)
- 段取り搬送:加工セル間のワーク受け渡し、段替え支援
- クリーン/食品領域:洗浄可能設計、耐食材、低発塵対応
ロボットタイプと選定ポイント
- 直交/ガントリ:大ストロークと高剛性。直線往復の高速ピック&プレースに適す。
- SCARA:水平方向の高速動作と高再現性。小物部品の挿入・整列に有効。
- 6軸垂直多関節:姿勢自由度が高く、多様な箱形状・傾きへの追随が可能。
- 協働ロボット:人共存の低リスク作業に適合。ただし可搬や速度の上限を理解して設計する。
サイクルタイム算定の手順
- ワーク重量・重心・慣性から必要トルクと加減速限界を見積もる。
- 経路長と移動/把持/離脱/整列の時間要素を分解し、タクトを合算する。
- 実機仕様(Jerk制限、安全マージン、停止余裕)を加味し、20〜30%の余裕を確保する。
- ボトルネック工程(供給、検査、梱包)と同期し、ライン全体のタクト整合を取る。
エンドエフェクタ設計
箱物は多点吸着の真空グリッパが汎用的である。柔軟包材や多孔質体は吸着漏れ対策としてスポンジパッドや自動流量調整を用いる。金属板や缶体には磁気グリッパ、ばら物や食品には指型・ソフトグリッパが有効である。着脱が多い現場ではクイックチェンジャにより段替え時間を短縮する。
吸着ハンドの留意点
- 漏れ対策:配管径と真空源容量の整合、流量制御バルブの配置
- 姿勢安定:パッド間ピッチとコンプライアンス機構で面圧を均等化
- 製品保護:跡残り低減パッド、圧力・時間の最適化
搬送レイアウトと周辺機器
レイアウトは供給→ピック→姿勢補正→プレース→検査→排出の流れを単純化する。バッファ(待ち)と合流/分岐、ワーク姿勢決め(エスケーパ、ストッパ)、シュート角度や滑り係数、コンベヤのタクト同期(エンコーダフィードバック)を計画し、タクトばらつきを吸収する。
ビジョンと位置補正
2Dカメラは面内位置決め、3Dカメラは高さ/傾き推定に有効である。マーカレスでの外乱光対策として偏光・照度一定化、露光同期を行う。重量・寸法・バーコード/RFIDの照合によりトレーサビリティを確保し、誤ピックの早期検出を行う。
制御・通信インテグレーション
- 上位:MES/倉庫管理とI/F、品目マスタやピッキング指示の受信
- 中位:PLC/モーションとの連携、I/Oマッピング、位置補正データの共有
- 下位:フィールドバス(例:EtherCAT/PROFINET/IO-Link 等)でエンド機器を統合
- 見える化:稼働率、停止理由、タクト履歴を時系列で記録し改善に活用
安全と規格対応
リスクアセスメントを実施し、安全柵、ライトカーテン、レーザースキャナ、エリア監視を適用する。国際規格ではISO 10218やISO/TS 15066(協働時の力学的限界)を参照し、停止カテゴリや安全関連制御の性能レベルを満足させる。非常停止の配置、復帰手順、教示速度の制限を明文化する。
信頼性・保全
予防保全ではグリースアップ、減速機バックラッシュやベルト張力の点検、吸気フィルタ清掃、バキューム源の漏れ診断を定期化する。MTBF/MTTRを指標化し、重要部品の二重化や予備在庫を整える。校正治具や基準ワークで再現精度を定期確認し、ドリフトを補正する。
代表的な不具合と対策
- 吸着不足:パッド劣化/漏れ。配管短縮、真空源強化、パッド交換で改善。
- 位置ズレ:治具摩耗やコンベヤ蛇行。原点再教示、機械基準の再調整。
- 衝突停止:安全領域設定不備。軌跡の余裕化、速度制限、ゾーン分割。
- 箱潰れ:把持点不適合。パッド径/配置見直し、支持ジグ追加。
KPIと効果の評価
ライン指標としてOEE(稼働率×性能×品質)、サイクルタイム、スループット、不良率、作業者負荷(RULA等)、在庫滞留時間、パレット回転率を用いる。導入前後で同一ロット・同一製品を比較し、停止理由別の削減寄与を定量化することで改善を継続できる。
環境適合と衛生・クリーン対応
粉塵・油ミスト環境では密閉構造や正圧化、IP保護等級の高い部材を選ぶ。食品・医薬では洗浄耐性、潤滑剤の食品等級、錆びにくい材質、表面粗さ管理を行う。低温・結露対策としてヒータ・防露設計、センサ窓の曇り止めを施す。