ストレートグラインダー
ストレートグラインダーは、軸方向に一直線のスピンドルを備え、高速回転する砥石やカッティングビットを用いて金属・樹脂・木材のバリ取り、面取り、内面研削、仕上げ研磨を行う携帯電動工具である。ダイグラインダーとも呼ばれ、一般にコレットチャックでビットを把持し、20,000〜35,000 rpm程度の無負荷回転数を持つ。直線軸のため被削面の狭所や深孔にもアクセスしやすいが、側面荷重には弱く、基本は端面接触での研削・研磨で用いる。高回転・小径工具ゆえ、砥石の最高使用周速度や芯振れ管理、安全保護具の着用が重要である。
構造と作動原理
ストレートグラインダーはモータ(AC、DC、またはブラシレス)、減速機構を介さない直結スピンドル、両持ちあるいは片持ちの高精度ベアリング、コレットチャック、冷却用ファンで構成される。電源は有線式が一般的で、無段変速の電子制御により負荷に応じた回転数制御が行われる。コレットは3 mmや6 mmが主流で、テーパ締付による同心度確保が要点である。側面研削はベアリングに大きなラジアル荷重を与えるため避け、端面接触での軽い切込みを基本とする。
主な用途
- レーザ切断・プレス抜き後のバリ取りや面取り、R付け
- 溶接ビードの整形、スパッタ除去、熱影響部の均し
- 金型のピンホール、コーナー、入隅の微細修正や内面研削
- フェルトや不織布ホイールによる鏡面仕上げ、ヘアライン整え
- 樹脂ゲート処理、繊維強化プラスチックの端面整形
砥石・ビットの種類
- 研削砥石:アルミナ系(WA)、炭化ケイ素(GC)など。粒度は#60〜#400程度が実用領域。
- 超砥粒:CBNやダイヤモンドのポイント砥石は焼入鋼や超硬、セラミックスに適用。
- カーバイドバー:先端形状(円筒、テーパー、ラウンド)と刃形(シングル/ダブルカット)で能率と仕上げを調整。
- フラップ/ホイル/フェルト:仕上げ研磨やバフ研磨に使用。
- ブラシ:ワイヤ、ナイロン砥粒入りはサビ取りや梨地付けに有効。
選定指針
- 対象材料と加工目的:焼入鋼の除去はCBNやダイヤ、アルミは目詰まりしにくい砥材や潤滑を選ぶ。
- 必要回転数とトルク:小径・高粒度ほど高回転が必要。変速範囲と定速制御の有無を確認。
- コレット径と到達性:3 mmは微細作業、6 mmは能率重視。ロングノーズは深部アクセスに有利。
- 電動/エア:連続作業や現場配管の有無で選ぶ。エアは軽量・高回転、電動は取り回しと効率に優れる。
- 騒音・粉じん:サイレンサ、集じん併用、低振動設計など作業環境面も評価する。
作業品質とトラブル対策
仕上げ粗さは粒度と送りで決まり、#60〜120は荒取り、#180〜320は仕上げ、#400以上で微細仕上げとなる。びびりは突出し過多・把持不良・回転数不適合・芯振れが原因で、コレットとビットの接触面清浄、突き出し最小化、バランス良い工具選定で抑制する。焼けは周速度過大や押し付け過ぎで発生するため、軽いアプローチと断続接触、必要に応じてクーラントやエアブローを用いる。
安全と規格の要点
ストレートグラインダーでは砥石の最高使用周速度(MOS)を超えないことが最重要である。周速度は v = π·D·n/60(m/s)で与えられ、例えばD=20 mm、n=30,000 rpmなら約31.4 m/sとなる。MOSを上回ると破砕リスクが増大するため、ビットの表示回転数や周速度を必ず確認する。保護メガネ、イヤマフ、手袋、防じんマスクを着用し、無負荷試運転で偏心や異音の有無を点検する。砥石は欠け・亀裂の有無を点検し、規格適合品を使用する。
保守・点検
- コレット・ナットの清掃と軽微な潤滑、摩耗・傷の点検
- ベアリングの異音・発熱監視、必要に応じて交換
- ブラシモータのカーボンブラシ残量点検と整流子の清掃
- エア駆動は給油器での潤滑管理と水分分離
- 定期的な同心度測定とスピンドルの振れ確認
作業手順の要点
- ビットの適合(軸径・最高回転数・用途)を確認し、コレットを正しく選ぶ。
- 突き出しを最小にしてコレットナットを規定トルクで締結する。
- 無負荷で試運転し、振動・偏心・異音の有無を確認する。
- 周速度を意識して回転数を設定し、軽い接触から当てる。
- 送りは一定にし、発熱を感じたら休止・エアブローを併用する。
- 仕上げは粒度を段階的に上げ、最終はフェルトやコンパウンドで整える。
代表的仕様の目安
- 無負荷回転数:20,000〜35,000 rpm(変速式が望ましい)
- 出力:200〜500 W程度(作業負荷に応じて選定)
- コレット径:3 mm、6 mm(両対応機もある)
- 本体質量:0.3〜1.0 kg(長時間作業は軽量が有利)
- 騒音・振動:PPEと低振動ビットの併用で作業負荷を低減
関連工具と使い分け
厚板の荒研削や大面積の研削にはディスクグラインダーが能率に優れ、面の均しや曲面整形にはベルトサンダーが適する。直線切断は丸のこ、曲線切断はジグソーや糸のこが有効である。解体・配管切断などの往復動切断にはレシプロソーやセーバーソーを、粗材の玉切り等は電動チェーンソーを用いる。これらを適切に使い分けることで、ストレートグラインダーの精密仕上げ能力を最大限に生かせる。