重防食塗装|厚膜・溶射で鋼を守る長寿命防食

重防食塗装

重防食塗装は、海岸・化学・寒冷地などの厳腐食環境に曝される鋼構造物や配管、港湾設備、橋梁、タンク外面などに適用する高耐久塗装システムである。素地調整から下塗り・中塗り・上塗りの多層構成により、バリア性・犠牲防食・封孔の複合機能を付与し、長期にわたり腐食進行を抑制する。設計耐用年数の明確化、環境区分の把握、維持管理計画の整合が鍵となる。

適用分野と性能要求

重防食塗装の適用対象は、飛来塩分や結露、化学薬品、凍結防止剤、飛石・磨耗など多様なストレスを受ける部位である。要求性能は、長期の防錆(赤錆・白錆抑制)、耐塩水・耐薬品、耐候性(光沢保持・チョーキング抑制)、機械的強度(衝撃・擦り傷)、上塗り再塗装性、難施工部での密着性などであり、構造細部の形状や排水性も耐久性に直結する。

塗装系の代表例

重防食塗装の塗装系は環境区分と耐用年数に応じて選定する。一般例として、犠牲防食を担う亜鉛リッチ下塗り、バリア性の高いエポキシ中塗り、耐候性を担うポリウレタンまたはフッ素上塗りの三層が広く用いられる。海洋・飛沫帯では金属溶射+シーラー+厚膜エポキシの組合せが有効である。

  • 亜鉛リッチプライマー(無機/有機)+厚膜エポキシ+ポリウレタン
  • 金属溶射Zn/Al+封孔シーラー+厚膜エポキシ/フッ素
  • 厚膜タールエポキシ系(地下・水中部位のバリア重視)

素地調整と施工条件

耐久性は素地調整でほぼ決まる。ブラストはISO 8501-1のSa2.5程度を目標とし、適正なアンカープロファイル(例:Rz約40–75μm)を確保する。施工時は基材温度が露点+3℃以上、相対湿度85%以下、結露なしを守る。溶射や厚膜エポキシでは、膜厚ムラ・ピンホール・際部のだまりを避けるための姿勢管理とウェットエッジの管理が重要である。

膜厚管理・検査・品質保証

設計膜厚(DFT)を満足させるには、塗付量からのWFT推定と乾燥後の磁力式/電磁式膜厚計での全数または統計サンプリング測定を行う。ピンホールはホリデーテスターで検出し、素地露出は局部補修する。密着はクロスカット(ISO 2409)やプルオフ(ASTM D4541相当)で確認し、耐久確認には塩水噴霧(JIS Z 2371相当)や促進耐候性を併用する。記録化とトレーサビリティ確保が信頼性を高める。

規格・設計指針と環境区分

環境別の塗装系選定にはISO 12944の大気腐食区分(C3~C5、CX)や海水浸漬/飛沫帯(Im1~Im4)が参照される。素地清浄度・粗さはISO 8501/8503、表面清浄は可溶性塩分管理も重要である。設計段階では、隙間・水溜り・毛細間隙・重ね継手の未封止・開先裏など「塗れない場所」をなくす形状配慮、現地溶接部の補修塗りを想定したディテール、排水・乾燥を促す勾配付与が必須である。

維持管理とライフサイクル

重防食塗装は新設時の品質に加え、点検・洗浄・部分補修・上塗り重ねで性能を延命できる。白亜化や色差が進行する前の再塗装は密着確保に有利で、上塗り間隔や表面粗化条件を仕様に明記する。C5~CX環境では総膜厚300–500μm級が用いられ、LCC最適化には塗替周期・足場費・操業停止コストまで含めた評価が要る。色彩・光沢保持が要求される外装にはフッ素や高耐候ウレタンを選ぶ。

材料選定の考え方

下塗りは亜鉛末含有率やバインダー種で犠牲防食能力が変わる。中塗りは厚膜エポキシで空隙を減らしバリア性と機械強度を付与する。上塗りは耐候・美観・汚染性を左右し、紫外線に強い樹脂系が有利である。素地が溶射の場合は封孔シーラーで金属間隙を充填し、浸漬・飛沫帯では低温硬化性や耐水性の樹脂を優先する。可使時間、VOC、作業安全性(イソシアネート管理)も選定条件に含める。

よくある劣化と未然防止

端部・溶接ビード・ボルト周りの膜厚不足、塗替時の旧塗膜チョーキング未処理、塩分残留、狭隘部の未塗り、露点管理不良、過大な膜厚による割れが典型事例である。対策はエッジラウンディング、ストライプコートの徹底、洗浄・塩分測定、適正希釈・攪拌、仕様書に基づく検査と是正である。

適用計画と実務

重防食塗装の成功には、現地環境・工程制約・季節要因を踏まえた工程設計、仮設・養生・換気の準備、ロットと可使時間の管理、試験片での事前確認、完成後の引渡し基準と保証条件の明示が有効である。新設・補修・増強の三場面を通じて、仕様・施工・検査・記録の一貫管理を行うことが、長期の信頼性を支える。