ウラン(U)
ウラン(U)は原子番号92のアクチノイド系金属であり、高密度(約19 g/cm3)、銀白色、常温で比較的延性に富む一方、表面は容易に酸化皮膜を形成する。天然同位体はU-238が大勢を占め、U-235、U-234を少量含む。U-235は熱中性子で核分裂しやすく、発熱と中性子増殖をもたらすため原子燃料として重要である。鉱石から抽出されたウランは精錬・転換・濃縮・成形を経て燃料化されるが、放射線学的リスクに加えて重金属としての化学毒性にも留意が必要である。産業用途は原子燃料が中心であるが、劣化ウラン(DU)は遮蔽材やバランスウェイトにも用いられる。
原子番号・同位体組成と核分裂特性
ウランは原子番号92、価数は+3〜+6を取りうち+6(ウラニル種)が溶存環境で卓越する。天然同位体比は概略でU-238が約99.27%、U-235が約0.72%、U-234が痕跡量である。U-235は熱中性子に対し大きな核分裂断面積を持ち、連鎖反応を支える。U-238は熱中性子では分裂しにくいが、中性子を捕獲してNp-239を経てPu-239へ転換し、燃料サイクル上で重要である。半減期はU-238が地質学的に極めて長く、U-235はそれより短いが依然として長寿命で、年代測定にも用いられる(半減期)。
ウラン系列(自然崩壊系列)
U-238はα・βを繰り返す自然放射性崩壊系列(ウラン系列)を形成し、最終的にPbへ至る。系列途中にはRaやRnなどの核種が含まれ、環境放射線の重要な寄与源となる。α放出は飛程が短いが線エネルギー付与が大きく、摂取時の内部被ばくに注意する(アルファ線)。
産出形態と鉱石
代表的鉱石はピッチブレンド(UO2に近い酸化物)、コフィン石(USiO4)、カルノー石(K2(UO2)2(VO4)2·3H2O)などである。脈状・堆積性・砂岩型など多様な賦存形態を示し、鉱床タイプに応じて採掘・浸出プロセスが最適化される。鉱山周辺では自然系列核種の動態評価が必要で、地下水や堆積物への移行管理が重要である。
採鉱・精錬から濃縮まで
採鉱後、酸(硫酸系)またはアルカリ(炭酸塩系)浸出でウラニル種を抽出し、沈殿・焼成により黄ケーキ(U3O8)へ濃縮する。転換工程でUO2あるいはUF6へ加工し、濃縮ではガス拡散法を歴史的に用いたが、現在はエネルギー効率に優れた遠心分離法が主流である。UF6は昇華性を持ち取扱いに注意する。濃縮後、UO2粉末を焼結ペレット化し、ジルコニウム合金被覆管(ジルカロイ)に充填して燃料棒とする。
濃縮度と燃料形態
天然ウランのU-235は約0.7%で、軽水炉用には通常3〜5%程度の低濃縮ウラン(LEU)を用いる。研究炉では用途により濃縮度が広く、20%未満が国際的に推奨される傾向にある。燃料形態はUO2ペレットが汎用で、金属ウランや合金、U3Si2など高熱伝導材料の検討も進む。
化学的性質と代表化合物
金属ウランは空気中で酸化し、粉末や切削屑は自発発火の危険がある。酸化物ではUO2(低原子価・還元的)、U3O8(熱的に安定)、UO3(高原子価)などが代表的である。六フッ化ウランUF6は揮発性が高く、転換・濃縮工程で重要な中間体である。水溶液中ではU(VI)のウラニルイオンUO2^2+が炭酸・リン酸・硝酸などと錯形成しやすく、移動度や吸着特性を規定する。
環境中のレドックス制御
還元環境ではU(IV)として難溶性のUO2が生じ、酸化環境ではU(VI)ウラニル炭酸錯体が可溶化して移動性が高まる。原位置還元(有機基質や鉄粉による)や吸着材(ゼオライト、リン酸塩)を用いた修復が適用される。
放射線・健康安全と規制
ウランは主にα線を放出するが、系列核種のγ放出も評価対象である(ガンマ線)。外部被ばく管理は遮蔽・距離・時間の最適化、内部被ばくは吸入・摂取の防止が基本である(ALARA)。化学毒性として腎毒性が知られ、可溶性化合物の取扱いには呼吸用保護具や湿式作業などの工学的対策を講じる。輸送・保管は国際指針と各国規制に適合させ、被ばく線量管理とトレーサビリティを維持する(原子力発電や燃料施設に共通)。
工業用途と材料上の注意
核燃料用途が中心だが、劣化ウランは高密度ゆえに遮蔽材や航空機のバランスウェイトとして利用されることがある。金属ウランは高温で水蒸気と反応し水素脆化を誘発しうるため、燃料被覆は耐食・中性子経済性の観点から選定される。ガラス・陶磁器の着色や触媒用途は歴史的に知られるが、今日では規制や代替技術により限定的である。
分析・計測
核種・同位体比の評価にはγ線スペクトロメトリ、αスペクトロメトリ、ICP-MS、TIMSなどが用いられる。非破壊検査(NDA)では中性子計測やパッシブγ計測により235Uの在庫・濃縮度を推定する。化学分析ではウラニルの吸光光度法やイオンクロマトグラフィーが補助的に用いられる。
歴史と発見
1789年、クラプロートがピッチブレンドから新元素を報告し、天王星(Uranus)にちなみ命名した。1896年にはベクレルがウラン塩からの自然放射線を発見し、放射能研究の端緒となった。1938年にハーンとシュトラスマンが核分裂生成物を同定し、翌年に機構が理解され、1942年に人類初の持続的連鎖反応が達成された。以後、原子炉技術と燃料サイクルの発展が進んだ。
関連規格・指針の概観
ウランの採鉱・精錬・燃料化・輸送・廃棄に関しては、IAEAの安全基準、各国の原子力規制、放射線防護基準、輸送規程が適用される。測定・品質管理ではISO/JISなどの試験法・校正規格が参照され、施設では品質マネジメントと臨界安全の手順が体系化される。これらは燃料サイクル全体の安全性・信頼性を担保する枠組みである。