シーケンサ
シーケンサは産業用の制御装置であり、工場設備や生産ラインの動作手順を順序制御するために用いる。一般にPLC(Programmable Logic Controller)と呼ばれ、リレー回路をソフトウェアで代替し、入力(センサ)を監視し、プログラムに基づき出力(アクチュエータ)を駆動する。耐環境性が高く、長期稼働と保守性を前提とした設計であり、装置の安全停止、インターロック、アラーム管理、データ記録などの機能を一体で提供する。
役割と適用領域
シーケンサは組立ライン、搬送、包装、成形、工作機械、ボイラ・水処理など多様な装置で用いられる。単体機からセル生産、ライン全体、上位のSCADA/HMIと連携した監視制御まで拡張でき、設備稼働率の向上、品質の安定化、トレーサビリティの確保に寄与する。電気的インターフェースは24V DCや100/200V ACを扱い、フィールド機器の信号を堅牢に取り込む。
基本構成
- CPUユニット:プログラムを実行し、I/O更新、タイマ・カウンタ、診断を司る。
- 電源ユニット:装置内のDC電源を安定供給する。
- 入力ユニット:フォトカプラ等で外部の離散/アナログ信号を絶縁取り込み。
- 出力ユニット:トランジスタ/リレー/トライアックで負荷を駆動する。
- 通信ユニット:EtherNet/IP、PROFINET、EtherCAT、CC-Link IE、Modbus/TCP等のネットワークを実装。
- 拡張・特殊ユニット:位置決め、温調、パルス入出力、高速カウンタなどの用途別機能を提供。
- 記憶/バックアップ:不揮発メモリやバッテリでレシピやパラメータを保持する。
動作原理(スキャンサイクル)
- 入力更新:各入力点やアナログ値をサンプリングして内部イメージに反映。
- プログラム実行:ラダーやFBD等の命令を上から順に処理。
- 出力更新:演算結果に基づき出力イメージを実出力へ転送。
- 通信・自己診断:ネットワーク授受、ウォッチドッグ、エラー記録を実行。
- 繰り返し:上記を一定のスキャンタイムで周回し、応答性を確保する。
プログラミング言語と標準
IEC 61131-3に準拠し、LD(Ladder Diagram)、FBD(Function Block Diagram)、SFC(Sequential Function Chart)、ST(Structured Text)を主に用いる。LDは電磁リレー回路の表現に近く保全が容易であり、FBDは信号処理や制御ブロックを視覚的に接続できる。SFCは手順をステップと遷移で明確化し、STはアルゴリズムや文字列処理、計算処理に適する。
I/Oと外部機器の接続
シーケンサは近接/光電/エンコーダなどのセンサ入力、ソレノイド、接触器、サーボ、インバータなどの出力機器と接続する。アナログ入出力では温度、圧力、流量の連続値を扱い、A/D・D/A変換精度やノイズ耐性が重要となる。フィールドバスにより遠隔I/Oやドライブ、温調器、バーコードリーダ等と統合される。
制御方式と設計ポイント
順序制御に加え、PIDなどの連続制御、位置決め、モーション同期まで扱う。設計では安全インターロック、非常停止回路、フェールセーフ、誤動作防止の論理(自己保持/自己解除)、ラッチ/非ラッチ、デバウンス、ウォッチドッグ等を明確化する。EMC対策、接地、配線分離、サージ保護、盤内熱設計も重要である。盤のフレームや架台の固定にはボルトを用いる。
選定指標
- I/O点数、信号種別(DC/AC、ソース/シンク、アナログ分解能)。
- 処理性能(スキャンタイム、命令実行時間、割込み対応)。
- 拡張性(特殊ユニット、モーション、温調、冗長化)。
- 通信要件(上位・下位ネットワーク、プロトコル、時刻同期)。
- 環境条件(温度、湿度、振動、ノイズ、保護等級)。
- メモリ容量とデータ保持方式、レシピ運用。
- 安全規格や機能安全(SIL、PL)への適合性。
保守・運用
稼働中はアラーム・エラー履歴、トレンド、デバッグモニタで状態を可視化する。I/Oフォースは検証用に限定し、復帰手順を明記する。プログラムはバージョン管理し、変更履歴と署名を残す。バックアップ/リストア手順、バッテリ交換、予備品管理、長期供給・ライフサイクル計画を整備する。
トラブルシューティングの基本
- 電源・配線確認:端子の緩み、極性、絶縁、過電流保護の状態を点検。
- 入出力の切り分け:入力イメージ、実入力、配線側を順に確認。
- プログラム論理:条件の取り違い、立上り/立下りエッジ、保持回路の解放条件を点検。
- ノイズ・EMC:配線引回し、シールド、接地、サージ対策の是正。
- 機器側要因:センサ故障、負荷短絡、ドライブ側のアラームを確認。
データ活用と上位連携
シーケンサはHMIやSCADA、MESと連携し、品質データや設備稼働情報を収集する。時刻同期によりイベント相関を解析し、OEEやチョコ停分析へ展開できる。ログの保存形式、転送周期、ネットワーク負荷を考慮し、必要最小限のタグで監視体系を構築する。
歴史と発展
1960年代後半、自動車産業の多品種対応を背景にPLCが登場した。リレー盤の変更を配線からプログラム変更へ転換し、段取り替えと保全性を飛躍的に高めた。以降、モジュール化、通信の標準化、高機能化が進み、今日ではモーション制御や安全機能を統合するプラットフォームへ発展した。
関連概念
DCSは連続プロセスの分散制御に適し、PACは制御とIT処理の中間的性格を持つ。マイコン/シングルボードによる組込み制御はカスタム性に優れるが、産業用の堅牢性や保守性はシーケンサが強みである。用途・要求に応じ、適切なアーキテクチャと運用設計を行うことが重要である。