スライドベース|モーター張力調整と芯出し簡単化

スライドベース

スライドベースは、配管や機器の自重を確実に支持しつつ、温度変化や運転条件によって生じる軸方向の変位(熱伸び・収縮)を低摩擦で許容するための据付金具である。すべり支承とも呼ばれ、ベースプレート上で上部プレートが摺動する構造を基本とする。配管系ではアンカー点とガイド点の中間に配置して熱応力の集中を緩和し、機器では芯出し・張力調整後の微調整を容易にする。摩擦材にPTFEや樹脂ライナーを用いることで、設計摩擦係数を低く保ち、変位追従と据付安定性を両立させる。

機能と役割

スライドベースの主機能は、(1)鉛直荷重を安全に支持すること、(2)水平方向の所定軸に沿った自由度を付与すること、(3)摺動面の摩耗や固着を防ぎながら長期的な変位追従性を確保することである。これにより、配管の熱伸びが固定点に伝達されるのを抑え、曲げ・軸力の不要な増大を避ける。支持点ごとの役割分担(固定・ガイド・フリー)を明確化する設計思想と一体で用いることで、系全体の応力分布を健全に維持できる。

構造と主要部品

  • ベースプレート:基礎(コンクリート・鋼構造)に定着する下部板。溶融亜鉛めっきや塗装で防食する。
  • 上部摺動プレート:配管シューや機器座と接続する移動側。ステンレス面+PTFEライナーなどの低摩擦対構成を採る。
  • ガイド構造:リブ・側板・長穴ボルトなどで摺動方向のみを許容し、横方向の暴れを抑える。
  • 定着部材:ケミカルアンカーやウェッジアンカー、あるいは基礎埋込みのアンカーボルトを用いる。必要に応じてボルトの呼び径・強度区分を選定する。
  • 保護部材:砂塵侵入や雨水の滞留を防ぐカバー、端部ストッパ、位置決め用ゲージなど。

一般材質はSS400やSUS304、摺動材はPTFE(充填タイプを含む)や自己潤滑樹脂を用いる。摺動組合せは「SUS鏡面×PTFE」が典型で、面粗さ・面圧・温度条件に応じてライナー厚や支持面積を決める。

設計パラメータ

  1. 許容荷重:鉛直荷重(静荷重+運転荷重+短期衝撃)に対する許容面圧・曲げ強度を満足させる。
  2. 摩擦係数μ:PTFE対SUSで概ね0.04〜0.10程度。設計では汚れ・経年の上振れを見込み、余裕を確保する。
  3. 移動量:熱伸び解析で得た最大変位(±方向)より余裕をもつストロークを確保する。
  4. 面圧・接触:摺動面の実効面圧が材料の許容値以下となるよう支持面積を規定する。
  5. 復元・拘束:不要な戻り力や偏荷重を避けるため、ガイドのクリアランスと平面度を管理する。
  6. 耐食・環境:屋外・薬液雰囲気では表面処理と樹脂選定(温度・薬品耐性)を適合させる。

水平抵抗は F=μN で近似評価できる(Nは押付け力=鉛直反力)。この値は上流のガイド・固定点に戻り力として作用するため、系の荷重バランスに組み込んで検討する。

概念計算の例

例えば鉛直反力N=20 kN、設計摩擦係数μ=0.06とすると、摺動開始に必要な水平力Fは約1.2 kNとなる。熱伸びにより配管がこの力を上回る推力を生じれば滑りが発生し、応力が解放される。ストロークは熱伸びΔL(配管材質・温度差・配管長に依存)に基づき、停止時の偏位と施工誤差を加味して設定する。

設置と施工の要点

  • 据付基準:基礎のレベル出しと平面度を先行確認し、グラウトで不陸を是正する。
  • 摺動面管理:油脂・粉じん・溶接スパッタを除去し、PTFE面の傷を避ける。保護フィルムは締付直前に剥離する。
  • 定着:アンカーの穿孔深さ・端あき・縁あきを遵守し、締付トルクを規定化する。
  • 方向性:矢印標記で摺動方向を明示し、ガイド側と整合を取る。
  • 初期位置:熱伸びを見越して中立位置または偏位位置でセットする。

適用分野

スライドベースは、化学プラント・発電所・製油所の配管支持、ポンプ・ブロワの芯出し用座金、搬送設備の微調整台など広範に用いられる。高温配管や長尺ラインほど熱伸びが支配的となるため、固定点・ガイド・フリーの配置設計と組み合わせて計画的に配置することが重要である。

規格・呼称の考え方

個別規格がない場合でも、締結部品はJISの機械要素規格を参照し、鋼材はJIS G系、表面処理はめっき・塗装規格の要求を取り入れる。呼称は「摺動ベース」「すべり支承」「スライドシュー付きベース」などが併用されるが、機能(支持と摺動)を明確に伝える命名が望ましい。

保守・点検

定期点検では、摺動面の摩耗・段差・異物噛み込み、固着(錆・塗膜劣化)、ガイドの干渉、アンカーの緩みを確認する。PTFEは無潤滑で用いるのが基本で、油脂付着は摩擦係数の不安定化や埃の付着を招く。摩耗が進行した場合はライナー交換とともに相手材の面粗さを回復させる。

設計上のリスクと対策

摺動方向の取り違え、ストローク不足、面圧超過、温度想定の過小評価は重大な不具合に直結する。温度分布・拘束条件・耐震時相互作用を含めた系統解析で余裕度を確認し、据付後の指差し確認・マーキングで初期位置と移動限界を可視化する。腐食環境では電食や異種金属接触を避ける材料組合せと、止水・排水を考えたディテールが有効である。

よくある誤り

「摺動面に塗装を乗せる」「ガイドと摺動の両立を同一点で過剰に求める」「熱伸び中立点を据付で無視する」などは代表的な失敗例である。施工と設計の意図を現場要領書で共有し、検査項目(レベル・平面度・ストローク・トルク)をチェックリスト化して再発を防止する。