A重油|発電・ボイラ向け中質油の主力種

A重油

A重油は、国内の燃料油区分である重油のうち最も軽質側に位置するグレードである。蒸留系軽質分と残渣分を適度に含む中間留分系燃料で、ボイラ・加熱炉・小型船舶用機関などで広く用いられる。規格は主としてJIS K 2205で定められ、動粘度や硫黄分、引火点、水分・灰分などの品質項目が管理対象となる。英語圏の分類では用途が近いものにNo.2 fuel oilがあるが、国内のA重油とは規格要件が異なる点に留意する必要がある。近縁燃料としては灯油や軽油、軽質原料のナフサが挙げられ、これらとの比較により設備や経済性の最適化を図る。

分類と規格

A重油はA・B・Cの三分類のうちAに該当し、低~中程度の動粘度が特徴である。JIS K 2205では50℃での動粘度範囲、硫黄分の上限、引火点の下限などが規定され、地域や設備要件に応じて低硫黄グレードが選定される。海上用途ではISO 8217が参照されることが多いが、内陸のボイラ燃料としてはJIS適合を基本とするのが実務的である。粘度は燃焼性・霧化性に直結するため、バーナ仕様との整合を事前に確認する。基礎概念は粘度密度の知識が有用である。

物性と燃焼特性

A重油の密度は同温度の灯油・軽油より高く、動粘度も上回るため、微粒化には若干の予熱や適正ノズル圧が有効である。熱量は高く、ボイラ効率を損なわない範囲で過剰空気を抑えれば煤生成を低減できる。水分や微量金属は燃焼障害や腐食を誘発しうるため、受入検査とろ過管理が重要である。沸点分布は混合比に依存し、軽質端の蒸留特性が着火性、重質端がすす傾向に影響する。

代表的な用途

  • A重油を燃料とする産業用ボイラ(蒸気・温水)
  • 吸収式冷凍機・冷温水器の熱源
  • 小型船舶の主機・補機、港湾設備の自家発電
  • 乾燥炉・焼成炉・熱風発生炉などのプロセス加熱
  • 非常用発電機のバックアップ燃料(保管管理と起動性の両立が前提)

設計・運用上の要点

A重油対応設備では、受入タンク→デイタンク→燃焼系の流路にストレーナやフィルタを適切配置し、配管にはドレン抜きとエア抜きを設ける。寒冷地では流動性確保のため配管やタンクの保温・微温加熱が有効である。圧力噴霧バーナや回転霧化バーナでは、粘度・温度・圧力の三点管理が霧化粒径を左右し、煤と未燃分の発生を抑制する。燃焼制御はO2トリムを組み合わせ、排ガス中のCO・O2を監視して最小の過剰空気で安定燃焼を維持する。

品質管理と検査項目

  1. 動粘度(50℃基準が一般的)と比重:ポンプ・ノズル適合の基礎指標
  2. 硫黄分:SOx排出と腐食の要因、低硫黄品の選択で対策
  3. 引火点:取扱い安全区分に直結、消防設備設計の前提
  4. 水分・灰分・全沈殿分:燃焼障害・目詰まり・堆積のリスク管理
  5. 残留炭素(CCR)・酸価:すす生成傾向と劣化評価
  6. 金属元素(Na・Vなど):高温腐食や触媒毒化の指標

環境規制と対策

A重油の燃焼ではSOx・NOx・ばいじんが主要管理対象となる。内陸の固定発生源は大気汚染防止法や自治体条例に適合させ、低硫黄グレードの選定やバーナ改良、脱硝・集じん設備の併用で対処する。海上では2020年以降のIMO規制により硫黄上限が厳格化され、運航形態に応じて低硫黄燃料や排煙脱硫装置の選択が行われる。燃料転換では軽油やガス燃料との比較で保守費用と燃料単価、CO2原単位を総合評価する。

他燃料との比較視点

A重油は灯油より安価である一方、霧化性や低温流動性では劣る。軽油と比べて硫黄分管理の難易度や煤の傾向が異なり、燃焼系の保守計画に差が出る。C重油よりは取り扱いが容易で、予熱負荷も小さいため、中小規模設備での総保有コストを抑えやすい。

調達と保管の注意

A重油はロット間で性状が揺らぐため、供給元の品質証明と受入検査を徹底する。タンク底水の管理、微生物繁殖の抑止、長期保管時の酸化劣化抑制が信頼性の鍵である。配管・タンクからの異物混入は目詰まりや燃焼不良の温床となるため、定期洗浄とフィルタ差圧監視をルーチン化する。