加速度試験|高G負荷で機器信頼性を評価

加速度試験

加速度試験は,製品や部材に機械的な加速度(振動・衝撃・遠心等)を与え,構造健全性や結合部の耐久性,部品固有の弱点を明らかにするための環境試験である。電子機器,自動車部品,航空宇宙構造物,産業機械などで広く実施され,量産前の設計妥当性確認や市場不具合の再現・原因切り分けに用いられる。入力は一般にg(重力加速度比)またはm/s^2で規定し,周波数帯域,持続時間,繰返し数,試験方向(X/Y/Z)などを組み合わせてプロファイルを設計する。

定義と目的

加速度試験は,外力による慣性力F=m・aに起因する応力・ひずみ・相対変位を評価する試験である。目的は①共振点の特定と対策,②はんだ・リード線・コネクタ等の疲労破断評価,③ギャップ・クリアランスの干渉確認,④輸送・落下・運用時の耐衝撃性検証,⑤製造ばらつきの影響把握,などである。設計者は応答(加速度・速度・変位)の伝達関数を想定し,試験で得たデータをモデルにフィードバックする。

試験方式(振動・衝撃・遠心)

  • 正弦振動:狭帯域の共振探索に適し,掃引(sine sweep)で固有振動数と減衰を測る。保持(dwell)で共振付近の耐久性を確認する。
  • ランダム振動:実使用に近い広帯域入力。PSD(Power Spectral Density)と総合Grmsで規定し,多点共振やモード重合の影響を評価する。
  • 衝撃(ショック):半正弦・台形・矩形などのパルスで規定し,最大加速度とパルス幅(例:11ms)が重要。落下試験や輸送衝撃の代替にも用いる。
  • 遠心加速度:回転体・車載部品の耐遠心力確認。回転数からa=r・(2πf)^2で算出する。

測定量と単位・基本式

単位はm/s^2またはgで表す(1g≒9.80665m/s^2)。正弦振動の変位x,周波数f,角速度ω=2πfとすると,速度v=ωx,加速度a=ω^2xである。一定g指令でも低周波では変位が支配的,高周波では加速度が支配的になる。ランダム振動はPSD(g^2/Hz)を周波数帯域で積分し,平方根でGrmsを得る。実務ではバンド制限RMSやクルトシスで波形性状を補記する。

試験装置と治具(フィクスチャ)

  • 加振機(エレクトロダイナミック・シェーカ):電磁式が一般的。上下・水平方向加振やスリップテーブルで多軸を実現する。
  • パワーアンプとコントローラ:閉ループ制御で目標g/PSD/パルスを実現。ノッチングで過大応答を抑制する。
  • 加速度ピックアップ:軽量・高剛性の圧電型が主流。取付面は平滑・脱脂し,ボルト締結やワックス接着で共振を避ける。
  • 治具:試験体の支持条件を再現する鍵要素。治具固有振動数は評価帯域の少なくとも2〜3倍以上が目安である。

プロファイル設計と実行ステップ

  1. 要求の把握:使用環境,輸送条件,故障モード仮説を定義し,受入基準(例:き裂無し,機能継続,ねじ緩み無し)を明文化する。
  2. 探索:正弦掃引で共振・高応答部位を同定し,クリティカル点にセンサを追加する。
  3. 本試験:ランダムPSDや衝撃パルスを規格値に従って印加。X/Y/Zの順で実施し,温湿度や通電条件を併用する場合はプロファイルを固定する。
  4. 監視:制御点と応答点のトラッキング,ケーブルの共振・断線,センサ飽和やエイリアシングを常時確認する。
  5. 判定:外観・機能・寸法を点検し,必要に応じ断面観察・解析に進む。

寿命推定と統計解析

加速度試験は主に機械疲労の加速であり,寿命分布にはWeibullや対数正規を用いる。応力‐寿命の関係は逆累乗則(Life∝S−n)で近似されることが多く,SにGrmsや応答応力の指標を置く。繰返し損傷の重ね合わせはMiner則で評価する。推定時は試験体数,検出限界,検査間隔(停止点検による損傷見逃し)などの検出バイアスを考慮する。

規格の例

代表的な参照としてIEC 60068-2-6(正弦振動),IEC 60068-2-64(ランダム振動),IEC 60068-2-27(衝撃),JIS C 60068系列,MIL-STD-810(Method 514 振動,Method 516 衝撃),ISO 16750(車載),JEDEC JESD22(半導体デバイス)などがある。各規格はプロファイルの作り方,許容差,校正,記録要件を定めるため,要求書に適用版と許容範囲を明確に記載する。

試験設計上の注意点

  • 治具‐試験体の質量比と剛性確保,ボルトの締付管理(トルク・座面清浄)。
  • センサ位置は構造モードと負荷経路を意識し,ケーブルは結束・浮き防止。
  • 制御点の選定とノッチングの根拠化(機能維持と破壊防止のバランス)。
  • サーマルや通電の併用時は温度ドリフト・配線応力を評価。
  • 校正トレーサビリティ(加振機・センサ・データ収録系)。
  • 安全:飛散防止カバー,過行程・過電流保護,耳栓等の保護具。

データ解析とレポートの要点

解析では応答倍率(Transmissibility),FRF,バンド別RMS,ピーク保持,ショック応答スペクトル(SRS)を整理する。報告書には目的,規格・条件,冶具図,センサ配置,原波形・スペクトル,異常検知ログ,判定結果,想定故障モードと対策案を含める。正弦の共振保持での温度上昇や機能ドリフトは別図にし,ノッチ根拠を図表化して再現性を担保する。

「加速試験」との違い

加速度試験は入力としての加速度ストレスを与える試験であり,時間短縮のために温度・湿度・電圧などの加速度因子で劣化を進める「加速試験(Accelerated Life Test, ALT)」とは概念が異なる。実務ではHALT/HASSの枠組みで温度・振動を複合化することもあるが,前者は主に限界探索と設計マージンの抽出,後者は製造ばらつきのスクリーニングが目的である。用語を区別しつつ,取得データを設計強度や品質保証の根拠に結び付けることが重要である。

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