直交表
直交表は実験計画法において、複数因子の影響を最小回数の実験で独立に評価するための標準化された配列表である。列同士が直交(相関が0)になるよう構成され、主効果や一部交互作用の推定が効率的に行える。田口メソッド(ロバスト設計)では、誤差因子を外側配列に置き、S/N比で感度を下げる最適条件を求める際に中核的役割を果たす。
位置づけと目的
直交表の目的は、全因子の全組合せを要する完全実験を避け、限られた試行数で因子の主効果を分離推定することである。多水準・多因子でも、直交性により効果推定のバイアスを抑え、分散のばらつきによる誤検出を低減する。
基本概念:因子・水準・交互作用
因子は設計や工程の可変要因であり、その取りうる設定が水準である。交互作用は因子の組合せ効果を指す。直交表では列が因子(または交互作用)に割り付けられ、行が実験ランを表す。列間の直交性により、他列の影響を平均化しつつ対象列の効果を評価できる。
代表的な直交表の例
- L4(2^3):2水準×3因子、最小限のランで基礎検討
- L8(2^7):2水準×最大7因子、スクリーニング用途
- L9(3^4):3水準×4因子、曲線的挙動の把握
- L12(2^11)、L16(2^15):2水準の因子が多いとき
- L18(2^1×3^7)、L27(3^13):混合水準や3水準が多いとき
記法と自由度(DOF)
記法Ln(s^k)は、ラン数n、水準数s、列数kを示す。自由度は2水準因子が1、3水準因子が2、交互作用は積で決まる。選定時は「因子・交互作用・誤差」の総自由度が直交表の有効自由度以下となるよう確認する。
選定手順
- 目的特性(品質特性)と評価指標(S/N比や平均)を決める
- 因子と水準、重視する交互作用候補を列挙
- 総自由度を概算し、適合する直交表の候補を挙げる
- 線点図や別表で交絡関係を確認し、列を割付
- 外側配列(誤差因子)を用いるか判断
列の割付と交絡
列の割付では、推定したい主効果・交互作用同士が同一の合成列に重ならないようにする。2水準表では特定の列同士が生成関係を持ち、交絡が生じるため、線点図で主要交互作用が主効果に化けない配置を選ぶ。
実験順序と反復
ランは原則ランダム化し、系統誤差を避ける。測定の再現性やばらつきを把握したい場合は反復や繰返しを計画に組み込む。装置ドリフトや環境要因が懸念されるときはブロック化も有効である。
小例:L4(2^3)でのスクリーニング
因子A,B,C(各2水準)をL4に割付けると4ランで3因子の主効果をざっくり把握できる。重要因子を抽出したら、必要に応じてL8等に拡張し、交互作用の検出力を高める。
測定と集計の基本
各ランで品質特性(例:寸法偏差、強度、欠陥率)を測定し、因子水準ごとの平均・範囲・分散を集計する。主効果図・交互作用図で傾向を可視化し、効果の大きさや方向を判断する。
S/N比(田口メソッド)
ロバスト設計では、特性に応じて「大きいほど良い」「小さいほど良い」「目標値に一致」のS/N比を選ぶ。S/N比は平均と分散を一体で扱い、外乱に鈍感な条件を選定する指標である。外側配列を併用すると、誤差因子のばらつきに対する感度を定量的に比較できる。
分散分析(ANOVA)
ANOVAで効果を統計的に分解し、寄与率や有意性を評価する。反復がある場合は誤差分散が推定でき、F検定で有意差判定が可能になる。反復が乏しい場合はプーリングや仮想誤差の取り扱いを検討する。
多水準・混合水準への対応
3水準以上や混合水準ではL9やL18などを用いる。曲線性の検出や最適水準の微調整に適するが、自由度が増えるため、重要度の高い因子を優先して割付け、不要列は誤差として活用する。
交互作用の取り扱い
交互作用を明確に評価したい場合は、該当の合成列を独立に確保する。主効果の推定精度と交互作用の見通しはトレードオフになりやすく、スクリーニング段階では主効果優先、詳細設計で交互作用検証へと段階的に進める。
確認実験と再最適化
最適条件候補が得られたら、条件を固定して確認実験を行い、得点の再現性を検証する。結果が想定より劣る場合、因子水準の再調整や追加因子の導入、外側配列の再設計を検討する。
実務上の要点
- 測定系の信頼性(R&R)を事前確認する
- ランダム化・反復・ブロック化で系統誤差を抑える
- 欠測に備え、重要ランを先行実施する
- 分析では主効果図、交互作用図、ANOVA、S/N比を一貫運用
- 結果は工程能力や規格適合と合わせて解釈する
他手法との関係
直交表は要因計画の一種であり、2水準の部分要因実験(fractional factorial)と近縁である。応答曲面法へ発展させることで、最適化や感度解析をさらに精緻化できる。製造現場では、コスト・納期・歩留りとの整合を取りつつ段階的に適用するのが実践的である。
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