角加速度|回転運動の加速を定量化する指標

角加速度

角加速度は回転運動において角速度ωの時間変化率を表す物理量であり、記号αで表す。定義はα=dω/dt(単位:rad/s^2)である。回転軸に沿うベクトル量として扱い、右ねじの規約に従って正負が決まる。剛体の平面運動では、実務上は符号付きスカラーとして扱うことが多い。角度θ、角速度ω、角加速度αの関係を理解することは、機械要素の設計、モータ制御、回転体の立ち上げや停止時間の見積りに不可欠である。

定義と単位

角加速度αは角速度ωの時間微分である。角速度自体は角度θの時間微分(ω=dθ/dt)であるから、α=d2θ/dt2となる。SIにおける単位はrad/s^2であり、radは無次元のため、次元はT−2である。回転方向が角速度の増加方向と一致するときαは正、減少するとき負である。周期運動では時間平均が0でも、瞬間的な角加速度が大きく変動しうる点に注意する。

基本式と等加速度の運動学

角加速度(αが一定)のもとで、角位置・角速度は解析的に求められる。初期角度θ0、初期角速度ω0、一定α、経過時間tに対し、以下の関係を用いる。

  • 角速度:ω=ω0+αt
  • 角位置:θ=θ0+ω0t+(1/2)αt2
  • 消去形:ω2=ω02+2α(θ−θ0)

これらは並進運動の等加速度式に対応しており、回転体の立上げ時間、停止距離(角度)、必要トルクの見積りなどで広く使われる。

回転ダイナミクス:トルクと慣性モーメント

回転運動の運動方程式はτ=Iαである。ここでτは合成トルク(N·m)、Iは回転軸まわりの慣性モーメント(kg·m2)であり、角加速度αを生じさせるために必要なトルクはIに比例する。Iは形状と質量分布に依存し、同じ質量でも半径が大きいほどIが増え、同一トルクで得られるαは小さくなる。粘性摩擦(比例抵抗)やクーロン摩擦(一定抵抗)がある系では、実効トルクはτnet=τapplied−τlossとして評価する。

平均値・瞬間値・符号規約

平均角加速度はΔω/Δtとして定義され、離散データから容易に求められる。一方、瞬間角加速度は微分により与えられ、エンコーダの高分解能計測で推定する。符号は右ねじ規約に従い、座標系の取り方で表記が変わるため、図示とともに定義を明示することが設計・解析ドキュメントでは重要である。

例題:円盤の起動時間

半径R=0.20 m、質量m=2.0 kgの薄い円盤(I=(1/2)mR2)に定トルクτ=0.40 N·mを与える。I=(1/2)×2.0×0.202=0.040 kg·m2、したがってα=τ/I=0.40/0.040=10 rad/s2である。静止からω=100 rad/sに達する時間はt=(ω−ω0)/α=100/10=10 s。10 s後の角度はθ=(1/2)αt2=0.5×10×100=500 rad(約79.6回転)となる。

測定法とセンサ

角加速度の直接測定には角加速度計(アレイ加速度計やMEMS構成)が用いられるが、一般には角速度センサからの差分推定が実務的である。代表的手段は以下のとおりである。

  1. ロータリエンコーダ:パルス列の時間間隔からωを求め、数値微分でαを推定する(ノイズ低減に移動平均や微分フィルタを併用)。
  2. タコジェネレータ:出力電圧∝ωをアナログ微分してα推定。ただしノイズ増幅に注意。
  3. ジャイロ(MEMS):高応答の角速度出力をデジタルフィルタで平滑化後に微分する。

サンプリング周期Δtが大きいと差分誤差が増えるため、高速回転や高αの系では高レート計測と位相遅れの補償が不可欠である。

設計・制御上の留意点

  • 駆動系:モータ定格トルクと許容過負荷を照合し、要求角加速度に対する余裕度を確認する。サーボ系ではトルクリミットと加減速プロファイル(台形・S字)を設計する。
  • 減速機:速度比i(出力/入力の角速度比)に対し、αout=i·αin(理想剛体・無損失)でスケーリングする。バックラッシや柔軟性は立上げ時のα伝達を劣化させる。
  • 強度・安全:高αはねじ結合、キー、ばね要素に衝撃トルクを与える。許容応力・疲労設計と同時に、非常停止時の逆角加速度(減速)も検討する。
  • 熱・損失:高頻度加減速は銅損・鉄損・粘性損を増大させ、温度上昇と寿命低下を招く。熱容量と放熱設計を行う。

近似・誤差・よくある混同

低速域では角度量をdegで扱いがちだが、計算は必ずradで行う。rpm/sは現場表記として用いられるが、SI換算(1 rpm=2π/60 rad/s)を忘れない。等角加速度近似は短時間・高剛性・一定トルク条件で妥当だが、摩擦や負荷変動が大きい場合は状態空間モデルや実測同定による時変αの評価が有効である。数値微分は高周波ノイズを増幅するため、サバンナフィルタやカルマンフィルタなどの平滑化を併用する。

関連量と拡張概念

角速度ω、角位置θに加え、角加速度の時間微分である角ジャーク(dα/dt)は機械振動・乗り心地・共振励起の抑制に有効である。運動方程式と制約条件からプロファイルを最適化し、衝撃荷重と騒音を抑える。ロボット、搬送装置、半導体製造装置などの高スループット化では、許容α・ジャークの上限とワークの保護条件(滑り・飛散・姿勢崩れ)を整合させることが設計の肝要となる。