国際単位系(SI系)|自然定数に基づく現代の単位系

国際単位系(SI)

国際単位系SI)は、科学、工学、製造、医療、日常生活における計測を統一するための世界標準である。近代的なメートル法として整備され、7つの基本単位を基礎に多数の組立単位を一貫して導出できる「コヒーレントな体系」である。単位間の換算を最小化し、測定のトレーサビリティと品質保証を支える点に最大の価値がある。

成立と標準化の経緯

SIは1960年の第11回国際度量衡総会で採択された。2019年には再定義が実施され、キログラム、アンペア、ケルビン、モルを含む複数の基本単位が、プランク定数やボルツマン定数、アボガドロ定数といった物理定数に基づく定義へ移行した。これにより、人工物に依存しない安定的な標準が実現し、高精度計測や半導体製造など先端分野でも長期的な一貫性が確保された。

SIの基本単位

  1. 長さ m(メートル): 真空中の光速 c と秒の定義に基づく。
  2. 質量 kg(キログラム): プランク定数 h を固定した定義による。
  3. 時間 s(秒): セシウム133の遷移振動数 ΔνCs により定義。
  4. 電流 A(アンペア): 電気素量 e を固定して定義。
  5. 熱力学温度 K(ケルビン): ボルツマン定数 k を固定して定義。
  6. 物質量 mol(モル): アボガドロ定数 NA を固定して定義。
  7. 光度 cd(カンデラ): 540×1012 Hz の単色光に対する視感度基準に基づく。

組立単位と接頭語

国際単位系では、ニュートン N(kg·m/s2)、パスカル Pa(N/m2)、ジュール J(N·m)、ワット W(J/s)、ヘルツ Hz(1/s)、クーロン C(A·s)、ボルト V(W/A)、オーム Ω(V/A)などを「組立単位」として体系的に導出する。量の次元は次元解析により明示され、物理法則の整合性検証にも資する。

  • 接頭語: 1024の quetta(Q)、1027は未採用、10−24の quecto(q)などを含み、yocto(y)〜 yotta(Y)に加えて ronna(R)、ron to(r)も導入されている。
  • 例: 1 kV、500 ms、2.4 GHz、10 μm のように数値と単位の間は半角スペースで表記する。

運用上の注意(表記・数値・不確かさ)

単位記号は原則として語尾に複数形を付けない(m、kg、s など)。数値と単位の間は半角スペースを入れる(例: 3.0 m)。指数表記は 1.23×10−3 のように表す。摂氏は °C を用い、温度差の計算では K を用いるのが明確である。桁の区切りは 3 桁ごとに半角スペースを推奨(12 345 678)。測定結果は不確かさとともに提示し、丸めは有効数字の原則に従う。図面や規格票では記号の斜体・立体、上付き下付き、単位の位置関係を統一して誤解を防ぐ。

工学・製造における意義

SIの採用は、サプライチェーン全体での互換性を高め、設計・製造・検査の誤差拡大を抑制する。校正は国家計量標準へと連なるトレーサビリティで担保され、品質マネジメントのISO 9001や産業規格のJISにおいても前提となる。CAD/CAE や数値解析では単位系の混在がバグの温床となるため、モデル、材料データ、境界条件を含む一貫した単位管理が不可欠である。法律面でも日本の計量法は国際単位系の使用を原則に据え、表示・取引の信頼性を確保している。

SIと非SI単位の扱い(実務の指針)

分(min)、時(h)、日(d)、リットル(L または ℓ)、トン(t)、電子ボルト(eV)はSIと併用可能な非SI単位である。bar や mmHg、Å などは歴史的に流通するが、文書では Pa、m を優先するのが望ましい。図面や仕様書では単位の混用を避け、必要な換算は確実に記す。教育・研修では物理量と次元、単位の関係を体系的に学び、現場では単位付きのデータ管理を徹底することが、事故や品質逸脱の予防に直結する。