電力ケーブル|電力を安全かつ効率的に送るための絶縁ケーブル

電力ケーブル

電力ケーブルは、発電所・変電所から需要家まで電力を安全かつ効率的に送るための多芯または単芯の絶縁ケーブルである。通信線と異なり大電流・高電圧に耐えることが要求され、導体・絶縁体・遮蔽・保護被覆など複数の層構造をもつ。用途は産業プラント、ビル配電、地中送電、再生可能エネルギー設備など広範であり、設計では許容電流、電圧降下、短絡耐量、環境耐性、施工性、保守容易性を総合的に評価する。本項では電力ケーブルの構造、種類、性能、敷設、選定、保全の要点を解説する。

構造と材料

導体は銅またはアルミを用い、より線化して柔軟性と通電性能を両立する。絶縁には架橋ポリエチレン(XLPE)やエチレンプロピレンゴム(EPR)、塩化ビニル(PVC)などを用いる。高電圧用では導体・絶縁界面の電界を均一化する半導電層を内外に設け、外部電磁ノイズや感電を抑えるため銅テープや編組による遮蔽(スクリーン)を付す。さらに充填・介在、内被、シース、必要に応じて装甲や金属シースを組み合わせ、機械的保護と耐水性を確保する。

種類と用途

電圧区分は低圧(〜600V)、高圧(3.3〜66kV程度)、特別高圧(66kV超)に大別され、単心・三心、シールドの有無、耐火・難燃、耐油・耐熱・耐寒などの機能で多様な型式がある。敷設環境に応じて陸上・地中・海底用があり、太陽光や風力の集電・送電にも用いられる。

定格と主要性能

定格電圧は絶縁厚と試験条件で規定され、設計許容温度はXLPEで90℃が一般的である。許容電流は周囲温度、敷設方式、隣接本数、土壌熱抵抗などで変化するため、係数補正を行って導体断面を決める。短絡耐量は許容温度上昇と通電時間からI²tで評価し、保護協調に反映する。電圧降下は導体抵抗とリアクタンスに依存し、長距離・大電流回路では断面増し等で抑制する。

敷設と施工上の注意

ルート計画では最小曲げ半径、張力、引込み方法、トレイ充填率、貫通部の防火処理を検討する。端末・中間接続は専用キットを用い、清掃・面取り・シース処理・半導電層テーパ・ストレスコーン成形など手順を厳守する。遮蔽層の接地は一点接地、両端接地、交互接地から選び、識別マーキング、端子圧着、トルク管理、耐圧・絶縁抵抗試験を確実に行う。

選定手順

  1. 要求仕様の整理(系統電圧、最大負荷電流、配線長、環境、法規・規格)
  2. 敷設方式の選定(トレイ、ダクト、管路、直接埋設、海底等)と温度条件の想定
  3. 許容電流から導体断面を仮決定し、周囲条件係数で補正
  4. 電圧降下を計算し、規定値内に入るよう断面・系統構成を最適化
  5. 短絡耐量・遮蔽・接地方式を検討し、保護協調を確認
  6. 難燃・耐火・耐油・耐薬品などの付加性能の要否を判断
  7. 端末・接続・支持金具・防火区画等の付属材料を仕様化
  8. 据付後の試験・検査項目と保守計画を定義

劣化要因と保守

劣化は熱・電気・機械・環境の複合で進行する。XLPEでは水トリーが課題であり、高湿や直流残留に注意する。シース損傷は浸水や腐食を招き、遮蔽層断線は感電リスクやノイズ増大につながる。診断には絶縁抵抗、VLF耐圧、タンデルタ、局部放電測定、サーモグラフィ等を用い、異常があれば再施工や部分更新を行う。

関連規格と安全

規格はJISやIECを基本とし、国内では電気設備技術基準・内線規程への適合が求められる。難燃はIEC 60332、耐火はIEC 60331等で評価され、ハロゲンフリーや低発煙仕様は避難安全に有効である。作業時はロックアウト/タグアウト、検電・接地、許可手順書の整備と記録保存を徹底する。