プーリープーラー|固着プーリーを無傷で効率よく外す

プーリープーラー

保全現場では、軸に圧入されたプーリーやスプロケット、ギヤを損傷させず外す作業がある。プーリープーラーはハブに爪を掛け、センタースクリュー(または油圧ラム)で軸端から押し出して引き抜く専用工具である。こじりや叩打より軸曲がりやベアリング損傷のリスクが低い。

構造と原理

基本はセンタースクリュー、荷重を分配するヨーク、対象物を保持する2爪または3爪で構成される。3爪は自動芯出しで偏荷重を抑え、滑りを防ぐ。スクリュー先端には焼入れピンやスラストベアリングが用いられ、トルクが押出力に効率的に変換される。主要寸法はスプレッドとリーチで、対象のハブ径・奥行などに合わせる。

  • センタースクリュー:高強度鋼、先端硬化、回転座金で摩擦低減
  • ヨーク:曲げ剛性を確保し、等配荷重を実現
  • 爪(2爪・3爪/リバーシブル):外掛け・内掛けを切替え

種類

  • 機械式スクリュー:手回しで徐々に荷重を上げる。
  • 油圧式:数t級の押出力とストロークを持ち、固着に強い。
  • セパレーター併用:掛け代が乏しい薄肉プーリーに有効。

選定指標

選定では定格容量、スプレッド、リーチ、爪形状、センタースクリュー先端形状、作業クリアランスなどを確認する。定格容量はkNまたはtonで示し、余裕を見込む。爪先端形状はハブに合わせる。Taper-Lock®ブッシュは押出用ジャッキねじ穴を活用し、プーリープーラーと併用して均等に抜く。軸端ねじ山はキャップで保護するとよい。

  1. 定格容量:必要押出力に対し余裕を持たせる。
  2. スプレッド/リーチ:対象ハブの外径・厚みに適合。
  3. 爪形状:薄刃・段付き・リバーシブルを使い分け。

使用手順

  1. 電源遮断・ロックアウトを行い、セットスクリューやキー、止め輪を外す。必要なら位置合わせマークを付す。
  2. 適切な爪数とスプレッドに設定し、爪がハブ肉厚部に均等に掛かるよう配置。必要ならセパレーター併用。
  3. センタースクリュー先端を軸中心に正対させ、ねじ山保護キャップを用いる。座面は軽く潤滑。
  4. 荷重は段階的に増し、停滞時は浸透潤滑や温度差法等(80–120°C加熱・軸冷却)を併用。取り外し後は清掃・防錆等。

安全上の注意

  • PPE(アイプロテクタ)を着用し、飛散防護をする。
  • 斜め掛けや不足掛け代は爪の座屈・曲げ破断を招く。平行・等配荷重を確保。

整備と保守

使用後は爪先端の摩耗や欠け、ヨークの曲がり、ねじのかじりを点検する。ねじ部にはモリブデングリースを薄く塗布し、スラストベアリングの回転を確認する。油圧式はシール劣化や作動油の汚れを点検し、保管は防錆油と乾燥環境などを確保する。

関連機器と使い分け

薄肉プーリーや壊したくない鋳物はセパレーター併用が適する。ベアリング単体はベアリングプーラーや内抜きが有効である。Taper-Lock®やQDブッシュは押出ねじ穴を均等に締め、必要に応じてプーリープーラーを補助的に用いる。強圧入は油圧プレスで直線押しする。

トラブル事例と対処

爪が滑る場合は掛け代の位置を見直し、セパレーターで背面支持を作る。ハブが割れそうなときは荷重を解放し、温度差法や浸透潤滑を追加する。スクリューの鳴きは座面潤滑と先端アダプタで改善する。取り外し後は嵌合面を軽く研磨し、防錆油やアンチシーズを薄塗りする。